第2夜



ただ、信じたくなかった。これが真実なのだと、分かりたくなかった。でも、目の前に映る光景や耳に入ってくる音、地面に降り積もる雪の感触は冷たく。紛れもない真実だと物語る


「アレン!マナ!」


叫び声は月夜と共に


「な…で、なんでこんな…」


静かに消え薄れていった。あの夜を私は今も反芻する


第2夜 記憶

〜月夜と道化〜





「本当にこっちであってるんですか?」

「んーたぶん…あッ!!あれじゃない!?」

「お、大きいですね…」

「そうね…」


あれから結局私たちは、あの男の子が気になって家を探した。本部にはあの子をちゃんと説得してから行くことになった

((てか、家おっきい…お金持ち?))


呼び鈴を鳴らすとメイドさんらしき人が出てきた。あれ…なんかさっきのピエロさんに似てるよーな気が…


「あ、あの…ジャンくんのお宅だと聞いて来たんですが…ジャンくんはいますか?」

「ジャンぼっちゃまですか?」


ん―――――…?

アレンの問掛けに答えようとするメイドさんの後ろに何やら見覚えのある人影が…ッ!!


「あッ!!アレン危ないッ!!」

「へッ?」

「いらっしゃいま…」


次の瞬間、アレンはメイドさんの下敷きに…


「あッ…アレン!!」

「何しに来たんだよ」


やっぱり…メイドさんを突き飛ばしてアレンを下敷きにしたのは他でもないジャンくんだった


「あ、誰だよお前」

「おまッ…」


初対面の人に向かってお前呼ばわりとは礼儀がまるでなってない子ッ!!


「レインだよ。そっちのアレンの連れだけど」


怒る気持ちを抑えてとりあえず名を名のっとく


「お前もアレンの仲間だな。2人揃って説教でもしにきたのかよ。お前らの言うことなんか聞かないぞ」

「ジャ…ジャン、キミって奴は…」


アレンが力を振り絞ってジャンくんに注意してる


「行こうぜ、レオ」


友達らしき子を連れて何処かへ颯爽と逃げるジャンくん…それにしてもタイヤ付きブーツ早いな…


「も、もう絶対知らない」

「無駄足だったよね…ってアレンどうしたの?」


さっきからジャンくんの友達を見つめるアレン


「ま、待つんだジャン!!その子は…ッ!!」


アレンの叫び声も虚しく門は重い音を立てて閉まった


「ま゙ずい゙っ」


アレンは気絶してしまったメイドさんを退かして起き上がろうとしている。さっき、アレンの目の色が変わった…


「アレン…あのこもしかして…」

「レイン、ティムキャンピー!ジャンのあとを追って!!僕もすぐに行くから!!」

「わかったッ!!ティムキャンピー、ティルキャンピー行こッ!!」


私達は慌ててジャンくんのあとを追い掛けた

((まずい、早く行かないと手遅れになる…))

本部に行く前なのに…先にこちらと挨拶することになるかもしれないです

師匠――――――…


「はぁッ…はぁッ…やっと追い付いた…」


ボロボロになってやっとジャンくんを見つけた


「なんだよ、お前。女の癖に走るの早いなぁ」

「ジャンくん、そーゆーの男女差別って言うの」

「なんだか知らないけど説教なら聞かないから…これでも喰らえッ!!」


ジャンくんが何かを投げてきた。これってアレンに当てた“たまねぎ爆弾”と言うものじゃない!?


「にゃッ!!危なッ!!…って待って!!」


爆弾を必死になってかわしいたらいつの間にか2人は墓地へ入っていった。なんか胸騒ぎがするし彼処嫌な予感がする…

((アレン早く来て…))


「おい、レオ、来て欲しい所ってここかよ…墓地じゃん」

「………」

「あ、もしかしてお前、母ちゃんの墓参りしたかったの?」


そういって墓地へ足を進めるジャンくん。暗くて見えないけど墓地内に誰かいる…


「それならそうと早く言えよ。水くさい…」


一ドン


「ジャンくん待っ……」


次の瞬間、私もジャンくんも自分の目を疑った


「こんばんワ。はじめましテ、ジャンくん」

「千年伯爵ッ…」

「レイン…」

「ジャンくん、後ろにいて」


私はジャンくんを自分の背中に隠してジャンくんと伯爵の間に自ら入った


「おや?アナタもジャンくんのおともだちですカ?」

「…ッせ、千年伯爵…ッ!?」


やっぱりジャンくん千年伯爵知ってるんだね


「はじめまして。伯爵さん」

「レイン避けて!!このッ!!」

「ジャンくん!?」


千年伯爵と会話をしているときジャンくんが後ろからたまねぎ爆弾を投げた。それは見事伯爵の顔面に命中したけど、そんなんじゃ伯爵は倒れないよ


「レオ逃げるぞ!!」

「ジャン待って!!その子はッ!!」

「おいッレオ!?どうしたんだよ、伯爵に殺されるぞ!!」


レオくんの異変に気が付いてジャンくんは必死に説得している


「ジャンくん、危ないから離れてッ!!」

「うるさいッ!!レオ…」

「レオくんならもうとっくに死にましたヨ。お母さんのお葬式の日にネ」

「伯爵ッ…」

「それ…我輩を邪魔したお前をお仕置きするアクマですヨ」

「うそだ…」

「ジャンくんッ!!危ないからッ!!」


ジャンくんは事実を飲み込めずただ立ちすくんでいる。伯爵とアクマに挟まれてる今、いくらアクマがレベル1だからと言って油断が出来ない状況…私の力だけでジャンくんを守れる?


