だっていつもじゃない


がらっと教室の扉を開けるとすぐさま目の前に入ってきた明るい橙色の頭が2つ。もちろん2人とも自分の級友なんだけれど、教室に入ろうと右へ左へと動くにも、目の前の奴も同じ様に動いて妨害する

「ちょっと、三郎邪魔」
「裕飛、出会い頭にそれは無いでしょ。だいたい私がもし雷蔵だったらどうするんだい?」

そう言いながら得意そうな顔をするのが鉢屋三郎でその後ろでなんだかおろおろしているのが不破雷蔵。2人とも姿形が全く一緒だが決して双子ではない。別に親同士の離婚が原因で生き別れになって名字が違うけど数年前に再び出会って今は一緒なんてドラマみたいな展開があったわけじゃない。他人だ。昔どうして同じ顔なのか聞いたけどよく覚えてない。なんでも昔から鉢屋家は不破家の顔を借りるのが習わしだとかどうだとか…でも分かり難いから【行き過ぎた他人のそら似】と言うのが簡単だし妥当かもしれない。まぁ、俺に言わせれば醸し出す雰囲気やら性格なんかは180度違うんだけど…

「つーか本当に邪魔だよお前」
「口が悪いよ、裕飛」
「いや、雷蔵…俺を注意するなら三郎退かしてよ」
「そうなんだけど…三郎、さっきから裕飛に用事があったみたいでずっと探してたから」

あ、それでか。どうりで変だって思ったよ。いつも三郎が俺に付きまとってると雷蔵がすぐさま三郎を俺から剥がしてくれるからね

「なんだ、用事か…なんだい鉢屋くん」
「えらく他人行儀だな」
「お前他人じゃん」

雷蔵と違って俺はお前と全く似てないんだよ

「私と裕飛は内面が似ているだろう?」
「お前何心読んでんだよ。つか三郎と性格似てるとか心外なんですけどー傷つくー」
「裕飛の発言の方が傷つくよ…ね、雷蔵」
「でも三郎なんかと似てるなんて言われるのは誰だって嫌だよね」

あ、ちょっと雷蔵さん。俺は冗談のつもりだったけど、今の発言で三郎に留め刺したよ。てゆーかよく見たら雷蔵ってば三郎に荷物持たされてるし
((さすがに嫌になったんだ…))
いじけだした三郎の横をすり抜けて雷蔵のもとへ駆け寄った。笑顔で迎えてくれた彼の手元には山積みの本が風呂敷に包まれていた

「うわ、すごい量…どうしたの?」
「図書委員会でいらなくなった本を中在家先輩から頂いて、裕飛本好きでしょ?」
「うん、好きだよ。加えて三郎の荷物か…重かったでしょ?」

あいつ教科書持ってこないくせにいつも鞄だけは無駄に重いから…
((一体何入ってんだか…))
それにしても自分の荷物だって重いのに三郎のもまで持つなんて、やっぱり雷蔵はいい子だな

「じゃあ寮帰って読もっか。俺このプリント提出したら帰れるし…あ、鞄取ってくるから待ってて」
「うん」

雷蔵に笑いかけて自分の机から鞄と教科書を持ち出して、空いてる片手で雷蔵の持っている風呂敷を手にとって

「あ、裕飛重いんだよ!?」
「大丈夫だって。あ、軽いじゃん」
「平気なの?」
「愚問。だてに用具委員会してないから」

そうやって笑うと雷蔵は“そうだよね”と笑った。その雷蔵のかわいい笑顔のすぐ近くでなんとも嫉妬深い表情の三郎が目に入った

「何」
「何って、私が落ち込んでるのに裕飛も雷蔵も声をかけてくれなかった!」
「知るかボケ」
「裕飛口悪いー」
「うっさい。だいたいなんで勝手にすねてる三郎なんかに声かけなきゃいけないんすかね?」
「裕飛言葉使いちゃんとしないとだめだよ」
「ごめんよ、雷蔵」
「…私と雷蔵の扱いが違う」
「だっていつものことじゃんか」

雷蔵いい子だもん。三郎より何倍も大好きだもん。そうやって言えばまたすねてへばりついてくるからたまったもんじゃない。しょうがないから三郎に抱きついていい子いい子すれば元気になったのか笑顔になった。そして3人で寮に帰った
((それにしても三郎の用事ってなんだったんだか))






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