気随な彼女



「ラビ、ラビたん」


いつものようにご飯を食べた後屋上で横になっていると、身の毛もよだつ程の猫なで声と俺を呼ぶ声がした。目を開けるのも嫌で寝たふりを決め込もうとしたけどお腹辺りに壮大な痛みを感じて飛び上がった。俺今タックルされたさ、色々戻しちゃうよ俺様


「寝たふりしてんじゃねーよ」

「レイン、いくら何でも食後にタックルはいかんさ。リナリーの手作り弁当吐いちまう」

「リナリーの弁当粗末にすんなよ変態兎」


いやいやレインさん、あんたがタックルなんかかましてきたからさ。危ないからやめるさ、マジで。俺が痛がる様子を嬉しそうに笑ってじゃれてくるレインはドS極まりない。少し離れたところでアレンが“タックルするのは構いませんが失敗してラビの咀嚼物浴びても知りませんよ?”なんて注意にもなってない注意をしていた。この幼なじみにしてこの幼なじみあり、と言うやつさ。ひどすぎる。まだズキズキ痛み、尚且つムカムカする胃をさすっていたら足元に重みと変な静けさを感じた。見るとレインが俺の足を枕にして寝ていた。さっきまで騒いでた癖に寝るのは本当に早い。俺も人のこと言えんけど、レインも早い。その様子をみたリナリーが膝掛けにしていた毛布片手に俺に近づいてきた


「レインしばらく大変だったから疲れてるのね」

「え?毎日騒いでるさ」

「ラビ、レインは仮にも生徒会長なのよ?放課後は毎日毎日委員会で引っ張りだこなのよ」


“だから起こさないで欲しいの”なんて毛布をレインに掛ける。ふんわりと毛布から舞った匂いは女の子の匂いでリナリーがレインの頭をなでる様子を見たら何だか胸がドキっとしたさ。これはコムイにバレたら大惨事だからその感情はすぐに心の奥底にしまい込んだ。気分転換に足元で大口開けて寝ているレインを見た。


「…ぶっさいくな顔さ」


口を大きく開けてがっつり熟睡してるから思わず口に出た。その瞬間すごい勢いでフォークが左目めがけて飛んできて、間一髪でよけた。危ない、俺様失明しちゃう。アレンの黒いオーラを消すために“レインかわいいさ!”って言ったら今度は“汚れた手でさわってんじゃねーよ”ってユウに言われた。じゃあどうしろってゆーんさ。あれか?死ねってことさ?


「ラビ、レインは世界一可愛いんですから、変なこと言わないでください」

「知ってるさー。顔だけは本当にストライクさね」

「顔で人を選ぶなんて最低ですね。あとレインは絶対にあげませんから」


いや、欲しいとも言ってないさ…なんて思いつつまた足元に視線を戻すと相変わらずのアホ面。だけどなんか他の女の子と違って癒されるっつーか…あぁ、また胸がムカムカしてもやもやして気持ち悪い。吐きそう、なんて言ったらアレンに“レインを咀嚼物で汚したら引きちぎりますから”なんて死刑宣告を受けた。さっきリナリーにレイン起こすなって言われて動けんのにそれはないさ。ひどすぎる


「おい」


胸焼けが治まるようにと胸をさすっていたら、どかっと隣にユウがやってきて座る。風になびく長くて黒い髪は学園一の美髪で、後ろ姿美人ナンバーワンさ。残念ながら性格がひどいしそもそもユウは男だけど…なんて考えているともう一度俺を呼ぶユウの声、まじ男前の美声さ。てか切れ長の目のきれいな男の子さ。以前に俺、ユウなら抱けるさなんて思わずぽろっと口に出したとき竹刀が飛んできた。そんな趣味はもちろんない、でもユウはいける気がする。むしろレインに負けず劣らずの美人さね。あれ?俺結局顔で選んでるさ?いやいや、中身重視っす


「おい、ラビ。そいつ落ちるぞ」

「へ?」


ユウにいわれて足元を見るとレインの頭はいつの間にか膝ギリギリに来ていて頭がゆらゆら揺れていたから慌てて中心に戻す。危ないさ、落ちて頭打ったら俺がアレンに頭を打たれるさ!血祭りなんかごめんさね。なんて考えてレインを見るとやっぱりアホ面でそれに比例するように俺の胸が痛い。痛い、痛い…もう何なんさ、これ。恋か?これは恋なんさ?ちょっとやめて。レインに恋してうはうはなんか死んでも嫌さ。だって相手は暴君。普通女の子の寝顔はかわいいはずなんにこいつは本当にかわいくない、ぶっさいくさ。まぁ、無防備すぎなとこはある意味かわいいに入るんだろうけどさー…うーん。でも見てるとやっぱりほっとするさ


「お前さ」

「なーにー?ユー」

「丸くなったな」


レインの髪をいじりながらリナリーとアレンを見ているとユウからそんなことを言われて思わず動きが止まる。丸くなった?俺は元々丸いさ。確かに淡泊ではあるけど、冷徹なユウに言われるなんてと思って沸々と笑いがこみ上げてきた。口の端が緩む


「ユウなに言ってるんさ。俺様何にも変わってないよ?」

「…女遊び減ったな」

「そりゃこの姫様の相手しなきゃいけないしねー」

「それ別にリナリーが言っただけで強要してねーだろ」


そうだ。別に強要されてない。女の子遊びが酷かった俺を見かねてリナリーが言って、俺もレインがかわいいから冗談半分で引き受けて、しばらくたってレインがとんでもなくお子さまで飽きて、なのにいつの間にか懐かれて、でも今までの女の子みたいに“鬱陶しい”とかは感じなくて、むしろ居ないときは寂しくて…あぁ、レインを求めたのは俺さ?俺が求めてるんさ?
レインの頬を引っ張ったら少し鳴いた。“みー”だなんて生まれたての猫の鳴き声さ。


「んー…あ、ラビおはよー」

「おはよう、レイン」

「お前よだれ垂れてるぞ」

「マジか。神田、ネクタイ貸してくれ」

「死ね」


ユウに一喝されても怯まずユウにベタベタと引っ付いているレインを見て少しむなしく感じた。あのときと一緒、さっきまで腕の中にいたのにもう遠いさ。本当に掴めないさ。ぼんやりとレインとユウを見ていると視線に気がついたのかはわかんないがレインが俺に近づいてきた。髪型がひどいさ


「レイン、髪型ぼさぼさ」

「まじか、やばいな」

「ほら、直してあげるから後ろ向くさ」

「おー!あ、ラビ」

「なにー?」

「膝かしてくれてありがとう!」


振り返って君か笑った。あぁ、太陽みたいにまぶしいさ

((猫のように気随な彼女))


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