待つっておいしいの?

「だーんぞッ!」
「あ、兄ちゃん」

ぎゅっと愛しの団蔵に抱きつけば、くりりとした瞳が俺を捉えた

「ここ…間違ってるぞ」
「えー…ここ分かんなかったんだよね」
「自分できちんとしただけえらいよ。どれ、俺が教えてあげよう」
「本当に!?」

団蔵が嬉しそうに笑うと俺と同じ藍色の髪が揺れて、香りが舞った。さっきまで運動をしていたのだろうか、頭を撫でれば額が汗ばんでいる事に気がついた

「団蔵、さっきまで遊んでいたのか?」
「ううん。土井先生が“テストだ”なんて言うから条件反射で動いちゃって」

5つ下の弟の団蔵の組は何かと有名で、出席率は素晴らしいがテストとなると組員一同が一斉に逃げ出すと言う素晴らしい特技があるらしい

「なるほどねー…つまり今はテスト中か」
「そう言うことだ。高等部2年ろ組の加藤裕飛…」

急に視界に影ができたと思ったら額に青筋を作り、口元を歪ませた団蔵の担任の土井半助先生が目の前に立っていた

「あら土井先生、相変わらず男前で」
「裕飛…お前なんでここにいるんだ?」
「もちろん愛しの団蔵に会いに!」
「威張るな!」

土井先生がどん、と机を叩くので一生懸命に問題を書き込んでいた団蔵の字が歪んだ(元々暗号に近いのだけれど…)

「ちょっと土井先生、今団蔵が一生懸命問題解いてるんだから邪魔しないでくださいよ」
「お前もまだ授業中のはずだろう!何をしに来た!」
「だから団蔵に会いに来たんですってば!」

さっきから同じ質問ばかりする土井先生に嫌気がさしてちょっと声を張り上げれば、俺の膝の上に座っていた団蔵や1年は組の子達はテストを止めてこっちに集まってきた

「はにゃ、加藤先輩だー」
「本当だ。加藤先輩こんにちはー」
「もう、喜三太としんべヱ違うだろ。裕飛先輩、だろ?」
「「裕飛せんぱーい!」」

かわいいかわいい用具委員会の湿り気コンビはにこにこと俺に抱きついてきたので俺は団蔵が潰れないように抱きしめて、空いた片手で2人の頭を撫でた

「加藤裕飛先輩、今日は何の用事では組にいらっしゃったのですか?」
「庄左ヱ門くん、君相変わらず冷静ね」

本当に三郎の後輩なのかと思うくらいしっかりしてるから感心してしまう

「私がなんだって?」
「…てめぇ、どこから沸いた」

せっかくちびちゃん達に囲まれてハーレムだったのに三郎の登場で一気に崩れた

「お前ただでさえ残念なんだから空気くらい読めよ」
「ただでさえってどう言うことかな?」
「とりあえず生きててごめんなさいって全人類に詫び入れろよ」
「ただ担任に言われて裕飛のこと迎えに来ただけなのにこの言われよう…」
「ほら、裕飛。鉢屋がわざわざ迎えに来てくれたんだからいい加減自分の教室に帰りなさい」
「あれ、土井先生居たんですか?」
「…居ましたよさっきから」

土井先生は急にお腹を押さえ始めたけど…腹下した?トイレは早めに行かないとだめですよー

「あーもー三郎が来たせいで土井先生お腹痛めたじゃん。もうお前本当帰れよ!」
「裕飛ひどッ!!土井先生の胃痛が再発したの私のせいじゃな…「黙れば?」

めそめそし始めた三郎の後ろから見知った顔が現れた

「ほら、裕飛かえっぞー」
「はちー?どうした?」
「どうしたじゃないだろう。今授業中なんだぞ?」
「知ってるよ、だけど俺は一刻も早く団蔵に会いたかったんだ!」

今日1日のおまじないなのに昼過ぎてしても意味がないからね!

「(朝の事だな…)わかった。待ってるから早くすませて教室に帰ろうぜ。それにあんまり授業抜けてると雷蔵に怒られるぞ」
「それはやだ…」
「今半分点火してるから早くしたほうがいいぞー」

はち!そんな爽やかに言わないでよ!やだやだ!雷蔵本当に怖いんだもん!

「ごめん、団蔵…兄ちゃん行かなきゃ。今日委員会あるんだろ?」
「うん…」
「頑張れよぅ、何かあったら俺を呼ぶんだぞ。すぐ駆けつけるから」
「わかった!」
「いいこ…じゃあいつもの、団蔵が今日1日元気に過ごせるようにおまじない」

団蔵を下ろして椅子に座らせて、汗ばんだ髪をかき分けて額とほっぺに口付け。そして互いに目を合わせて笑った

「団蔵いつも裕飛先輩にちゅーしてもらってるの!?」

立ち上がったと同時には組のかわい子ちゃん達が団蔵に群がった。そういや人前でやんの初めてじゃん、なんてやった後から思い出した。団蔵も恥ずかしがるかななんて思ったけど、なんか自慢気な顔してるそれがすごい嬉しい

「今日は朝時間無かったから1年寮に行けなかったんだよねー」
「虎若はいつも見てるよ」
「そうなの!?裕飛先輩、団蔵だけずるいー僕にもー!」
「僕にもー」

そうやって俺のズボンを引っ張るのはやっぱり喜三太としんべヱ

「ごめんねー。ちゅーはしてあげられないかなー」

そう言ってだだをこねる2人を抱きしめた。2人のことは大好きだけど、俺の口付けは特別だから

「裕飛先輩…」
「ごめんね。俺の唇は団蔵とはちだけのものだから」

そう言ってはちに近づいていって抱きしめたら、照れた顔をした

「なんで!団蔵はいいけどなんではちにもしてんの!?」
「あ、三郎復活」
「なんではちはいいの!?裕飛この前キスしようとしたときぶっ叩いたじゃん!」
「雷蔵がね。てか変態(三郎)とはちを一緒にすんな」
「振り仮名おかしくない!?」

泣きじゃくる三郎を無視しては組のみんなを振り返る

「じゃあね、団蔵!」
「土井先生、失礼しました」

そしてはちに手を引かれて高等部に戻った。戻ったあとはなんか光臨気味だった雷蔵に怒られるわ、三郎はウザイわで散々だった
((だけど無理、待てないんだもの))





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