落とし物は届けよう



びゅーびゅーと風が音を立てる。そんな中校庭に佇む男6人、まぁいつもの面子だ


「おい」

「ん?なんだい裕飛?」

「こんな風強い日に外出て何すんだよ」


カーディガンの袖を目一杯引っ張って、隣のはちにくっつきながら三郎に問えば“部屋の中にいると腐るだろう”と言う回答が帰ってきた


「だからってこんな日に外でなくてもねー」

「勘右衛門の言うとおりだよ」

「寒いな」

「ほらほらー勘ちゃんも雷蔵も兵助もそうやって言ってるよー?」


そう三郎に言えば気持ち悪い笑みを浮かべながら肩をたたいた


「いいか、裕飛。こんな強風な時こそ外に出る価値があるんだぞ」

「はあ、なんでさ」

「女子のスカートが捲れる!」

「うぉおおおおおおおおお!?」


隣ではちが興奮するのを見ながら心底冷めた視線を三郎に送る雷蔵が見えたのは見なかったことにしたい


「…ばかだろ」

「こんな日に外出るわけないだろ」

「そうだよね、兵助。僕もそう思う」

「大体、見えるか見えないかがあるから興奮するんじゃねえかよ。見えたら面白くない」

「裕飛はちょっと違う」

「ん?」


雷蔵に苦笑いされながら“俺の興奮返せ!”とか言ってるはちの肩をたたき、帰ろうとした瞬間、顔に何か当たった


「ぶふっ、なんだよ全く…」

「おほー!」


手に取ってみると、びっくりして声が出なかった。てか声を発する前に隣のはちが顔を真っ赤にして声を上げた。三郎なんかひゅーって口笛を吹いてる


「これは…」

「パパパパパンツ!」

「いや、はち、たかがパンツで興奮すんなよ」

「きゃー!」

「雷蔵、見えてる見えてる」

「水玉かわいいねー」

「勘ちゃんそこじゃない」

「…白がよかったな」

「だぁかぁらぁ!なんでパンツが飛んできたのか考えろよ!」

「俺の台詞取るな三郎」

「てへぺろ☆」

「きしょ」

「ひどい!」


嘘泣きしてる三郎を放っといて再び手元のパンツに視線を戻す。水玉の木綿生地、明らかに女物。とくれば、隣の女子寮から吹っ飛んできたと推測するのが正しいな

((厄介なもの拾ったなぁ))

なんて思っていると勘ちゃんが何かを振り回している。何かと思って近づけば、また手に持ってるのはパンツだった


「それどうしたの?」

「拾ったー!」

「拾うなー!」

「おほー!黒のレースで紐とか派手なの穿いてるなぁ」

「てか周りパンツだらけだな」

「何でこんな日に下着干すかなぁ…」


辺りを見回せば色とりどりのパンツが落ちていた。ここはパンツの花畑か…


「てかこの状況どうするよ?」

「落とし物は届けなきゃね…」

「雷蔵、落とし物ってもパンツだぞ?普通に届けられないぞ?」

「兵助の言うとおりだねーどうするー?」

「よし、裕飛出番だ」

「はぁ?」

「裕飛が女装して女子寮に潜入して置いてくれば完璧だ」

「三郎殺す」

「なぜだい!?名案だろう?」

「確かに」

「はぁ!?兵助まで何言ってんの!?」

「まぁ裕飛ならいけそうだよね。モテるしバレても大丈夫そう」

「んなわけあるか!」

「あーらあんた達何騒いでんの?」

「山田先…伝子さん」


ぞわっと身の毛のよだつ声が聞こえたと思って振り返れば山田先生基、伝子さんがそこにいた


「いやーちょっといろいろありましてー伝子さんは何してるんですか?」

「あたしー?あたしも野暮用よ」

「へ、へー」


((なんで女装中なんだろう…正直目に毒だ))

なんて超失礼なことを考えながらみんなで苦笑いをしていると、伝子さんは何かに気がついたように俺と勘ちゃんの手元を見た


「あらー裕飛に尾浜拾ってくれたのー?」

「何がですか?」

「やーねーパンツよパンツっ!言わせないでよ!」

「え、もしかしてこれ…」

「あたしのパンツよー!」


その一言に辺り一面は凍りついた。俺らはしばらく山田先生をまともに見ることが出来なかった

((ま、まさかね…))




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