巻き返せ!



前回のあらすじ


「セクハラを受けてたら競技始まってた」

「簡単な説明だな」

「三郎!何で待ってくれなかったんだ!」

「乳首を押させてくれたら答えてやろう」


次の瞬間、勘ちゃんがどこからともなくハリセンを取り出して三郎を叩いていた。俺の振り上げた手は行き場を無くしたためそのまま平太の頭を撫でた


「変態です。鉢屋先輩」

「…」

「庄ちゃん、彦四郎、そんな蔑んだ目で見ないでくれ」

「三郎最低ー」

「裕飛に見られると快感…」

「勘ちゃんもう1発頼む」

「オッケー」


三郎が勘ちゃんにしばかれてる間、なんでスタートしちゃったかを聞くと、どうやら揉めてる間に始まったらしい。後ろを見れば未だに揉めている留先輩と潮江先輩、それを止めようとする三木くんが目に入った


「はー…スタートダッシュ完全に遅れた」

「この競技は委員会の親睦をはかるものですから遅くても大丈夫だと思いますよ」

「あ、彦四郎くん本当に?」

「はい」

「それより裕飛先輩服着た方がいいですよ」

「庄左ヱ門くん冷静ね」


後輩に言われたら立つ瀬がないから、勘ちゃんに服を借りていざ競技に参加する。時間短縮のためにしんべヱをおぶり、平太と喜三太を両脇に抱えて走ることにした


「お前らー特にしんべヱ!落ちるなよ」

「「「はーい!」」」

「作兵衛はなるべくついてきてくれ」

「はいっ!」

「留先輩ー?置いてきますよ?」

「あ、ああ!」


留先輩を大声で呼ぶと、気がついた会計委員会も急いで準備を始めていた。競技は障害物競争みたいな感じで色んな障害があったけど、難なくクリアする事が出来た

((つかいつの間にかこんなもん作ってたんだよ))

なんて思いながら進んでいくと食堂のおばちゃんが立ちはだかるエリアにやってきた。他の委員会も立ち止まって何かしている


「待っていたよ」

「え?おばちゃん?」

『猛進を続けていた用具委員会も料理エリアでストップです』

『こちらの料理エリアでは代表者2名が先生方のために料理を作っていただきます』

「料理ー!?」


1年生を降ろして彦四郎くんと庄左ヱ門くんの放送を聞いていると、とんでもない単語が聞こえてきた

((料理出来るなんて俺と留先輩くらい?))

なんて思っていると、留先輩が俺を見てすごく渋い顔をした。何でそんな顔するんですか…。料理対決はおばちゃんのくじ引きによって誰がでるか決まる。そう、くじ引きだから下手したら後輩の多いうちの委員会は不利なのだ

((1年生同士にはなりませんようにっ…))

お祈りしながらちらっと横目を見れば、留先輩も作兵衛も固唾を飲んで見守っていた。きっと同じことを考えてるんだろうな…


「(裕飛だけはなりませんように)」

「(神様、裕飛先輩だけは当たりませんように…)」

「用具委員会は…裕飛と喜三太ね!」

「俺!?」

「はにゃー僕ー?」


できたら留先輩が作れば1番良かったんだろうけど、最悪の事態は避けられた!

((やった!))

なんて内心ガッツポーズをしていると、うなだれた留先輩と作兵衛が見えた。なんだよ一体。あ、喜三太がナメクジあるからあれなのか!そうか!ちゃんと手を洗わせるから大丈夫だよ!