「本当だよ」

「あ…」


うしろから声がしたから振り返ると対アクマ武器を発動したアクマが立っていた


「ジャン、その子は伯爵のAKUMAだ!!」


アレンが叫び、静かに続けた


「信じてジャン。その子は人間じゃない…キミの友達の皮を被った千年伯爵の兵器“AKUMA”だ」

「誰?」

「こんばんは千年伯爵。あなたの敵です」


アレンはそうやって千年伯爵と目を離さずに話をする。伯爵も私達がエクソシストだとわかったようで、律儀に挨拶をしてくれたが…

“はじめましテ…?”

違う、はじめましてなんかじゃ…


「十字架よ、アクマを破壊!魂を救済せよ!!」


気がつくとアレンはレオくんの皮を被ったアクマに攻撃しようとしていた。だけど隣からすごい勢いでジャンくんが走って行った

((まずい、突っ込む気だ…))


「アレン!!だめだよ!!ジャンくんがッ…!」

「レイン…!!ジャン…ッ!!」


予想通りジャンくんはレオくんの盾になっていた。そりゃいきなり信じられないよね、大親友がアクマになったなんて…

だけど―――――…


「ジャンくんあぶない!!」


やっぱりそのこはアクマなんだ。無差別に人を攻撃する殺人兵器

((守らなきゃ…))


「イノセンス…クラウン・ベール発動ッ!!」


思いっきり跳躍してジャンくんのところに投げつける

((間に合えッ…!!!))


「シャウト!」


眩い光と爆風が起こり、私とジャンくんの周りには粉々になったアクマの弾が転がっていた


「あ、レイン…」

「ジャンくん…よかった」


間一髪、ジャンくんはなんとか無事だった…けど


「あ、れん…?」

「アレン!!」


アレンまでは間に合わなくて


「う…」

「うそ、大丈夫…?」


アクマのウイルスによって侵食が進む。このままいったらアレンの体が…


「アレン…?」

「大丈夫です…レイン」


そう言ってアレンはゆっくり起き上がる。そうだった、アレンは対アクマ武器を宿した人間だから、体内のウイルスは浄化出来るんだったでもアレンがウイルスの侵食を防いでいるときに見えた…あの忌々しい呪いの痕が。あの日のことはあまり覚えていない。ただ千年伯爵が私達の目の前で現れて、私がいないすきにアレンがマナをアクマにしてしまって、アレンがそれを壊して…そして左目に呪いを受けた。あの時からアレンはアクマの魂が見えるようになり、アレンは償いの為にエクソシストとなった。私もその後ろ姿をずっと追った、そして多くのアクマを見てわかったことがある。アレンの言う“魂が泣いている”と言うのは私達があっちの世界から彼らを連れ戻したからじゃない“なぜ、強く生きてくれなかったのか”と言う悲しみにより泣いているのではないかって…それから2人で生きる為にエクソシストになろうと決めた“彼らを救うために…”



「アクマの魂が見える?彼らを救う?…できるものならやってごらんなさイ!!」

「アレン、来るよ」

「レイン、ジャンを任せたよ」


そう言って笑うとアレンはアクマに向かっていった


「アレン…」

「大丈夫だよ…それよりジャンくん、これかぶって。この布は自動的に君を守ってくれるから」


空を見上げると大量のアクマのミサイルが降り注ぐ


「…ッ!!」

「レイン…ッ!!」

「大丈夫。ジャンくん、ここから離れて…全部破壊する」

「え…!」


そのままアレンのもとに走る


「アレン!!ジャンくん退かしてきたから」

「ありがとう、レイン。おやすみなさい、この一撃ですべて葬ります」


アレンはジャンくんの叫び声に後押しされながらすべてのアクマを破壊し、伯爵を退けた

3日後、私達は再びジャンくんの家を訪れた


「やほー」

「何作ってるんだい?」

「わッ!!なんだよ勝手に部屋入ってくんなよ!」

「あたしあいさつしたじゃん…てか、十字架?」

「当座のレオの墓標だよ。あいつ今家出人扱いで死んだこと、誰も知らないし…いつか本当の墓を建てられるようになるまではさ…」


ジャンくん…強いなぁ


「アレン達はこれからエクソシストの本部だっけ?」

「うん。ティムキャンピーがせかしてる…そろそろ本当に行かないと」

「俺も親父の所に行く。もっと勉強して力を付けるよ。今の俺じゃだめだってよくわかった」

「そっか、じゃあお互いがんばろう!」


アレンとジャンが拳を合わせる。新しい友情がどうか壊れませんように…


→NEXT





prev next

bkm

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -