さよならは突然に



黄瀬さんとの1on1も終わって、再び由孝さんと学校外に出た。もちろん手をつないで。道行く人に見られてる気がして恥ずかしくてしょうがなかったけど、由孝さんがあまりにも嬉しそうだから何もいえなかった。でもその恥ずかしさも、由孝さんの嬉しそうな笑顔も見ていて胸があったかくて…慣れた証拠だろうか


「詩織ちゃんは中学生だっけ」

「はい。3年生ですけど」

「行きたい高校ある?」


そんなことを聞かれて、考えたこともなかった。勉強は興味ないし、部活だって別に一生懸命だった訳じゃない。親にはちゃんとした所、頭の良い学校に入るように言われているけれど、何気なく生きてきたあたしは学校だって何気なく決めるのだろうと思っていた


「んーあんまり興味ないんですよね…」

「じゃあさ、海常おいでよ!」

「おいでって、由孝さん卒業しちゃうじゃないですか」

「遊びに来るよ。それとも俺がいないと寂しい?」


そう言われて、寂しいと感じた。今日会ったばっかりなのにそんなこと思うなんて、あたしは頭がおかしくなったんだろうか?いや、完全に由孝さんに絆されてるんだと分かる

((好きになってる…?))

正直、海常は気になってはいた。由孝さんに会って、学校…ちょっとだけど見て、楽しそうだと思った。けれどもあたしは…


「んー考えておきますね。高校のこと」

「えー来なよー」

「ありがとうございます」


駅に着くとあたしは由孝さんの手を離す。不思議そうに、寂しそうに由孝さんはあたしの顔を見た


「さよならです」

「また会うでしょ?」

「いいえ、さよならです」


“あたし、転校するんです”

由孝さんの目が見開いた。そして“嘘でしょ”と笑う


「嘘じゃないです」

「時期はずれだね」

「そうですね。今日は…楽しかったです。初めて男の人と遊んで」


“もらったぬいぐるみ大事にします”

ふわり、風が吹いて髪が靡く。何も言わない由孝さん。そうだよね、あたしとは今日出会ったばかり…所詮由孝さんにとってあたしはたまたまいた都合のいい女…期待してはいけない


「さようなら、由孝さん」


涙は出なかった






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