レイナさんとよく話すようになって、いつしか恋人同士になって月日がたったある日、それは何気なく起こった
「こほっこほっ」
「最近よく咳込みますね、風邪ですか?」
「うーん、そうなのかな」
「駄目ですよ。体調管理はきちんとしないと」
「はい、すみません。黒子様」
「ふざけないでください」
少し本当に心配しているのにレイナさんは茶化していつものようににこにこ笑う。だから気がつきませんでした。ただ、一緒にいることに幸せを感じることでいっぱいいっぱいでしたから
「レイナさん、好きです」
「あたしも好きです」
くすくす笑うレイナさんに優しく口づけをしました。初めてのキス、緊張して彼女の肩を持つ手が震えました。唇を離すと潤んだ瞳でレイナさんは僕を見つめます。だから僕は強く強く抱きしめました。離さないように、誰にも渡さないように、取られたくないから、失いたくないから…
「テツヤくん痛いです」
「痛さは僕の気持ちです」
「何言ってるの。もー」
“大好きよ”
レイナさんは僕の大好きな笑顔で笑いました。だから僕も答えるように強く強く抱きしめます。幸せで幸せで気がつきませんでした。レイナさんが少しずつ痩せていったことも、咳込む回数が増えていった事もあなたが倒れるまで気がつきませんでした。もし、あの頃に戻れるなら、僕に何ができたでしょうか。せめて知ることによって、レイナさんがひとりで全てを抱えたまま最期を迎えることは無かったのではないかと思います。僕の後悔はそれだけです
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