「あ、あの、澤村先輩っ!」
練習中、気になって仕方なくて澤村先輩に声をかけた。“本当にいいんですか?”なんて聞く前に澤村先輩が私の頭を撫でた
「入部を拒否する訳じゃないよ。心配なら月島、見ておいで」
「いいんですか…?」
「ああ、ちょっとだけな」
そう言われたので澤村先輩に頭を下げて、こっそり体育館を出て2人を覗いた。何やら作戦会議を立ててる様子だった
「…寒く、ない?」
「え?」
「あ!」
ギロリと睨んできた影山くんとは対照的に日向くんは“さっきの!”なんて元気にさっきのお礼を言われた。別にお礼言われるものじゃないと思うんだけれど悪い気はしない
「私、マネージャーの月島花です。2人とも喉乾いてないですか?」
「あ…すいません」
「ありがとうございます!」
にこっと笑えば、影山くんはそっぽを向いて、日向くんは顔を赤らめた。何なんだろう…なんて思いながら、仲良くなれたのだろうかと様子を見た
「澤村先輩のこと悪く思わないでね」
「「え?」」
「先輩は主将として色々責任があるから…」
「…分かってますよ」
「だから俺達も認めてもらうために色々考えました!」
「へー…何を?」
「試合して勝ったら入部させてもらう!」
「バカ!声がでけえ!」
2人が再び騒ぎ出すのを後目に、タオルを落としそうになった。なんて言う単細胞…大丈夫なのか不安になり一気に頭痛がした
「お、月島…どうだった?」
「え、あ…はい。元気でした」
体育館に戻った時には練習終わりで、いい笑顔で澤村先輩が聞いてきたから苦笑いをしてしまう。その後田中くんが“勝負して勝ったら入れてください!!!とか言って来そうじゃないスか?アイツら”なんて言って、菅原先輩も同意し、澤村先輩が“アイツらもそこまで単細胞じゃないだろ”なんて言うからますます頭が痛い。そんな中、日向くんと影山くんがやって来て勝負の申し込みをしていた。倒れそうだ
「花ちゃん顔真っ青だけど…?」
「大丈夫です菅原先輩…」
「…知ってたの?コレ」
「さっき様子見た時に話してましたから…」
「負けたら?」
澤村先輩が2人に問いかけ、空気が重くなる。そして負けた罰は影山くんに先輩達がいる間セッターをやらせない、と言うものだった。それはあまりに酷じゃないかと思ったけれど、ただのマネージャーの私には何も言うことが出来ない。ハラハラしながら見ていれば、田中くんが肩をたたいた
「大丈夫だって、な?俺もいるしさ!」
「う、うん…」
そう言った後田中くんは咳払いをして、いつも遅刻する朝練の話を大きな声でしだした。きっと2人に聞こえるように言ったんだ
「私、も…見に行くね!」
「…?月島いつも来てるだろ?」
「え、あ…えへへ。そうですよね」
「花、明日一緒に行くか!」
「…う、うん!」
こうして朝練より前の時間で待ち合わせをする事になり、次の日の早朝、眠い目をこすって田中くんと体育館に行けば2人が窓から入ろうとしていた
「やっぱキッツイなー5時は。まだ暗えよ」
「田中さん!?」
「さ、さすがに窓から入るのはまずいんじゃないかな?」
「月島さんも!?」
「7時前には切り上げろよ?」
そう言って田中くんが鍵を開ける。昨日、澤村先輩がなんであんなに影山くんに厳しいのか話を聞けば、やっぱり色々と考えていたみたいで、2人のコンビネーションが使えたら、烏野は爆発的に進化する、なんてことを言っていた。田中くんも私もそれに一役買ったわけで…
「フザけんなおれが一番乗りだ」
「もう田中さんが入ってるから一番じゃねえだろ!」
…なんかコンビネーション以前の問題な気がしてきた。隣を見れば田中くんもイライラしている。そんな中、携帯が鳴った。相手は…
「はい、もしもし…」
少しずつだけれど烏野高校バレー部は動き出している
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