第5夜



君と歩いてきた軌跡はあたしの大切な宝物。これからもずっと歩いていく。それが真っ暗な闇だとしても君がいれば大丈夫だから


第5夜 任務

〜大いなる誓い〜



ぼんやりと映る視界。目を開ければあたしの真上をぱたぱたと飛び回るティルキャンピーの姿が見えた。窓を見れば朝日が差し込んできてとても眩しい


「もう朝…アレンは」


起きてるかな、と言い掛けた瞬間アレンがいないことを思い出して心が少し痛い。ううん、こんな事で弱っちゃだめ。だってアレンは今がんばって任務に当たってるんだから!弱音はいちゃだめ

((がんばれレイン!))

そう思いながら髪を整えて部屋を出るとはた、と見慣れたツインテールと目があった


「リナリーおはよう」

「おはようレイン、よく寝れた?」

「一応、これからご飯?」

「そうよ、一緒に行く?」


返事をするとリナリーはあたしの手を取って食堂まで連れて行ってくれた。きっとアレンがいなくて寂しがってるあたしに気を使ってくれたんだと思う。食堂についてジュリーさんからご飯をもらうけどちょっと食欲がわかなかった

((早く慣れなきゃいけないのにあたしは弱い))

そう考えてると隣の席に座ったリナリーが笑顔で話しかけてきた


「レイン、今日は団服の採寸をしましょう」

「団服?」

「あたしが来てるようなの。昨日アレンくんもコート来てたでしょ?」

「レイン、リナリー、おはよう」

「あ、リーバーさん」


リナリーと話していると少しお疲れ気味のリーバーさんがコーラ片手にやってきた


「レイン、今日は団服を作るための採寸をさせてくれ」

「さっきリナリーから聞きました。着なきゃいけないんですか?」

「エクソシストの証しみたいなもんだからな。ちなみにどんなデザインが良いかリクエストはあるか?」

「そうですね、アレンみたいに長いコートはたぶんイノセンスの邪魔になるし、クラウン・ベールはこうやって浮遊できるからスカートは論外です」

「レインのイノセンスって不思議よね。まるで意志があるみたい」

「元はあたしの髪だからね」


ふわふわ浮きながらアイスココアを飲んでリナリーの質問に答える。そのまま、ご飯も済んだことだし、リーバーさんとリナリーと一緒に団服を作りに行った


「はい、手を挙げて」


女性の科学班の方に言われるがまま作業は進んでいく

((くすぐったいなぁ))

いつもの服じゃだめなの?ってリナリーに聞いたら“戦闘中怪我したら大変でしょう?”なんて言われてしまった


「うぅ…」

「エクソシストの証のようなものだし、あたしの胸にあるローズクロスはヴァチカンの名においてあらゆる場所の入場が認められるようになるの」


“だから着ようね”ってリナリーに言われて、科学班の方が“かわいいの作るよ”って言ってくれたから着ようと思う


「リナリー、レインーいいか?」

「リーバー班長?どうぞ」

「採寸は終わったか?」

「終わりました」

「じゃあ室長室に着てくれ」


そう言われてリーバーさんに連れられてコムイさんのところに行けば資料を渡された


「えっと、もしかして…」

「任務だよ、レインちゃん」


つ、ついに任務!なんだかどきどきしてきてリナリーを見れば“大丈夫よ”と笑いかけてくれた

((リナリーもエクソシストなんだなー))

任務の内容はフランスでアクマが大量発生してると言うこと、イノセンスがある可能性があるから、至急調べに向かってほしいとの事らしい


「何もなければアクマを破壊して帰ってきてくれ。イノセンスがあったら保護してきて欲しい」

「わかりました」


返事をすればコムイさんの後ろからぱたぱたと現れたティルキャンピー。そう言えば採寸中いなかったけ?


「ティルキャンピー…そう言えばいなかったね」


そう言えば歯茎を見せて尻尾でばしばしとあたしを叩いた。怒ってるらしい。ごめんね


「ティルキャンピーにも映像記録があるんじゃないかって見ていたんだ」

「残念ながらティルにそんな機能は無かったはずです。ティムにはあるんですけど…」


ティムキャンピーにそんな機能があることはお兄ちゃんは知らないこと。あたしだけが前に師匠に教えてもらったんだ


「ティルはあたしのただのお友達です」


そう言えば、コムイさんは“そうだね”と笑って頭を撫でてくれた


「でも今はみんないるよ?」

「え?」

「あたしもレインの友達だわ」

「リナリー…」


そうだよね、昔とは違うんだから。ここに何のために来たの?変わるためでしょ!なんて言い聞かせて笑顔を見せれば、コムイさんはまた笑ってくれた。地下水路に移動するとさっきの採寸を手伝ってくれた科学班のお姉さん達が、コートを届けてくれた。ショート丈で真ん中には銀出てきたボタン、左胸のローズクロスに背中にはクラウン・ベールが通せるような輪っかがあった


「動きやすいです!ありがとうございます!」

「サイズもぴったりだね」

「それじゃあ気をつけてね」


“いってらっしゃい”

