等閑な彼女


今日も授業サボって屋上でのんびり、だらり。昨日と少し違うのは隣に女の子がいること。茶色い長い髪にゆるふわカールでぱっちりした黒い瞳とぷるぷるの唇、ふっくらした柔らかい胸元とぷりっとしたおしりに短いスカートから見える長い脚…首元に顔を埋めれば今人気の香水の香りがした。太腿に手を伸ばすと“もう、ラビったら”なんて制止する声がしたけどどこか嬉しそうに笑った。これぞ女の子、“女の子から言うNOはYESである”なんて誰が言ったかわからんけど、女の子って少しやらしいから惹かれるもんさ


「ラビー最近忙しそうだねー」

「まぁ、ね」

「ラビ人気者だから妬いちゃうなー」


“浮気しちゃやだよ”なんて言って引っ付いてきたけどそもそも俺ら付き合ってないさ。遊んでるだけでしょ?好きだけどそーゆーの面倒くさいさ…なんて言うと後々が余計に面倒くさくなるから口から出掛かっても言わずに“ごめん”とだけ言って笑ったけど、気持ちが一気にさめたさ


「ラビ最近さぁ、あの女の子と一緒にいるよね。生徒会長の」


生徒会長の女の子はレインのことだ。あの暴君少女は実はこの学園の会長だということは俺もアレンから聞いたとき何かの間違いに違いないと驚いたさ。でもレインは本当に頭いいし運動神経もいいし、生徒からの信頼もあるまさに非の打ち所もないスーパー生徒会長なんさ。加えてあのかわいさは反則さね、だから“学園のアイドル”なんて祭り上げられてるんさ。まぁ性格のひどさは一部生徒(俺らや生徒会の面々)にしか知られてないし、かわいから許されてる感が否めない。それに“高飛車生徒会長とか萌える!”なんて思ってる輩もいるらしいから危ない。だから甘やかされてあんなんになったんさ。教育なってないな、本当にアレンどうにかしろよ!とか思うけどアレンがアレンなら幼なじみも幼なじみだからあきらめてる部分もある。あの黒さには勝てないさ…てか関わらん方が身のためなんさ


「最近のラビあの女の子とばっかりー…あの子生徒会長なのに授業サボってるし、妨害するし非常識だよね」


そう言って同意を求めてくるから思わず苦笑いしたけど、内心いらっとした。レインは自由なとこがいいんさ。てかお前にレインの何がわかるの?なんて思っちまう。確かにレインは会長のくせに普通に授業サボってるし、妨害もしてるけどみんな笑ってみてる。結果も残してるからなんの問題も無いはずさ


「まーなー…レインは自由だから人気があるんさ。誰かに留まんないとこが楽だし、それにサボってんのは俺らも同じさね」

「そう、だけど…ラビなんか会長さんのこと贔屓してない?もしかして好きなの?」

「さぁな。まぁ、顔はかわいいと思うさ?君ほどじゃないけどねー」

「もー上手いわね。でも正解よ、顔は良いかもしれないけどあの子性格最悪って噂じゃん!男子に色目使って色んなもの奢らせたり、幼なじみのウォーカーくんに自分に告白してきた男の子をいじめさせたり、神田くんを誑かしたりしてるんでしょ?」


女の子って嫉妬深いからレインのあること無いことを俺に言ってくるけど、お前より俺はレインと一緒にいるから全部嘘だってわかる。確かにレインは暴君であることは認めるさ。すぐに奢れだの、疲れたからおぶれだの言われるけど、レインがそーやってわがまま言うけど本当に無理なときは我慢するし、無理なお願いは基本的にして来ない。全部パンとかジュースとか買えそうなものばっかだし、色んな男子ってゆーけど俺かユウ、たまにアレン(アレンけちだから滅多にない)に言うくらいで、それ以外の奴らは自分から奢っていて、それが全部高そうなものばかりでレインが困ってんのも知っている。野郎共的にはレインが餌付けすればものになるとかそんな感じのアピールなんだと思うけど、それでレインが逆に困ってるから辞めさせるようにアレンが説得(じゃなくて制裁にも見えるんだけど)をしてるだけ。ユウに関しては同じクラスだからじゃれてるだけな気がするんさ。本心は俺はレインじゃないから知らんけど、少なくともユウにレインに対する恋愛感情があるかって言ったら自信もって“NO!”って言えるくらい俺らにとってレインはある意味大事な存在なんさ。それを悪く言われると流石の俺様も愛想がつく。元々ドライだしね、なんて思って立ち上がると女の子が“どこ行くの?”なんてズボンを引っ張った。もう面倒くさくなってきたさなんて思ってると屋上の扉が勢いよく開いた


「あ゙ー授業だるってラビだー」

「あ…レイン」

「ちーっす!サボりだな変態!」

「こら、変態は余計さね」


イライラしてた気分もレインを見ただけでびっくりするほどすぐに消えた。代わりに昨日のことを思い出して少し胸が痛んだ気がしたけど気づかないことにした。だってレインが無邪気に笑っていつも通り“今日の帰りはクリスピークリームドーナツが食べたいな!”なんて俺に言ってくる。本当に参っちゃうくらい変わんないさ、このお嬢様は


「あのドーナツ並ぶから待つよー?てか今日はスタバ行くんじゃなかったんさ?」

「箱入り買えば並ばない!だからスタバも行こ!」

「そんなお金俺様持ってませんー。ユウに買ってもらいなさい」

「神田甘いの嫌いじゃん。あたしはラビに買ってもらいたいの」


あーうるうるした瞳でこっちみないで欲しいさ。甘やかしちゃうじゃんよー。レインは本当にセコいんだから、これ計算っしょ?って言いたいけど残念ながら生徒会長様はこーゆー方面では頭が働かない。さながら幼い妹の駄々みたいな感じの甘え方なんさ。そこがかわいいとゆーか無垢ってゆーか下心が見えんから世の中の男(俺も含めて)はレインを放っとけないんさね。だからついつい甘やかしちゃうんだな、これが…


「ちょっと、会長さん…今あたしがラビと遊んでるんだから邪魔しないでもらえますか?」


俺の足下にいた女の子は立ち上がると俺に抱きついてレインに威嚇した。これって世間的に言う修羅場ってやつさ!1人の男を巡って女の子達が争いあうんさ!“やめて!俺様のために争わんで欲しいさ!”とか思っては見るけど言われたレインの反応は全く興味無さ気でこりゃだめだってすぐにばからしい考えは頭から無くした


「ラビ彼女といたのか。そりゃ悪かったねーでもスタバとドーナツは奢れようー」

「あなた、たくさん男いるくせにラビにまで甘えて…あたしからラビ取らないでよ!」

「たくさん男いないっすけど…?つかラビ彼女泣かせんなーしねー女たらしー」

「泣かせてんのはあんたさ」

「泣かせるわけないでしょ。あたしは全世界の女性の味方だ!」


レインはそっちだったんか。お兄さん知らんかったさ…じゃなくて着眼点がずれまくってるレインに比例するように女の子は俺に抱きついて泣き出した。あーもー泣かせたさぁ…女の子泣かせちゃいかんのに。てか俺女の子の涙に弱いからついつい、大丈夫?とか言っちゃうさ。そしたら女の子が“ラビのばか!”って鳩尾叩いた。すっげーいたい。息止まるさ。つか俺が悪いんさ?


「まーまーそこの彼女さんや、ラビはたらしだし、色魔だし、手癖悪いし、ど変態だけど美味いもの何でもくれていい奴だから許してあげて」

「レインは俺のこと飯屋だと思ってんさ?そうなんさ?」

「あともう1つ。どーでもいいけどさラビと遊びなら良いけど本気になったらやめた方がいいよ」

「なん、でよ!あんたには関係な「あるよ」


“ラビはあたしのだから”



「…え?」

「とか言ってみるとラビもその子振りやすくて良いんじゃない?」

「お前何いって…!」

「ラビ、めんどくさいって顔に書いてあったからてっきりそうだと思った。お節介だったらごめんねー」

「ラビ、嘘だよね?別れたいだなんて…あたしラビのこと愛してるよ!」

「ちょっとレイン誤解さ!まず付き合ってないさ」

「何いって…」

「あ、そうなん?ならよかった。ラビに彼女できたらあたし泣いちゃうな、ラビが好きだからとか言ってみる」

「…冗談?」

「さぁな。半分は本気かもよ?ラビを取られたくないのは事実だし」


その時確実に時間は止まって、気がついたら女の子がさらに泣き出してて、レインも姿を消していた。俺はショートした思考回路を戻すことが出来ずに、ただレインがさっきまでいた場所を見つめていた

((俺と女の子を等閑に扱う彼女))


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