やってきた路地裏で頭の中を整理する
((えっと、この人は森山さんで高校生でナンパで…))
とにかくナンパ慣れとかしてないあたしにとっては何もかもが唐突で、圧倒的過ぎたから焦る。ふと森山さんを見ればにこにこした様子であたしを見ていた
((そう言えば手を繋ぎっぱなしだった))
気がついてぱっと手を離せば今度は焦った顔をした森山さんが手を握りしめてきた。びっくりだ
「え?」
「離さないでよ」
「だって繋ぎっぱなしは熱いでしょ?付き合ってるわけじゃないし」
「じゃあ付き合って下さい」
また鞄が肩からずり落ちた。さっきから話が平行線な気がするのは気のせいだろうか
「さ、さっき出会ったばっかりじゃないですか!」
「付き合うのに時間なんか関係ないさ!」
「それを言うなら愛に時間は関係ない、じゃないですか?」
「そうそれ!とにかく僕は君と付き合いたいんだ!」
両手を掴まれて力説されればびっくりして体が後ろに引いた。さっきから気が早いんだよ、森山さんは…
「付き合って…あたし中学生っ」
「歳なんか関係ない」
「ついさっき会ったばっかり…」
「それはさっきも聞いた」
「あうう…えーっと」
「とにかく君が好きなんだ!俺じゃだめ…?」
子犬のように潤んだ瞳をされればどきりとして動けなくなった。ずるい、ずるいよ森山さん…
「わ、わかりました。デートするんでしたよね」
「本当!?」
「はい、まぁ…」
「やったー!詩織ちゃんとデート!」
「きゃっ!」
そう言って抱き締められて“付き合って!”なんてまた言われたから苦笑い。なんか振り回されてる感じだけどたまには良いかと思って、森山さんの手を引いて路地裏を出た
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