帰り、挨拶を済ませて歩いていれば、澤村先輩が口を開く
「いくら日向と影山のコンビが優秀でも、正直周りを固めるのが俺達じゃあまだ弱い…悔しいけどな」
「おおーさすが主将。ちゃんとわかってるねー」
現れたのは及川さん、ニヒルな表情で現れた及川さんは田中くんの威嚇にも笑顔で対応する
「アイサツに来るだけじゃーん。あと、そこの君」
「えっ!」
「名前、聞いてなかったね」
「おらぁあ!花に気安く話しかけんじゃねえぞ!」
「花ちゃんって言うんだ。かわいい名前だね。あ、アドレス、交換しよ。もう帰りだもん、断る理由ないよね?」
「あ、う、はい」
「花!交換すんな!」
「田中くん…及川さんは烏野と仲良くしたいんだって。私はその架け橋に…」
「騙されるな!」
「そうですよ花さんっ!」
日向くんまで…たかがメアド交換なのに…蛍を見れば面白くなさそうな顔をしている
「ほら、携帯のアドレス送ったからね」
「あ、はい。ありがとうございます」
「こまめにメールするよ、花ちゃん」
「はぁ」
絶望してる田中くんをよそに話はさっきの試合の話に、及川さんが言うには“クソ可愛い後輩を公式戦で同じセッターとして正々堂々叩き潰したい”そうだ。日向くんはレシーブ練習すると、蛍を引っ張って言ってるけど、一朝一夕で習得出来るものじゃないのも分かってる。及川さんが去った後、澤村先輩が“…ふふっ”と笑った
「…確かにインターハイ予選まで時間はない…けど、そろそろ戻ってくる頃なんだ」
「あっ」
「何がですか?」
「烏野の守護神」
その言葉を聞いて、影山くんが“なんだ他にも部員居るんですか!”なんて菅原先輩に言うけれど、菅原先輩は寂しそうな顔をした。そして学校に帰り掃除を済ませて次の日の放課後
((ちょっと早く来すぎたかな))
なんて思いながら体育館に入ればすでに練習中の影山くん。サーブに磨きがかかるね
「影山くん」
「つ、きしま…先輩」
「サーブ練習かな?あれならペットボトル置こうか?」
「あざっす」
そうしてサーブ練習を見ていればペットボトルにサーブが当たりそうになる。その時現れた日向くん。神出鬼没過ぎてちょっとびっくりした
「おい邪魔すんなボゲ日向ボゲェッ今当たったかもしんねえのに!」
「取った!?おれ取った!?」
「取れてねぇよボゲェ!ホームランだアホォ!!」
しゅんとした日向くんがボールを取りに行った時に再び始まるサーブ練習。その時またキュッと体育館の床が鳴る。そして日向くんがレシーブしたときとは比べものにならないくらいの柔らかい音が聞こえた。その人を見て目を疑った
「おおーっノヤっさぁーん!!」
「おーっ龍ーっ!」
田中くんに返事をする姿、入ってきた澤村先輩と菅原先輩に呼ばれた名前を聞いてはっとする
「夕…っ!」
「花っ久しぶりだなっ」
「…この前公園で会ったじゃん」
「分かってるって!ふてくされんなよ!」
「この前公園がなんだって?」
「田中くんうるさい」
久しぶりに2年生で集まれたとこに盛り上がっていたら、置いてけぼりになっている日向くんと影山くんに澤村先輩が夕を紹介していた。そして日向くんは夕を見て驚愕する
「おれより小さい…!!?」
それを聞いて夕はキレた。“まあまあ”と田中くんが止めている。あの、田中くんが、だ。そして日向くんは夕に身長を聞き、感涙してしまう。その光景に笑ってしまえば、夕に“笑うな花!”って怒られた。そして始まる西谷トーク。相変わらず声が大きい。そして清水先輩がやってくるとアタックしにいった。嵐みたいだ。日向くんにゲリラ豪雨なんて言われてるよ、夕。そしてビンタを食らった夕は笑顔で“旭さんは??戻ってますか?”と聞いてくるから胸が痛い
「…いや」
「――あの根性無し…!!」
「夕!」
「こらノヤ!!エースをそんな風に言うんじゃねえ!」
「うるせえ!根性無しは根性無しだ!」
そう言って夕は再び体育館を出て行ってしまう。慌ててあたしも追いかけると、それ以上の速さで日向くんが夕に追いついて“レシーブ教えてください!!”と叫んでいた。大丈夫か不安だったけど、日向くんが“西谷先輩”って言ったのが心に響いたらしい
「練習の後でガリガリ君奢ってやる」
「えっ!?」
「なんつっても俺は【先輩】だからな!!!」
「はあはあ、夕…」
「花っ!ついてきたのか!でも部活に戻るワケじゃないからな!お前に教えてやるだけだからな!!」
「アザース!!」
「さすが先輩」
「茶化すなっ!」
でも夕が練習に来てくれる、それだけで私は十分嬉しかった。そしてレシーブ練習が始まったけど、夕は【本能で動く系】だから説明が意味不明すぎる
「てめえさっきからデケえな何センチだ!」
「ツッキーは」
「山口うるさい」
「ごめんツッキー!」
「練習順調?」
「「花さん!」」
「姉さん」
「姉さん…!?お前もしかして花の姉弟か!」
「弟の蛍…だよ、仲良くしてね、夕」
「あったりまえだ!」
そう笑う、夕が眩しい
「花さんが名前で呼んでる」
「そりゃそうだ。花にとってノヤっさんはトクベツ、だからなー」
「…ふうん」
「妬いたか?月島?」
「別に。そんなんじゃないです」
田中くん達が何かを話しているけれど聞こえなかった。夕が側にいることがただ嬉しかった。私を救ってくれた夕は、光…だから
「花」
「うん?」
「バレーっ楽しいな!」
「…っうん!」
あなたの口からその言葉が聞けて幸せだよ
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