横暴な彼女


子守歌の様に先生の声が響く教室は日の光に当てられて最高に寝やすい空間を作り出していた。さっきまで女の子達からのたくさんのメールで鳴り響いていた携帯電話も静けさを取り戻していた。別にぶっちされた訳じゃないさぁ?俺がメールに飽きたんさ。だって女の子ってたまにしつこいって思ってしまう。例えば遊びに誘われて“今度遊ぼう”は俺にとってはある意味お断りなのに女の子にとってはOKの合図でしかも“今週中”なんてこともしばしば。俺だって暇じゃないんよ、昼休みと放課後はかわいい女の子達と遊ぶのでいっぱいいっぱい…なんて言ったらアレンに舌打ちされるからなんも言わんけど、俺がモテるのはしょうがないことさね。女の子が俺をほっといてくれないんさ。毎日年上から年下まで色んな年代の女の子からのアプローチを断る事なんてこのラビ様はしませーん。女の子はみんなそれぞれ個性があるしかわいいからさー。1週間で7人の女の子と毎日遊んだりする時もあるし、と話たらユウに“この色魔”と言われたのが記憶に新しい。毎日毎日携帯が鳴り響いてるからリナリーに彼女は誰なの?って言われたけど彼女はいない。てゆーか作んない主義デス!

((だって1人に絞るなんて女の子可哀想だし実際1人なんて無理さ!))

とか思っちゃったりしちゃうわけだけど、唯一この学校に1人だけ、俺の思い通りにならない女の子がいる。あ、リナリーは違うさ。美人だし、もちろんストライクだけど生憎リナリーに近づくにはすっごい大きな“コムイ”って壁があるから普通の生徒は迂闊に近寄れないんさ。まぁ、俺やユウは幼なじみだから別にその点は問題ないけど、子供の頃から一緒にいすぎて今更そんな感情とか微塵にもでてこない。だからリナリーじゃなくて、リナリーの友達で中学から一緒になったアレンの知り合いがそれに該当する。ほらほら噂をすればバタバタと廊下を走る音の後にばたんと教室のドアが倒れてクラスメートが振り向いた先にいたのは女の子。先生の注意も聞かず、つかつかと俺の元にやって来て机の上に出されたのは今日朝買ってあげたリンゴジュースだった


「え、レインまだ授業時間さ?」

「これ何かわかる?」

「今日俺がレインに買ってあげたリンゴジュースさ」

「うんそう。さっき屋上で飲もうと思ったんだけど、やっぱりトロピカルジュースがのみたい!だからラビ買い直して」

「俺お金ないからそれで我慢するさー」

「いやーラビ買えよー!買い直せよこらー!」


そう言って俺の机をがたがたと揺すりはじめたからうるさくてしょうがない。クラスメートも慣れた様子で先生に授業を進めるように促していた。実はレインがクラスに乱入して来るのは今に始まった事じゃなく、もう何度もあることで、ある意味学園の名物とされてるとかいないとかリーバー先生から聞いたことがあるんさ。レインはリナリーに負けず劣らずな容姿をしてるし、“コムイ”って障害があるリナリーより親しみやすいと学園のアイドルに祭り立てられてるとかいないとか。まぁ、俺からしてみればレインの場合は“アレン”って障害があるから手は全くだせんけど?そんなことを考えてる間にわがまま姫様は疲れたのか机を揺らす力が弱まってきていた。今回は51回でギブアップらしい。前より12回増えたからよっぽどトロピカルジュースが良かったんかなとか思えてきた。なんでも数えるのは俺の癖さね


「らびーかえー…このまえあたしのぱんつみたことあれんにばらすぞー」

「それは勘弁して欲しいさ!買ってあげるからあと5分我慢するさ」

「頭なでるな変態!色魔!」

「…誰から聞いたさ、それ」

「ん?ユーがこの前ラビがグラマーな先輩と帰ってたときぽそぽそいってた」


あのぱっつんレインに何を教えてるんさ!レインは幼稚園児並みに無垢だから、光源氏になった気分で接してたのに!とか思ったけど学園のアイドルで大人気のレインだが性格はじゃじゃ馬とゆーか暴れ馬。あれ買えだのさっさと来いだの、挙げ句の果てには理不尽な言いがかりをつけてユウとアレンに俺を攻撃させるんさ。本当に性格が最悪だ


「ラビー本当に買ってくれる?」


ため息を吐くとしゃがんで机の端から顔を出して俺を見ていた。なんつー目してんのあなた。かわいいじゃないですか。お兄さんその顔ストライクさー


「ちゃんと買うさー」

「本当に?」

「俺いつも買ってあげてるの知ってるでしょ?」


鼻を摘むとにゃーって猫みたいに鳴いて俺の手を払いのけようとしてた。その仕草も全部かわいい。かわいくてかわいくてしょうがない。別にレインに対しても恋愛とかじゃないさ?恋愛百戦錬磨の俺にもわけわかんねーのがこの横暴ツンデレお姫様なんさ。チャイムが鳴ってすぐにレインが嬉しそうに俺の手をつないで食堂へ。よっぽどトロピカルジュースが飲みたいのかと思ったら、いつの間にかケーキ食べたいとか口にしてる。流石にそれはだめだと言うと、アレンに言いつけるとか言い出した。全く横暴さね


((俺の横暴な彼女))


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