気になってました



初めはよく来るファンの1人かと思ってたんスよ。でもその人はいつしか特別な人に変わっていきました


「きゃー!黄瀬くん!」

「かっこいい!」


バスケの練習中、いつも通り浴びる黄色い声援。そしていつも通り蹴られる背中。何もかもがいつも通り、今日だって女の子が近寄ってくる


「大丈夫?」

「あ、大丈夫っスよ」


ほら、こうやって声をかけられてサインを強請られるんだろう、それでまた笠松先輩に蹴られると思った瞬間、その女の子は近づいてきた笠松先輩を殴っていた


「幸男!後輩蹴ったらかわいそうじゃない!」

「俺は殴ってもかわいそうじゃないのか!」

「かわいそうじゃない!」

「美晴ー!」


美晴と呼ばれた女の子は長い髪を靡かせて笑顔でこっちを向いて手を差し出した


「大丈夫?黄瀬くん」

「名前…」

「あんた有名だもの。幸男からよく話聞くし?まぁ、実物見たのは初めてだけど」


確かにかっこいいわね、なんてウインクする美晴さんは何だか魅惑的でどきりとした。差し出された手を取って立ち上がると周りから悲鳴が聞こえる。こんな事してこの子この後大丈夫か心配したけど、何人かが女の子の前に集まってきて“お姉様、ご無事で!”なんて言ってる…お姉様?


「先輩、あの人…」

「美晴は俺の幼なじみ。お前が男側の人気者だったらあいつは女側の人気者なんだよ」


知らなかったのか、と呆れたように笠松先輩が呟く。周りを見ればいつも居ないはずの男子生徒まで集まっていて、体育館はすごい熱気に包まれていた


「美晴ちょっとこい」

「何よ、幸男。今薔薇の蕾ちゃん達の相手で忙しいのよ」

「きゃー!美晴お姉様!」

「いいから来い。お前挨拶してねぇだろ」

「あ、あたし挨拶してなかったね」


薔薇の蕾ちゃんとかなんてキザなことを言うんだとか色々圧倒的すぎてぼうっとしてるとまた女の子が目の前にやってきた。真っ直ぐな視線に目を離すことが出来なかった


「あたし、2年の三船美晴、よろしくね黄瀬くん」

「せ、先輩!?」

「こいつお前を同い年だと思ったみたいだぞ」

「まぁ、童顔だからね。背も高い方だけど…間違えられるとはね」

「ごめんなさいっス!」

「いいわよ別に」


次は気をつけてよ。なんて言って三船先輩は颯爽と帰って行った。それにつられて体育館にいた半分以上の生徒も居なくなった。これが圧倒的で魅惑的な三船先輩との初めての出会いだった




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