大好きな先輩へ



あの日以来、美晴先輩は部活に来なくなった。学年も違う、クラスも知らないから、美晴先輩に会いたくても会うことができないし、会ってもなんて声をかけたらいいか分からなかった

((黄瀬少年ってまた呼んで下さい))

そう考えることが多くなって、休み時間はいつの間にか2年生の教室に足が向かっていた。会えるかもしれない、また笑ってくれるかもしれない…そう思うと居ても立っても居られなくなって、頭の中が美晴先輩で埋め尽くされるんだ

((先輩、会いたいっス…))

うつむいて廊下を眺めていると、不意に聞こえた鈴の音。いつもなんで鈴の音が聞こえるんだろうと思ってたけど、それは美晴先輩の携帯のストラップだったからだ。つまり鈴の音が聞こえると言うことは、美晴先輩が近くにいるってことだ。慌てて顔を上げて、周囲を見れば見つけた。長い髪に細い体…微かに香る甘い香り…美晴先輩が目の前にいた


「先輩っ!」


慌てて声をかけると振り向いた先輩。いつもの綺麗な表情でこっちを向いた。嬉しくなって近づこうとした。また笑ってくれそうな気がしたし、とにかく先輩と話したかった


「先輩っ!美晴先輩っ!」

「っ!」


次に見えたのは泣きそうで、怖がる、いつもの優しい先輩とはかけ離れた表情をしていて、俺はその場から動けなくなった

信じたくなかったんだ。先輩が俺に気がないことも、来なくなったのはあの時以来俺を避けてることも全部信じたくなくて、妄想と想像を自分のいいように働かせて、いつもの先輩を想像してた。でも現実は違ったんすね。俺を見た先輩は何も言わず、ただ怯えた表情をして逃げるようにその場から去っていった


「せん、ぱい…」


溢れる涙で視界が曇る。嫌われても、避けられても好きな気持ちは変わらなくて、逃げる後ろ姿すら愛おしいとおもう俺は相当な重病患者っすね


「美晴先輩…愛してます」


先輩の後ろ姿を見つめながら、震える声でそう呟いた

俺の恋は終わったんだ





end





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