「美晴先輩っ」
愛しい愛しい美晴先輩を見つけて駆け寄った休み時間。美晴先輩はいつものように“よ、黄瀬少年”と笑顔で対応してくれた。それが嬉しいような、告白を気にも留められてないのだと実感できて寂しいような気分になった
「先輩暇っスか?」
「んーまぁ、暇っちゃ暇かな」
「じゃあ少しお話しませんか?」
そう言って誘った人気の少ない教室。窓辺に座る先輩はすごく絵になる文学少女だ。そんな先輩に近づいて行くと気がついた先輩がこっちを向いた。相変わらず綺麗な顔をしてる
「どうした、黄瀬少年」
「その少年ってのやめて欲しいっス。俺には涼太って言うかっこいい名前があるんスから」
「彼女でもないのに名前で呼ぶわけないっしょー」
「じゃあ付き合ったらいいんスか?」
「まぁねぇ」
「じゃあ付き合って下さい」
そう言うと先輩はお腹を抱えて大きな声で笑った。笑われた
「やだなーもう慰めてくれなくていいってば」
「本気っす!」
「はいはいありがと」
「…本気だって言ってんだろ!」
りん、とまたどこかで鈴の音が響いて、半笑いだった先輩の瞳が揺れた。それはほんの一瞬の出来事で、戸惑う先輩の唇にキスをしたんだ
「好きだって言ってんのに…」
「…」
「俺先輩が好きなんすよ!」
「…っ!」
先輩の瞳から涙が溢れたと思ったら、ぱんっと言う音がして左頬に痛みが走った
「せんぱ…」
「ばか、黄瀬くんのばか!」
そう言って美晴先輩は泣きながら教室を去っていった
((ビンタされたなぁ…))
左頬をさすりながらうなだれる。だって先輩いつも告白しても中途半端な返事やはぐらかして終わりだったから、それじゃどうしても諦めきれなくて…
((キスしちゃったのはまずかったっスかねー…))
美晴先輩は本当にわからない。わからないから好きだった。みんなと同じじゃないから好きだった…
「好きだったんです、美晴先輩…」
いつのまにか涙が溢れて止まらなかった
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