色々訳あって幼女とバスケをすることになったのだが、自分の体くらいあるバスケットボールを幼女が操ろうなんてことがまず、無理があった。幼女は転んだり、顔をぶつけたりしながらボールを触っていた
「わっ!」
「あ、亜季あぶないっ!」
今日何度目かの転倒をした幼女は高尾に抱き抱えられながら顔を擦っていた。鼻をぶつけたようだ
「亜季ーもう諦めたらどうだー?痛い思いするだけだぞー?」
「いやー!あきだむだむするのー!かずなりおにーちゃんやしんちゃんみたいにだむだむしてしゅーとしゅるの!」
「亜季それは…」
「不可能なのだよ。幼女がシュートを打てるはずがない」
「真ちゃん…」
「やだ、あきシュートしゅる。しんちゃんとおなじことしたいもん…」
「なぜだ」
「しんちゃんだいしゅきだからしんちゃんがだいしゅきなばしゅけしてあそびたい…」
目元に涙を溜める幼女は歯を食いしばったと思ったら、高尾の肩に埋もれた。それを高尾があやしている。泣くのを我慢している様だが、体が小刻みに震えていてバレバレだ。後ろにいた宮地先輩に“何子供泣かせてんだ”とパイナップルを構えられた
「あき、じゃまだった?」
「ん?」
「かずなりおにーちゃんやしんちゃんのれんしゅーのじゃましちゃったかなぁ」
「そんなことねーって!みんな亜季が来てよかったと思ってっから!」
「ふぇ、ほんとーに?」
「あぁ!なあ真ちゃん!」
「ふん。こい、亜季」
手をさしのべて今日初めて名前を呼んだ。亜季は一瞬きょとんとしたあとすぐに高尾から俺の元にやってきて抱きついた。そんな亜季を肩車してボールを持たせた
「ダンクなど美しくないのだがな」
「んー?」
「ここならリングに届くだろう」
亜季が投げたボールは弧を描いてネットをくぐった。それを見た周囲は歓喜の声を上げて亜季も嬉しそうに笑った。心なしか俺も幸せな気分になった
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