「よし、一平勝てるぞ!」

「何でですか?竹谷先輩」

『裕飛は壊滅的に料理が下手だからでーす』

「俺下手じゃねぇし!」


ひでぇよ、はちも三郎も!てか苦笑いしてる雷蔵もなんなの!兵助は催してるけどどしたの!?とにかく料理をしなくてはと思い、喜三太に手をよく洗わせて、いざ仮設キッチンに立った


「いい、裕飛、喜三太。メニューはおでんよ」

「はーい!」

『裕飛先輩、喜三太チーム、メニューは簡単ですが果たしてうまく作れるのでしょうか?』

『ちなみに尾浜先輩』

『はいはい、何かな彦四郎』

『裕飛先輩はどれだけ料理音痴なんですか?』

『んー豆腐を火を使わないで真っ黒にするくらいかな!』

『…魔法ですね』

「魔法使えるって言いたいんだな!そうだな!マジシャン裕飛と呼んでくれ!」

『いいように解釈しないでください』

『庄ちゃん厳しい!』

「…私食べるの怖くなってきた」

「私もです」


山田先生と土井先生がなんか言ってるし、実況うるさいけど無視して作業に取りかかる。まずは大根を切ろうと思って喜三太に大根を取ってもらった時に声援が聞こえてきた


「喜三太ー裕飛先輩ーがんばれー!」

「がんばれー!」

「しんべヱに平太…やっぱ持つべきものはかわいい後輩だな!」

「裕飛ー!まな板まで切るなよー!」

「先輩ー!包丁折らないでくだせぇー!」

「どんな声援!?」

『あっはっはっはっはー!裕飛やばいなぁ!』

『本当にね。僕食べる係りしなくて本当によかった』


三郎と勘ちゃん、後で殴る。ぜってー殴る。このやろう

散々言われながらも作業は進んでいき、ぐつぐつと鍋も煮えてきた。見回りにくるおばちゃんにも“美味しそうね”なんて言われる。ほらみろ、俺だって料理出来るんだよ!

((あっと言わせるもの作ってやるぜ!))


「…裕飛の鍋、黒くないか?」

「昆布がどろどろに溶けてるみたいです」

「…はぁ」


み、見た目はぐろいかも知れないけど味見した喜三太も“おいしい”って言ってるから大丈夫な、はず…


「留先輩近いっすよ」

「心配でな…」

「味は悪くないっすよ?味見します?」

「ん」

「「(え、あれ食うの!?)」」


用具委員会以外の心がひとつになった瞬間だった


「確かに…悪くないな」

「「(まじで!?)」」

「でしょー!?決め手はとろろ昆布だぜ!」

「…おでんにとろろ昆布入れないけどな」

「俺もうだめ…」

「兵助しっかり!」


兵助がなんか大変なことになってるみたいだけど、今は気にしてあげることは出来ない


「とにかくできたー!」

「やったあー!」


喜三太を抱き上げて2人で“完成ー!”なんて声を上げる。器によそって山田先生と土井先生のそばに持って行こうとした瞬間、何かがぽちゃんと鍋に入り込んで爆発した


「あっちーっ!あっぶ、なっ!」

「先に行かせんぞ。まずは作法委員会だ」


投げられたのは、立花先輩お馴染みの手榴弾で、危うく大火傷、あーんど大怪我するところだった

((てかまだ出来てなかったんかい))


「ちょ、危ないじゃないっすか!てゆーかうちより遅いとか手際悪いな!」

「うるさいぞ」

「きゃあー!」

「喜三太、危ないっ!」


投げられた手榴弾を間一髪弾き飛ばせば、体育委員会の仮設キッチンで爆発が起こり、七松先輩が鍋を被っていた

((これはまずい…))


「い、今手榴弾を投げたのは誰だ」

「裕飛だ」

「はぁ!?最初に投げたのはあんただろ!?」

「私は裕飛に投げた。小平太には投げてない」

「子供の言い訳!」

「ゆ、ゆるさんっ!」

「ひぇっ!」


結局七松先輩が暴れ出したのを皮きりに、全員が乱闘体制に入り、暴れ出したため、今回の委員会対抗戦はお開きになった。今回分かったことは俺がすごい料理下手だってことが全学年に知られたくらいだった

((納得いかん!))




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