ビリッ、ベリベリッ…ガサッっと隣でビニールのこすれる音がした。そして大きな口を開けて俺が買ったチョコチップメロンパンにかぶりついた。口の端にチョコレートがついても気にせず嬉しそうにまたパンを頬張る。食べてるときは元々子供っぽいレインがさらに子供っぽく見える瞬間でいつもかわいーさーとか思いながら見てるけど、隣のレインの目は俺が食べてる焼きそばパンを見ていた。もう今手元にあるメロンパンでレインが食べたのは6個目なのにどれだけ食べるんさ…レインの胃袋は宇宙と繋がってるんじゃないかってもうレインとご飯食べる度に考える。ちなみに数にすると382回くらい考えたさね。
「…何、焼きそばパン食べたいさ?」
「ん!食べりゅ!」
“食べりゅ”とかかわいすぎてどうなんさ!てかレイン本当に俺とタメなんか?とか思って頬杖つきながら焼きそばパンをレインの前に揺らせば、チョコチップメロンパンを頬張って焼きそばパンに飛びつきはじめた。食べるの早いし、焼きそばパンを追っかけてる仕草はまるで猫!このパンは猫じゃらしだったんさ?てかむしろレインじゃらし。リナリーに“食べ物で遊ばないの”とか言われたけど、リナリー本人もレインの小動物加減にやられてるのかあんまり怒ってない。ぴょんぴょん飛び跳ねるレインは愛らしさ倍増だけどレイン本人は真剣そのもの。焼きそばパン見る目は獣の目だ。狼さ、狼がいるさ
「レイン食べ過ぎさー」
「だってラビとご飯食べるの楽しいんだもん」
あら、嬉しいこといってくれるじゃないっすか!今日女の子達と遊ばなくてよかったさーなんてなんて思ってると“鼻の下伸びてますよ”と黒いオーラを纏ったアレンがこっちを向いた。レインがそばに来ないから怒ってるらしい。全くアレンはお子様さ。レインがそばに行かないのはさっきアレン、レインが楽しみにしていたカツサンドを10秒足らずで食べてしまったからでしょ。しかもアレンのそばに行くとご飯無くなっちゃうからレインは嫌らしいさ。だからレインがご飯を食べるときは俺もしくはリナリーとユウの間って決まってるらしい。ユウとリナリーは自分のご飯あるし、俺はすぐに餌付けしちゃうから
「レイン、おいしい?」
「んむッ、うん!」
「もっとゆっくり食べるさー。誰もとらんし」
「アレンあたしのパン取るもーん」
「あれは僕の昼ご飯です」
そう言ってアレンはハニートーストに手を伸ばす。もう20個目のパンだけど腹は壊さないんか?なんて愚問に過ぎない。隣の小さな大食いちゃんは口の周りを今度は焼きそばのソースだらけにして幼なじみのアレンを睨んでいた。子供丸出しさ
「カツサンド返せもやし!」
「もやッ…また変な言葉覚えて!バ神田みたいになりますよ」
「んだと、このくそもやしが!」
「まぁまぁ2人とも落ち着くさ」
「「うるせぇよ赤毛」」
ケンカを始める2人を宥めようとしたら矛先がこっちに向いた。俺チョー不憫。いつもの事なんだけど俺はいつもそんな役回りさね。冗談でレインにアレンとユウが虐めるさ!って泣きついたら2人がマジで攻撃してきたし、肝心なレインは珍しくすっごい笑顔を俺に見せてくれたから嬉しくなって抱きついたらアッパーを食らった
「ちょっとラビ、ご飯食べてるから邪魔しんで。てかラビは黙ってあたしにパンよこせばいーの。あ、カフェオレ買ってきて!」
((あぁ、今日も何て横暴なんさ))
アレンとユウにシメられながらレインを見る。幸せそうにチョココロネに手を伸ばす小さなお姫様はまだまだ育ち盛りの食べ盛りで、色気もあったもんじゃない食べっぷりを披露していた。そんなとこもかわいすぎてしょうがないとか思ってる俺は感化されてるかもしくはドMになったんか?後者はレイン限定でドM…ってゆーか俺そんな奴違うさ!
「ラービーのど乾いたーカフェオレー」
「お昼休みはゆっくりしたいしめんどくさいさー俺もご飯食べたいの。だからこれで我慢しなさい!」
「レモンティーかよーカフェオレー」
「黙って食べるさ。てか口の周りソースだらけだし」
「ラビのパンすっごい美味しかったからさぁ、もう夢中でさぁー」
「はまったさ?」
「うん!ありがとーラビ大好き」
あー今日は本当にどうしたんさ?いつもはもっと暴力的でしょうに。かわいいことばっか言っちゃって…襲っちまうぞコラ。なんて思っては見るけど残念ながらレインをそんな目線で見ていない。強いて言えばわがままなペットさ。そんなペットからの“ラビ大好き”も別に嫌じゃない。むしろ女の子達より嬉しいもんさ。だってあのレインがデレてるんだから!明日も焼きそばパン買ってやろうかなとか思ってる俺は単純で現金な奴さね。そんでその言葉は俺、じゃなくて焼きそばパンをくれて言うことを聞く主人(俺)当てだって分かってはいるけどレインの笑った顔が見れるなら何でもいーとか考えてるとこは本当に感化されてるさ
「ラビーサンドイッチ食べたい!」
「はいはい」
かわいいペットに餌付け状態も、主人の方が実は地位が低いってのも面白いから満足してるんさ
((俺<パンな大食い彼女))
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