夏休み前のお楽しみ


「青い海、白い砂浜、靡く風…」
「そして輝く水着…」
「「そして真夏のアバンチュール!!」」
「…お前らどうした」

ぱりん、と雷蔵が噛んだ煎餅が割れる音がした。俺の発した言葉に、ぐるりと振り返りこっちを向くのははちと三郎

「どうしたって裕飛!夏休みだよ!夏休み!」
「夏休みと言えば海でナンパだろう?」
「…お前らこーゆー時ばっかり息ぴったりだな」
「裕飛、テンションが低いぞ!祭りごと好きだろう?」
「ナンパは祭りじゃねぇ」
「裕飛がテンション低いのはあれでしょ?テストだからでしょ?」

雷蔵がまた煎餅を噛んだ。そうなんだよ!テストあるんだよ、期末テスト!また英語と格闘しないといけないと思ったらテンションも下がるわ。三郎は“テストなんて簡単だろう?”と言っているが、その隣ではちが目を泳がせていた

「八左ヱ門、現実から逃げないで勉強するのだ」
「裕飛、採点終わったよ。こことーこことー、あとこれも。文法間違ってるよ」
「うげぇ…」

勘ちゃんに採点を頼んでおいたノートは真っ赤に染まっていた。はぅ、英語辛いぜ…と思っていれば“現実がなんだ!”とはちが机を叩いた。字が曲がった

「何すんだ」
「ごめん、裕飛!でもたまには現実から目を背けたっていいと思うんだ!」
「よく言った八左ヱ門!そうだナンパに行こう!」
「…ばかなの?」
「雷蔵、こあーい」
「裕飛もテストなんかに集中してないでナンパに行かないか?」
「そーそー裕飛もてるし」
「大体なんでナンパ?」

ペンを走らせながら2人に事情を聞けば、はちが“今年こそは彼女が欲しい!”と言って、三郎が“男子校では華がないじゃないか”と言った

「まぁ、裕飛は私の華だが、たまにはおやつも欲しいんだ」
「三郎、それなければ健全なのに」
「全国の女の子に謝るのだ」
「ナンパねぇ…めんどくさいんだよね。次から次へと寄ってきて」

そう言えば、部屋の空気が変わった。みんな俺を見て睨むのだ。何故?

「…裕飛もてるから」
「裕飛も全国の女の子に謝るのだ」
「なんで!?つーか勉強しようぜ」
「裕飛今回は何でそんなに真面目に勉強してるの?」
「あん?気分」
「裕飛気分屋だからねー」
「そーそー雷蔵の言うとおり。まぁ、来る夏休みに思いを馳せるのはいいんじゃないか?」

青い海、白い砂浜、眩しい太陽、靡く風、そして…“兄ちゃん!”何つって海パン姿で駆け回る団蔵の姿を想像したら…

「はぁん、つらい…!」
「何想像してるか丸わかりなのだ」
「どうせ団蔵だよ?」
「かわいいは正義!」
「はいはい、裕飛勉強しようね。三郎とはちのばか騒ぎに付き合ってる場合じゃないでしょ?」
「ちょ!雷蔵さん!?」
「…ついに三郎と同じ扱いを受ける日が来たんだな」
「何で泣くんだ八左ヱ門」

そんなこんなで個々に思いを馳せる夏休みはもう直ぐ…

((団蔵と初めての夏休みだ!))




prev next


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -