夕日と彼女



目を覚ますと辺りはオレンジ色に包まれていて、教室には人気がなくなっていた

((俺、寝過ごしたさ…?))

なんて思って体を起こすと、目の前に見慣れた顔が目に入り、少しびっくりした


「レイン…」

「おはよう、ラビ。そろそろ帰る時間だぞ」

「…なんでいるさ?」

「委員会終わったし、暇だったから寄ったらラビが寝てたから」


ふんわり笑って説明するレイン。よく見ればレインのカーディガンは俺の体に掛かっている。この優しさもいつもの気まぐれかと思うけどなんか違うような気がする。なんか違和感があるんさ。だってレインがにこにこ笑ってるし、いつもなら“これで貸し1つね”なんて言ってなんか奢らせられるのにそんなこと言わないからおかしいんさ


「カーデありがとうな」

「寒くなかった?」

「大丈夫さ。レインの優しさが伝わってきたさ!」


そう言いながら引っかかるかな、と思って様子を伺うと“それはよかった”ってそれだけしか返ってこなくて、レインは普通にカーディガンを着直すだけだった。本当にどうしたんさ


「レイン、今日は優しいんさね」

「失礼な。いつも優しいって」

「…そうか?」

「ひっどい。たまには優しくしたっていいじゃん!」


叫びながらそう言うと俯いて“優しくしちゃだめだったの?”なんて泣きそうな声で呟くもんだからたまったもんじゃないさ。慌てて謝ると顔を上げたレインはほんのり笑った。いつもの髪は夕日で俺と同じオレンジ色に輝いていて、さっき泣いたのか涙がきらりと光って宝石みたいさ


「レイン、アレン達は?」

「先帰ったよ」

「一緒に帰らなかったんさ?」

「うん。ラビと帰りたかったからずっと待ってた」

「何か奢って欲しかったんさ?」

「んーん。ラビとただ帰りたいの」


レインがそんなこと言うのは初めてで、頭が真っ白になったし、期待していいんさ?って思ったけど何を期待するんさってすぐに理性が働いた。レインのことは好きさ。色んな意味で。付き合いたいかも知れんけど、レインの笑顔が見れなくなるのはもっと辛いさ

((どうしたらいいんさ))

訳が分からなくなりそうで困っていると、帰ろうってレインが俺の腕をつかんだ。細くても小さな腕、綺麗に整えられたら指先。しなやかな髪に大きな瞳、長い睫毛。柔らかそうな唇。どこを見ても完璧なレイン。一挙一動見ても飽きないレイン。あぁ、俺は本当にレインが好きなんさ?さっき、ただ俺と帰りたいって言われた時は本当に嬉しかった。アレンでもユウでもなくて俺を選んでくれたレインを愛おしいと思ったんさ


「レイン、好きさ」

「あたしもラビ好きだよ!」


夕日が反射してレインの顔が見えなかった。小さな告白も得意のお子様ぼけで回避されたけど、いつか本当に本気で告白して伝わればいいなと思う

((夕日に溶け込んだ彼女の笑顔))


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