こんこん、と生徒会室のドアをノックして入れば、リナリーが口元に指を当てて“しー、静かに”なんてポーズをして笑った。その動作から察するにレインはお昼寝中さね
「…もう帰りなのにレイン寝せていいんさ?」
「やっと寝たところなの」
「リナリーはレインに変なところで甘いんさ」
肩を竦めて溜め息を漏らして笑うとリナリーもそうかもしれないわね、とちょっと寂しそうに笑った
リナリーがコムイの所に行くと言うから交代で部屋に入る。寝息と外からの声が室内に響いていて、なんだか不思議な空間を作り出していた。ソファーに近づくと夕焼けに照らされて、髪がオレンジ色に輝くレインを見た
((俺と同じ色さ…))
さらっと髪を触ると吐息を漏らして寝返りをうつ。その動作に喉が自然と鳴った
「無防備すぎっしょ…」
そっと近づくと、いつもはしない甘い香りが鼻についてなんだかもやもやした気分になる。レインは自由さ。自由で縛りがなくて、いつも無邪気で無防備で…だから心配になる。いつか俺から離れていくんじゃないかって。我ながら女々しい考えなのは分かってるんさ。以前なら女の子をとっかえひっかえ、決していい行いとは言えない事も分かってるさ。でもレインは、レインだけは初めて手放したくない女の子だって事をこの前のユウとレインの会話を聞いて改めて確信した。だから…
目の前には無防備に寝ている彼女の姿。目にはいるのはレインの潤んだ唇…そっと近づいてその唇に俺を刻もうと思った
「ら、び…」
「…っ!」
レインの口元が動いて、俺の動きも止まる。まさか起きちゃったさ?そう思って体を離すとぼんやりした表情で俺を見つめるレインの姿があった
「おは、おはようさー…」
「らび、ずっとそばにいた?」
「え!…うん、まぁね!」
「ありがと…だいすき」
キュッとYシャツの端を持ったと思ったら、レインは再び瞼を閉じて夢の中へ入っていった。その様子を見た後、額にそっとキスを落とす
((全く…))
俺もリナリーの事言えないさ。甘い、レインに甘すぎるかもしれないさ。だってもう下校時刻はとっくに過ぎてるんさ。このままレイン背負って家まで送るんだからさぁ…
「尽くしてるなぁ、俺」
レインの顔を撫でて、少し頬が緩むのを感じながら夕焼けを見た
((彼女を愛玩中な彼氏))
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