部活もない放課後、ふと立ち寄った図書室を見ると夕日に照らされた美晴先輩がいた
((先輩、だ…))
あの細くて小さな後ろ姿を見るだけで胸がどきりと高鳴る。相当惚れ込んでるっすね。参ったなぁ…
((あれ…?))
声をかけようとしたとき先輩の頬に光ものが見えて、それからすぐに先輩が目元を押さえた
((泣いてる?))
一体どうしたんだろうと思って話しかけるか悩んでいたら、美晴先輩が振り向いた
「おや、黄瀬少年」
「ど、どうもっス」
「図書室なんか来てどうしたの?あんたとは無縁の場所でしょ」
「な、どういう意味っスかぁ!」
近づくと本当に泣いていたのか目元が赤い。いつも雄弁で気丈な美晴先輩が泣いてるなんて想像がつかなかったけれど、先輩を泣かせる奴が恨めしくあり、羨ましくもあった
「どうしたんスか?」
「ちょっと、ね」
「先輩が泣いてるなんて、らしくねーっスわ」
「あはは、本当だよね…」
空笑いのあと少しの沈黙があって美晴先輩が“フラれちゃったんだ”と口を開いた
「…先輩、好きな人いたんスか」
「一応ね」
「学校1のお姉様に好かれるなんて幸せな奴っスね」
「そんな大した人間じゃないよ。あたしは。お姉様とかみんなが勝手に言ってるだけだし」
「じゃあ俺だけのお姉様になってください」
「…え?」
我ながら狡い。失恋して傷心しているところを付け狙うなんて。それでも、そこまでしても美晴先輩が欲しかった
「俺にしなよ、美晴先輩」
抱きしめても先輩は動かなかった。それを良いことに俺は細い体を強く強く、でも壊れないように抱きしめた
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