スタートダッシュが肝心です



心地よい眠りに浸っている中、普段なら起こるはずもない有り得ない爆音でその日は目が覚めた


「な、なんだぁ!?」

「つーかうるせー…ふぁあ」

「裕飛、意外と落ち着いてるよな」

「これでもびっくりしてる。つか、何?」


はちと一緒に窓の外を覗くと、校庭に黒い物体が見えた。大砲だ

((戦争でもすんのか?))

もうこの学校は通常じゃ有り得ないものがあって逆に落ち着いてきた


「裕飛!はち!今の音聞いた?」

「聞いたぜ。飛び上がった」

「あ、雷蔵おはよう…三郎は?」

「それが…」

「裕飛、はち、雷蔵…勘右衛門を見なかったか?」

「お、兵助。見てないけど」

「そうか…起きたら居なかったんだ」

「三郎もだよ」


次々とやってくる友人と姿が見えない友人、その答えの行き着く先は…


「はーん…わかった」

「何が?」

「三郎と勘ちゃんがいない理由。それは今放送が流れるよ」


そう言うと校内放送のアナウンスが流れ【全校生徒は直ちに校庭に集合してください】と言う庄左ヱ門くんのなんとも眠そうな声が響いた。それを聞いたはちはちょっと青ざめて俺の顔を見た


「…まさか」

「そのまさか。学園長先生の思いつきだね」

「だから三郎と勘右衛門いないのか」

「裕飛頭いいね」

「お前エスパーか!」

「いや、誰でも導き出せる答え…まぁ、いいけど」


目を輝かせるはちの頭をぽんぽんと叩いて、頬に引き寄せて口づけをした。その様子を雷蔵はきゃーって言いながら目元を何となく隠して見てる

((いつも見てるのに純情なんだから))


「てか早く行かないとな」

「校庭集合。遅れたら厄介だもんね。寝間着でいくか…」

「裕飛もはちもそのままいくの?上半身裸だよ!?」

「男しかいないんだしいいだろ」

「日焼けするぞ」

「…観点がずれてるよ兵助」

「兵助こそパジャマで行くのかよ」

「あぁ、何か問題あるか?」

「あ、あー…ない、かな」


きょとんとして手を広げてみせる兵助を後目に、はちと目を開わせて軽くため息をついた。豆腐柄パジャマってどうなんだってすごくツッコミたくなったが、ぐっと飲み込んで我慢した。そのあと校庭に移動すると全校生徒が集まっていた


「兄ちゃーん!」


愛らしい声が聞こえると思ったら、目の前から団蔵がTシャツと短パン姿で駆け寄ってくる


「だーんぞー!」

「兄ちゃんおはよー!」

「おはよー団蔵。相変わらずかわいいっ!ちゅーしたる!」

「えへへ!いっぱいちゅーして?」


ずきゅーん!なんてかわいいこと言っちゃうのこの子は!襲っちまうぞこら!かわいいな、かわいいっ!


「裕飛、いつものことながら襲うなよ」

「今の格好じゃ冗談通じないからな」

「なんで」

「裸だからでしょ」


団蔵を抱き抱えると、雷蔵にさらっと言われた。腕の中で団蔵が兄ちゃん裸、風邪引かない?なんて心配そうな顔で見つめている


「引かんよ。大丈夫」

「でもー…」

「じゃあ引っ付いて暖めてくんね?」

「僕が?」

「おう!」


そう言ってにっこり笑えば、団蔵はぎゅうぎゅう抱きついてきて、あったかい?って上目使いで聞いてくる。かわいい、かわいいぞ団蔵ー…


「あーあったけー…」

「本当に!?」

「身も心も暖かいなー」

「兄ちゃんっ」


ちゅ、とリップ音が鳴ったと思ったら、頬に柔らかい感触と団蔵の照れた顔。それでキスされたんだとすぐに分かった


「あーもーかわいいな!」

「兄ちゃん苦しいよー!」

「ちょっと、裕飛話聞いてる?学園長先生話してるよ」

「へ?」


そんなの興味ありませんでした

話によると各学年親睦を深めるためにまた委員会対抗で何かするらしい。委員会対抗とかまた団蔵と離れ離れになるじゃないかと思いながらはちの話を聞いた


「ふーん。全然聞いてなかった」

「だろうね」

「だろうねって、雷蔵が冷たいよ…」

「嘘泣きして弟に抱きついてるなよ、裕飛…三郎みたいだぞ」

「な!やめる!」

『兵助!どう言う意味だ!裕飛もやってていいんだぞ!』

「うわ、地獄耳」

「いやだ」


荒ぶっている三郎は勘ちゃんに回収されて、留先輩のかけ声により、用具委員会のみんながいるところに集まった


「裕飛」

「はい?」

「団蔵を離せ」

「えぇーん」

「くらぁ!裕飛!家の団蔵を返せ!」

「はぁ!?家の弟なんですけどー!?」

「本当にちょっとの間でいいんで団蔵をこっちに…」

「うーん。三木ちゃんが言うならしょうがないな。でも団蔵はものじゃないからね!怪我させたら怒るかんね!」

「…はい」

「過保護すぎだ」


そう言って留先輩は俺の頭をチョップした。後輩に手を挙げるなんて留先輩らしくないよぅと言えばすなまなかった、と言って頭を撫でてくれた。ちょっとほっこりする


「田村、すまなかったな」

「いえ、大丈夫です」

「三木くんごめんね!だって団蔵と潮江先輩親睦を深めて欲しくなかったから…」

「ほほう…裕飛どう言う意味だ?」

「そのまんまだし」

「何をー!それより貴様、服を着ろ!」

「なんで」

「その、目のやり場に困る…」

「…やーん。潮江先輩のえっちぃー」

「裕飛先輩棒読み」

「文次郎貴様ー!」

「ま、待て留三郎!誤解だ!」

「問答無用だ!」

「さて、いくか…」

「先輩、先輩っ」

「ん?」


平太を抱きかかえて、ケンカしている2人を放置して、みんなで受付まで行こうとすると、作兵衛がジャージを引っ張って指を指した


「どうした?」

「もう始まってます!」

「はぁ?」


見るとみんな競技を始めており、慌ててみんなで走り出した

((待ってくれないってなんだ!))





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