01

棘原一華ちゃんは言うなれば天使みたいな人間だ。生徒会長で容姿端麗、文武両道、人徳…もう非の打ち所がなくて、誰からも慕われ、愛され眩しいくらい輝いている女の子。それが棘原ちゃんの肩書きであり、生まれもって俺とは違う部分のカリスマ性だ。最初はただのかわいい子だな、儚くてやべー透明感だなと思っていた。色素の薄めの白に近いプラチナヘアーに真紅の吸い込まれそうな瞳。最初はただなんとなく追いかけていただけなのに

「桑田くん、ちょっときてくださいませんか?」

学年1のマドンナに名前を呼ばれ椅子から滑り落ちそうになる。隣にいた苗木が“ついに生徒会長的指導が入るんじゃないかな?”なんて言っている、葉隠は“どんまいだべ!”なんて爆笑。こいつは後でしばくとして、なんで俺?なんて思っていたら手を引かれた。細くて手入れの行き届いた棘原ちゃんの白い手、あれか、何だっけ【白魚の手】って言うんだっけ。つか繋いだ手が異様に冷たい。今日はそんなに冷える日だったかな。棘原ちゃんは冷え性?なんて思いながら手を握り返せば周囲から悲鳴が上がる。なんだよ、手を引かれたから握り返しただけだろっ!なんてふてくされていれば葉隠が“棘原っちと手を繋げるなんて桑田っち、一生分の運使ったべ。もうミュージシャンにはなれないべ”なんてほざいてる。ミュージシャンは実力でなるんだよ。運じゃねーし、言ってろ。なんて思いながら、棘原ちゃんに導かれるまま教室を出た。本当に生徒会長様々に何言われるかドッキドキなんですけど。つか棘原ちゃんはどんどん人気の無いところに進んでいく。それにつれて俺の不安はやましい妄想へと変貌する。辿り着いた人気の全くない教室で棘原ちゃんは“誰もいないですね”なんて呟いた。え、本当、なんなの!もしかして愛の告白!?なんて思ってるときにふと気がついた。手ぇ、ずっと繋ぎっぱなしだった。それはいいけど、棘原ちゃんの手が一向に温まらない。俺の手はあったかいはずなんだけどな…なんでだ?なんて考えていれば、棘原ちゃんが“2人っきり、ですね”なんて近づいてきた。手は繋がれたまま、近付いてきたと言うより、胸を押し当てて顔を上げる棘原ちゃん。壁に追いやられる俺。いよいよまずいんじゃねーの?なんて思ったら棘原ちゃんが照れたように話し出した

「ずっとずっと、桑田くんのこと、気になってました」
「それって、さ…棘原ちゃんもしかして…」

“告白?”なんて言おうとした瞬間、棘原ちゃんがニヤリと笑って、八重歯が見えた。つか八重歯にしては尖りすぎてる歯が見えた。こんな笑い方する子だったっけなー…なんて思った瞬間、棘原ちゃんが俺の首元に顔を埋めた

「え!?棘原ちゃん、え!?」

慌てて引き剥がそうとした瞬間、首に痛みが走る。びっくりして棘原ちゃんを引き剥がせば、首から赤色が垂れた。血、だ…
((か、噛まれた…))
棘原ちゃんは自分の唇の端に付いた俺の血を美味しそうに舐めている。今の行為の意味に頭がついて行かない。は!?いったいどう言うこと!?

「棘原、ちゃん…?」
「桑田くん、やっぱり思った通りあなたは素晴らしい人、美味しい…もっと頂戴?」
「…へ?ちょ、よくわかんねーけどタンマタンマ!」

再び首に埋もれる棘原ちゃんを慌てて引き剥がす。本当に頭がついて行かねーけど、棘原ちゃんは俺を欲してるってこと?つまりセックスしたいってこと?それは願ったり叶ったりだけどなー俺にも準備っつーやつが…つか棘原ちゃんみたいな学校1のマドンナに迫られて何もしねーのは男が廃るって話しなわけで…あー!考えるのがめんどくせー!ヤればいいよな!な!なんて思って再び棘原ちゃんに向き直ればぐたっとしていた

「へ?棘原…ちゃん?」
「くわ、た…くん、あつい、です…わ…」
「棘原ちゃん!?」

それを最後にぐったりとした棘原ちゃん。訳が分からなかったけど、とりあえず1つする事は棘原ちゃんを素早く保健室に連れて行くことだ




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