お姉ちゃんって、お呼び

「伊助くーん、洗剤足りなーい」
「は、はーい!」

ある晴れた日の朝。じゃぶじゃぶと回る水の前に立って、弟のクラスメートを呼んだ。すると数秒たってから、ひょこっと伊助くんが現れる。しなやかな髪、発育中の体、正しくはくんではないし、割烹着姿が洒落にならない状態にある

「これでいいですか?」
「ん、ありがと。そっちはどんな感じ?」
「今団蔵と虎若にお風呂に行かせたところです」
「そっかそっか、洗濯終わったら手伝うからね」

にこっと笑いかけると、伊助くんもかわいい笑顔ではい、と元気な返事が返ってきた

「終わったらってまだあるのか」
「はち、お前と良い勝負だな」
「何おぅ」
「おかえりなさい、はち、三郎」

今日暇そうにしていたはちといつも暇そうな三郎に頼んで弟の部屋掃除のお手伝い。2人には洗った洗濯物を干してもらいに行っていた

「裕飛、おかえりなさいとか良いな。新妻みたいじゃないか」
「新妻じゃねぇ」
「三郎、今女の子だから新妻とか洒落にならないから」

新妻って言葉は俺じゃなくて伊助くんの方が似合ってる、なんて言いかけたけど、この体になったのも不本意だし黙って飲み込んだ
((本当に洒落になんないな))
そんなことを思っているとたたたっと言う足音が聞こえて顔を出すと兄ちゃん!なんて上半身裸で駆け寄る団蔵の姿があった

「ぎゃー!団蔵!裸でうろついちゃだめぇ!」
「だってブラジャーつけれないから…」
「いいから早くこれ着なさい」
「…裕飛、お前そのパーカー脱いだら裸になるぞ」
「団蔵の柔肌見られるよりまし。つかてめぇ三郎、団蔵の裸見ただろ、ちょっと面かせ」
「なんで私ばっかり!」
「兄ちゃーん、いいからブラジャーつけてよー」

いつの間にかはちのパーカーを着ている団蔵に言われて、しょうがないから制裁は後にすることにして、団蔵が持ってきたストライプ模様の下着をつけてあげた

「兄ちゃん、なんでブラジャーつけれるの?」
「それは裕飛が場数を多く踏んでるからな。むしろ取る方が得意かも知れないよな」
「黙れば?」
「裕飛ひどい…!」
「今のは三郎が悪いな」
「場数?」
「んーん、団蔵は気にしなくていいの。兄ちゃんくらいになれば団蔵も簡単につけれるようになるって」
「本当に!?」

きらきらした視線が俺に向けられてそれくらいまでこの体は治ってるのかなとかちょっと不安になったし、団蔵には本気で下着の取り外しとか慣れて欲しくないと心の底から思った
((何時までも無垢であって欲しい))
そう願うのもわがままなのかなとか思いながら頭を撫でると、まだ塗れた髪で俺に抱きついてきた。少し冷たいけど、かわいいなと思って抱きしめると団蔵が胸を見ながら兄ちゃんじゃなくて姉ちゃんだね、なんて笑っている

「そうだね、今俺達女の子だからね」
「僕お姉ちゃんな兄ちゃんも嫌いじゃないよ!」
「じゃあ、団蔵…お姉ちゃんって呼びな」
「姉ちゃん、なんか照れちゃう!」
「くー!かわいいな団蔵!」
「裕飛何だかんだで体変わったこと楽しんでるだろ…」
「裕飛すごいな」

後ろで呆れた声と、尊敬の眼差しで見つめる視線が当てられたが気にしないことにした
((人生楽しまなきゃ損だろ!))





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