奇異な彼氏



君のそばは本当に落ち着くんさ。出来ることなら片時も離れずにそばにいたい。出来ないってわかってんだけどな。でも、そばにいたいって願うことはいけないことなんさ?


「レイン」


珍しく集団の輪の中にいるレインを呼んだ。振り向くレイン、ふわり、髪とスカートが舞うし、匂いが届いた。そのことに綻びながら、“リーバー先生が探してたさ”と用件を伝える


「本当?ラビありがとう」

「いいえー」


書類片手にパタパタと隣を通り過ぎるレインに胸が苦しくなる。別にリーバー先生に嫉妬してるわけじゃないけれど、常に片時も俺の腕の中にいてほしいと思ったからさ。そんなことを思いながら前を向けばさっきの集団が“ラビー!久しぶり!”なんて話しかけてくる。それでピンときた、レイン、俺の元取り巻きに絡まれてたんだって。レインと付き合ったことはファンクラブのみんなも知らないから知られてないと思ってた。でも女の子ってすごいさ、知ってるんだもん。“ラビ、なんであの子なの?”“あたし達付き合ってたよね?”“もう遊んでくれないの?”質問責めにされてたじろいで苦笑い。出来れば女の子を傷つけたくないさ、なんて思っているといつの間にか隣には怪訝な顔付きのアレン


「すみません、ラビ少し借りますね」

「…アレン?」

「来てください」


そう言って連れてこられた校舎裏、助けてくれたのかと思いたいけどそんな雰囲気は微塵にも感じられない。それどころかアレンに胸ぐらを掴まれる


「ラビは、ラビはレインが好きじゃないんですか?」

「好きに決まってるさ。何言って…」

「じゃあたった1人だけ選ぶ覚悟を持ってください。レイン、さっきどんな顔してたか知ってますか?」


“泣きそうでしたよ”

そう言われてはっとする。嘘だ。レインさっき笑ってたさ。笑って“わかった”って頷いて俺の横を通ったんさ


「ずっと一緒だったからレインの気持ちくらいわかります。囲まれて怖かった時にラビが来てくれて嬉しそうでした。それと同時に泣きそうになってました。レインはあまり顔に出ないから分かり難いかもしれませんが、彼氏って言うくらいならそれくらい分かったらどうですか?」

「俺は…」

「またレインを泣かせたら僕、黙ってませんから」


そう言ってアレンは去っていった。しばらく呆然とした後、足が屋上に向かっていて、空を見上げた。広い空、まるでレインみたいさと思った


「ラビ?」


扉が開いてレインが入ってくる。何にも言わずとなりに座るレイン。珍しいさ。頭をなでれば嬉しそうに笑った。デレ期が来たらしい。もっと珍しいさ。そんな笑顔を見ながら、アレンに言われたことを考えた。俺はレインに相応しくないのかもしれない。中途半端でだらしなくて、レインを泣かせるなんて彼氏としてあっちゃいけないことさ

((距離でも置くさ?))

そんなことをしたらますますレインを泣かせることになるんじゃないか、そもそも自分が落とし前をつけないからいけないだけだしな…なんて考えていれば隣からタックルを受ける。勢い余ってコンクリートにダイブ。痛いさ


「レイン、どうしたさ」

「ラビ今日おかしい。泣きたいの?」

「え?」

「泣きそうだよ」


ぎゅっと抱き締められた瞬間に頬を伝う何か。それを見たレインがよしよしと頭をなでるから、溢れて止まらない


「レイン、離れたく、ない…さ」

「うん。ずーっと一緒だよ?」

「レイン、ごめん」

「うん、大丈夫だよ」


まるで分かっているかのように“大丈夫”って笑うレインにただただ泣くしか出来なかった

((奇異な彼氏と彼女の愛))





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