暴君と粉砕機

授業も終わって放課後。みんなすぐさま寮に帰るから学園は当たり前のように静か。そんな俺はほぼ毎日のようにある用具委員会のお仕事のため体育館に資材運び。なんでも体育館の壁が穴だらけらしい
((そんなの業者に頼めよー…))
なんて思うのが本音だが、この学園の用具委員会は最早委員会の仕事を卓越してるんじゃないかってくらい学園の至る所を直しているのだ。たまに自分達(特に委員長)は大工なんじゃないかと考えるくらい直せる。この前、俺が間違えて留先輩の愛用金鎚をぼっきぼきにしたとき、新しいのに買い替えると思いきや次の日傷跡1つ残さず綺麗に直して持ってくるんだからびっくりした
((まぁ、俺は自分で言うのも何だが学園の1、2を争う壊し屋なのでそんな芸当は全く出来ないんだけど…))
そんなことを思いながら目的地に着くと同時にバレーボールが俺を目掛けて飛んできた

「え、なッ!?」

間一髪避けるも後ろにあったコンクリートの壁が少し凹んだ

「裕飛先輩!大丈夫ですか!?」

びっくりして腰を抜かした俺の元に1番に駆けつけて来たのは高等部1年い組の平滝夜叉丸くん。自惚れ屋だと有名な滝くんだけど、優しくて人想いだと俺は思ってる。現にこんなにも俺を心配してくれるんだから

「大丈夫ー当たってねーし。滝くんこそ痣だらけ…」
「なんだ裕飛じゃないか!」

滝くんの頬に触ろうとすると突然できた黒い陰。見上げると狼、いや…仁王立ちしている暴君こと、七松小平太先輩がいる。ちなみに後ろにはずたぼろになる体育委員会の面々が集まってきた
((なんで室内でしてんのに泥だらけなんだ…))

「裕飛何をしてるんだ?」
「これから用具委員会でこの穴だらけの体育館の修理をするんです」
「そうか!それは助かる。バレーをしたくても床や壁が穴だらけでろくに出来なくて困っていたんだ」

昨日まで壁の穴だけだったのにいつの間にか床にまで穴があいていて頭が痛くなった

「あの、七松先輩…バレーするなら外で…「裕飛先輩ッ!!」
「…滝くん、何かな?」
「外は喜八郎が開けた穴でいっぱいですることが出来なくて…」

あぁ、そうだった…作法委員会の穴掘り小僧がグラウンドを穴だらけにしたんだった。つか作法委員会は校内美化も担当してるくせになんでこんな事になってるんだ…

「はぁ…」
「すみません、私も止めたのですが…」
「あー大丈夫、大丈夫。しょうがないよ。あの暴君に何言ったって聞かないんだから…」

不安そうにする滝くんの頭をなでれば頬を赤くした
((あーあ、髪もボサボサ…学園2位のサラストちゃんなのに可哀想に))

「いーなー滝ちゃんばっかり裕飛に頭撫でてもらって」
「先輩ずるいっすよ」
「いや、次屋くんはいいとして七松先輩は俺より学年上ですよね?」
「だが、撫でられたい!」

相変わらず自由すぎる…扱いづらいから苦手だ

「とにかく、今から留先輩が来てここを直すんですから七松先輩暴れないでください」
「留ちゃん来るの!?」
「裕飛先輩が直すんじゃないんですか?」

俺の足元に移動してきた金吾くんの顔に手を伸ばして、泥を手で拭う

「そーしたいのは山々なんだけど、ほら…俺壊し屋だから!」
「先輩自覚あったんすね」
「…三之助お前後で部屋来い」
「さ、三之助ぇ!裕飛先輩ごめんなさい!」

無自覚方向音痴に言われるなんてなんていう屈辱。笑いながら声を低くして言えば何故か滝くんが謝ってきた。そのとなりでは相変わらずぽやんとしてる時友くんが見える…かわいいな

「じゃあ、裕飛は留ちゃんが来るまで直さないのか!」
「まぁ、そーなりますね」
「じゃあ裕飛もバレーしよう!」
「…なんでですか」
「暇だから。あ、裕飛ちゃんはバレーボール苦手?」
「いや得意な方ですけど、バレーなんかしたら穴が増え「じゃあやろう!」

((聞けよ!))
俺の願いも虚しく七松先輩に担がれて俺はコートに立っている
((こうなったらボール壊してしまおう…))
そう思って七松先輩のアタックボールを思いっきり叩いた

「いってぇぇえええ!」

ばんっと音を立ててボールは粉々にはなったけど、岩殴ったんじゃないかって思うくらい痛かった。よっぽど回転がかかってるんだ…つかこんな殺人アタックを下級生に撃つなんて…あぶねぇ!

「裕飛先輩大丈夫ですか?」
「うん?大丈夫だよ、ありがと金吾くん」
「俺、七松先輩のアタック粉々にする人初めて見た…」
「元は球だしねー…でも痛かった。見て、赤くなってる」
「わー!」

くそ、時友くん可愛すぎる…!

「すごいな裕飛!」

時友くんを抱きしめていると七松先輩が叫んだ

「私のアタックをいとも簡単に壊すなんて!」
「簡単ではないです。えぇ、決して」

現に俺の右手超痛ぇ…

「すごいぞ!初めてだ!」
「そりゃどうも」
「もう1回みたいな!」
「はいはい、もういっか…は?」

この人なんて言いました?

「ほら、裕飛いっくぞー!」
「ちょっとまって!」
「いけいけどんどーん!」
「ぎゃあぁぁあああ!」

こうして俺は留先輩が来るまで七松先輩の殺人アタックを受けることになったのだ

「先輩、もうやめ…」
「まだまだー!いけいけどんどーん!」

((何とかしてよこの暴君!))




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