好きになってました


あれからしばらくして三船先輩はよく練習を見にくるようになった。森山先輩は三船先輩に惚れているらしく、よく話しかけてるのを見かける。三船先輩もその話に楽しそうに乗るのを見て、男女問わず人気があるのも頷ける


「三船先輩、なんでいつも練習見に来るんスか?」


練習終わり、いつも通り片づけを手伝ってくれる先輩に話しかけた。ん?と振り向いた三船先輩は凛とした表情から柔らかい笑顔に変わった


「頑張ってるバカをみるため、かな?」

「それって…笠松先輩っスか?」

「…おーい幸男ー、黄瀬くんが幸男のことバカだってー」

「い、言ってないっス!三船先輩ひどいっスよ!」

「あはは!ごめんごめん!」


そう言って背中をバシバシ叩いてくる先輩は流石笠松先輩の幼なじみって感じがした


「早く片づけちゃお!」


笑って前を歩きだした三船先輩の長い髪が指先に微かに触れた。毛先が触れただけなのに体中に電気が走る。知ってましたか?三船先輩、笠松先輩の話をするときとても幸せそうな顔をするんすよ。さっきだって見たこともないような優しい顔で話をしていた

((あぁ、悔しいっす…))

出会った期間が短すぎた。もっと早くに出会っていれば俺にだってチャンスは会ったかもしれないのに、あなたはもう遠い存在なのだと思い知らされた

((女の子なんて山ほどいるのに))

そう思って目をつぶっても脳裏に浮かぶのは先輩の優しい顔、豪快な性格、屈託ない笑顔。好きになりすぎている。あって間もないのに


「先輩」

「ん?」


先輩が振り向いた瞬間、りん、とどこからか鈴の音が響いた。長い髪も細い体も全てが好きだ


「今日、笠松先輩と3人で帰りませんか?」

「あ、いいね!アイス奢ってよ!」

「いやっスよ!」

「けちー!儲けてるくせにー!」

「…先輩そんなんだから年下に見られるんスよ」

「何をー!」


“2人で”と言う言葉を飲み込んだ。本当は2人で帰りたかったけどまだそんな中じゃない、踏み込んじゃいけない、そう思った

恋は胸にしみて痛い






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