「亜季、そろそろ帰る時間だ」
2人で楽しく遊んでる最中、高尾の呼びかけでふと時計を見た。もう夕方で外は暗くなりかけている。俺達は何ともないが亜季はまだ子供だ。遅くに帰すわけにはいかないのだよ
「やだ!あきしんちゃんとまだあそびたい!」
「亜季、わがまま言うな。もう帰らないと、な?」
「かえったらもうあそべないもん…」
「どういうことだ」
「あき、おひっこしするの。さいごだからってわがままいってかずなりおにいちゃんにつれてきてもらったの」
話を聞けば高尾からいつもバスケの話と俺の話を聞いていたらしい、それで亜季は高尾にわがままを言って遊びに来ていたのだ
「亜季」
俺の肩に引っ付く亜季を離して降ろす。それから目線にあわせてしゃがんで頭を撫でてやった
「お前が大きくなったらまた遊びに来ればいいのだよ。俺も強くなってテレビに映るようになる、だから今は我慢して帰るのだ」
「…うんっ!」
「お前が会いに来るの、楽しみに待っているぞ」
泣きじゃくる小さな体を抱きしめてあやしていると、俺まで何故か涙があふれてきた
「しんちゃん」
「何なのだよ」
次の瞬間唇に柔らかい感触があったと思ったら、亜季が笑顔で“しんちゃんはあきのだよ”なんてまた抱きついてきた
「ぶふっ!真ちゃんなんつー顔してんの、ぶはっ!」
とりあえず全力で高尾を殴りたいが、長いようで短い、亜季との1日が終わった。亜季は高尾と手を繋いで帰って行き、俺の手には小さな幼女の温もりが確かに残ったのだ
end
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