コムイさんのそのことばになんだか安心感を覚えて、“行ってきます”と返事をしたんだ


「リナリー聞きたいことがあるの」


リナリーにクラウン・ベールを引っ張ってもらいながら汽車へ急ぐ中、あたしはリナリーに問いかけた


「何かしら?」

「んと、イノセンスと奇怪伝説にどんな関係があるの?」


ダン、風になっていたかと思えばそんな音が聞こえて、汽車の上に着地する。飛び乗り乗車とかすごーいなんて思いつつ、用意してもらった部屋にはいる


「さっきの質問だけど、イノセンスは大洪水から現代までの間に様々な状態に変化してるケースが多いの。初めは地下海底に沈んでたんだろうけど、その結晶の不思議な力が導くのか、人間に発見されていろんな姿形になって存在していることがあるの」


“そしてそれは必ず奇怪現象を起こすの”とリナリーが続けた。つまり【奇怪のある場所にイノセンスがある】と言うことなんだろう。教団はそんな場所を虱潰しに調べて可能性が高いと判断したらあたし達を回すらしい


「今回の任務は単純にアクマの破壊だから関係ないんだけどどうしたの?」

「アレンの任務が奇怪現象の話だってメッセージが送られてきて…」


ティルキャンピーに映像記録機能なんてない。ただし、あたしとアレンがやり取り出来るようにティルキャンピーには受信機能だけはついている。アレンが何をしているか、なんてティムを通してティルに受信し、あたしに来るのだ。この機能を師匠から教わった時はまるで監視のようで怖かった

((あたしはアレンの監視係じゃない))

首を振って、考えを否定すれば突然物音と悲鳴が聞こえた。外を見ればアクマの姿があった


「アクマ!」


思ったより早くフランスについたななんて思いながら戦闘態勢に入る


「イノセンス、発動!」


ベールがきらきらと光ってひらひらしていた先が鋭く尖った。飾りの玉も重みがある。リナリーもイノセンスを発動していて、窓から出ようとしていた


「いくよ、レイン」

「うんっ!」


リナリーに引っ張られて外にでる。普通なら風圧で飛ばされるけどリナリーのイノセンスのおかげでそんなことなく汽車の上にやってきた。見るとアクマが周りにうじゃうじゃいた。あたしを降ろすとリナリーはものすごい早さでアクマに突っ込んでいく。胡蝶のように天空を舞い、鋼鉄の破壊力で地に落ちる…それがリナリーの対アクマ武器【黒い靴(ダークブーツ)】だった


「リナリーすごい」


ぽかんと見てれば残りのアクマがあたしを囲んだ。レベル1なんて朝飯前だ


「イノセンス、アイアンテイル…」


鋭く尖った矛先がアクマに突き刺さり真っ二つにした。飛び散るウイルスは風圧で飛んでいった


「こんなもんかしら」


リナリーが帰ってきて笑顔を見せた。簡単な任務だといわれたけれど本当に簡単だった。アクマが大量発生していた理由は結局分からなかった。きっとあとはファインダーのみんなが探してくれるんだろう。そんなことを思ったとき、急に背中がゾクッとした


「どうしたの?」


リナリーに声をかけられる。辺りを見回しても誰もいないのに、変な悪寒がする。ティルキャンピーを見ればふわふわと浮いていた


「なんでもない!」


戻ろっか?とリナリーに声をかけて教団に戻ることになった


「おかえり」


教団についてリナリーと別れて歩いていれば、前方からラビがやってきた“おかえり”なんて言われたのは久しぶり過ぎてなんだか、不思議な気分になった


「ただいま、ラビ」

「リナリーと一緒だったんさ?」

「うん、そうだよ?」


“アレンは?”と聞けば“まだ会ってないさ”と答えた。と言うことはまだ帰ってきてないのだ

((報告もないし、任務大変なのかな))

なんて思っていれば“そんな寂しそうな顔すんなさ”とラビが笑いかけてくれた


「寂しくなんか…ない、もん」

「どわさ!泣くなってレイン。俺が泣かしたみたいさー」

「うーごめん」

「レインはアレンが大好きなんね」

「うん、大好き」


誰よりも誰よりも大好きなアレン、たった1人の家族だから…心配でどうしようもなかった

((1人は嫌い))

そう呟けば“みんながいるさ”とラビが言ってくれた。少しだけ元気が出た


「ところでラビどうしたの?」

「レイン、次は俺と任務さ」

「え、今から?今帰ってきたばっかりにゃ」


“おなかすいた”って言えば“レインは食いしん坊さ”と返ってくる。アレンより食べないもん、失礼な!


「アレンより食べないもん!」

「比べる相手が違うさ」


“とにかく、いくさ”とラビが鎚を取りだした


「大鎚小槌、満満満!」

「うわあ」


突然大きくなった鎚に驚いていると、ラビが取っ手に跨がっている。乗るように促されて乗れば“ちゃんと捕まるさ”と腕を回された。なんか恥ずかしい


「大鎚小槌…伸!」

「にゃあ!」


どかんという音がしたと思ったら屋根に穴が開いて、教団がぐんぐん遠くなる

((壊していいの!?))

なんて思いながら振り解かれないように繋がれば、ラビは一瞬びくっとしたあとすぐにこっちを向いて笑った。星が綺麗な夜だった




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