03



「おはよう」


電話に出ると大きな声が聞こえた。そんな声を聞いて安心する自分がいる


「部活、たまには顔出してね。後輩入ってきたから、見るくらいはいいよね?」


“元気?”だとか“勉強してる?”とかはもうどうでもいい、と言うかあっちには関係ないことだからそれだけを伝えて電話を切った。そして3人の所に戻ると何やら田中くんが焦っている


「…大地さんは普段優しいけど、怒るとすごく怖い、すごくだ」

「「?知ってますけど?」」

「この早朝練がバレたらヤバい。俺がヤバい。…別にビビってるとかじゃねえぞ。全然、全く全然」

「…………」

「田中くん…澤村先輩怒らないよ。きっと」

「ばっか!花!お前は甘やかされてるからだよ!けど、とにかくこの早朝練を知ってるのは俺達4人だけだからくれぐれも…」

「おー!やっぱ早朝練かあ」


そう言って声と共に菅原先輩が入ってくる。焦った顔の田中くんは面白くて笑いそうになったのは秘密だ


「おはようございます。菅原先輩」

「菅原さん!?なんで…!」

「だってお前ら昨日明らかにヘンだったじゃん。花ちゃんはともかく、いつも遅刻ギリギリのくせに鍵の管理申し出ちゃったりしてさァ」

「えっ…!?あっ…!くっ…!」

「花ちゃんは花ちゃんで嘘つくの下手だし」

「あはは…」

「大丈夫大丈夫。大地には言わない!なーんか秘密特訓みたいでワクワクすんねー」


なんて菅原先輩が笑って言うから肩をなで下ろす。そんな中、再び始まった練習。相変わらず田中くんのスパイクは強い。菅原先輩とパスをしている日向くんも“トスが欲しい”と言って影山くんに言うけど、影山くんは首を縦には振らなかった


「今のお前が、【勝ち】に必要だとは思わない」


そんな言い方しなくても言いのに。悔しそうな表情の日向くん、そんな背中があの時と被って、私はなんて声を掛けたらいいか戸惑った。そして朝練は終わり、お昼時、爆睡している田中くんにそっと毛布を掛けてあげて、教室を出た。すると外で練習する菅原先輩と日向くん。話を聞けば、菅原さんが“トスを上げようか?”なんて話をしている


「どんなに仲が良くて【友達】でも本当の【チームメイト】になれるわけじゃなかったから」


寂しそうな日向くん。何とかしてあげたいな、なんて思いながら外に出ると、自動販売機の前で影山くんと遭遇する


「こんにちは」

「あ、ウッス。あの、先輩っなんすか?」

「うん、小さいけどね。田中くんと同い年だよ」


そう言って笑えば、影山くんはまた顔を逸らした。私うまく笑えてなかっただろうか。そんな中、日向くんの“おれ、もう負けたくないです”と言う声が聞こえた


「…影山くん。協力できることを証明する試合なんでしょ?日向くんにトスを上げてスパイクを打つ、これも協力だよ?」

「わかってます」

「じゃあさ、日向くんが頑張ってるところを見てるんなら協力、しようね。それで勝とうよ。ね?」


自動販売機のスイッチを押せば、ガコンとジュースが落ちてくる。それだけ言えば影山くんも何かを考えながら去っていった。そんな背中を見送った後、2人の元にジュースを届けた。教室に帰ると、いまだに寝ている田中くんを起こす


「んあ、花?」

「次、数学だよ。起きて」

「あぁ…つか毛布ありがとな。お前だろ?」

「うん、いいよ」


ふわり、風が舞い込んできて髪が揺れた。一瞬目があった田中くんに“勝ってね”と笑えば、田中くんはまじめな顔した後、“おう!”と笑った。試合まで後少し…





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