俺は自分で言うのも何だけど、すごく気を使える男だと思うんさ。レインに言われなくてもおかしい買ってあげたり、アレンとユウのケンカの仲裁に入ったり、女の子達に優しくしたり、俺様すごい気使って生きてると思うんさ。女の子達に優しくするのは当たり前、アレンだってそうなのに。“レインだけを大切にする”それはしているつもりなのに。レインが悲しんでいる(らしい)暴君おおかみちゃんは本当に常に何か食べていて笑顔で、悲しんでいるところなんかみたことないけれど、長年付き合ってきた幼なじみのアレン言うんだからきっと悲しんでいるんだろう。もっとレインを気にかけてあげるさ?そんなことを考えながら焼きそばパンを口に運んだ。レインは玉子サンドを2口で食べきってアップルティーを飲んで“ぷはー生き返るぜ!”なんて言っている。オヤジさ
「もっと落ち着いて食べるさレイン」
「美味しいものは早く食べないとアレンに取られる」
「僕はレインみたいに食い意地張ってませんから取りません」
「ぶー!アレンの方がよく食べるしー食い意地張ってるし!」
「張ってませんから」
((どっちもどっち…))
なんて口が裂けても言えなかったから、2人のやり取りを見ながら最後の焼きそばパンのかけらを頬張った。しょっぱいソースが何とも言えない。今の俺の気持ちみたいにしょっぱい。別にアレンに妬いているとかじゃないさ。そうじゃなくて、食堂でいつものメンバーでのご飯、楽しかったはずなのに周りの視線が妙に痛い。親衛隊の視線は気にならないけど、レインに当てられる女の子達からの視線を見て、気の毒と言うか何というか…そんな気持ちになったんさ。レインと俺が望んだ末路のはずなのに。隣のリナリーに“今更気づいたの?”なんて言われて胸が痛い。今更ってゆーかアレンに言われるまでレインしか見えてなかったとか言えない
「レインはね、ラビ、あなたがいればそれでいいのよ」
「それじゃレインを守れないさ」
「あら、あなた守るとかそんな柄じゃないでしょう」
「…リナリーきっついさ」
「分かったならレインをもっともっと見てあげて。そして大事にしてあげてね」
そう言われてレインを見た。ユウと手をつないでジュースを買っている。ちょっとイラってしたから、立ち上がって近づいたら、先に女の子達が2人を囲んでいた
「ちょっと良いかしら」
「なーにー?」
「チッ、めんどくせえな」
「神田くんには用はないの。あるのは会長さん。あなた」
「あたし?」
「ちょっと来て」
そう言われて引っ張られるレイン。顔をよく見れば不安そうにユウを見ていた。ユウの手を強く握り離さない。慌ててレインのそばに行き、女の子に引っ張られてる手を引き離した
「繋ぐ相手が全然違うさー」
「…ラビ?」
よしよしと笑って頭を撫でればレインはユウの手を離して俺の制服のズボンを強くつかんだ。本当に泣きそうな顔してるさ。こんな顔をいつもさせてたんさ?俺は
「ラビ…あの、この子に用が」
「じゃあ俺も一緒に行って良いさ?」
「え?」
「俺はレインの彼氏だからいつも一緒がいいんさ。ダメ?」
そう言えば、愕然とした顔の女の子もいれば口ごもる女の子もいた。だからレインに聞こえないようにこっそりと告げる
「もう、レイン以外と遊ばないし、レインに危害を加えるようなら許さないから」
そう言えば泣く女の子もいた。胸は痛くない。むしろ清々しい。レインの泣き顔の方がもっとつらかったから。呆れたような顔のユウを後目に、レインに笑いかければ、レインは笑った。恐怖の表情は消えていた
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