「用具委員集合!」
いつも通り、留先輩のかけ声で用具室前に集まって委員会前の点呼取り。でも今日は少し特別で、委員全員が気合いを入れている
「よし、全員いるな」
「体調も昨日いっぱい寝たんでオッケーっす」
「裕飛はうちの委員会の主戦力だからな。体調万全で行こう」
「…バイク持って行きますか?」
「好きにしていいぞ」
「食満先輩!家鴨さん印の鳥餅砲、準備完了です!」
「作兵衛、お前の担当だからしっかりな」
「はい!」
作兵衛の元気な返事に続いて1年トリオが金槌や鉋など大工道具を持って鼻息を荒くしている
「なめさんはいいですかー?」
「持って行こう」
「はーい!」
「用具委員会、準備が出来たようだな。これより戦場へ向かうぞ!」
「「「はーい!」」」
留先輩の気迫あるかけ声に1年トリオがかわいく返事をし、俺はバイクを飛ばして戦場に向かった
「ちーっす!」
バイクをかっ飛ばして戦場となる会計室の壁を蹴破った。なんか三郎っぽい奴を引いた気がするけど気にしないどこう
「気にしておくれ!危うく引かれかけたじゃないか」
「…ちっ」
「裕飛まで雷蔵みたいなことするなよ、傷つくじゃないか」
「ごめんごめん」
マジ凹み気味の三郎、ちょっと虐めすぎたなと思い謝ってから目の前の本当の敵と相対する
「バイクでくるバカタレはどこの委員会だ!」
「用具委員会でーす」
「裕飛!お前か!」
「予算少なすぎですー増やせよこら、引くぞ?」
「に、兄ちゃん…」
団蔵がびっくりした顔をしてる。てか団蔵を敵に回すのは兄貴として胸が痛いな、でも団蔵のびっくりした顔とか必死によける姿とかかわいくてかわいくてしょうがないよな。うん
「裕飛、先に突っ走ったのになんで何もしてないんだ…」
「あー留先輩。いやー団蔵のびっくりした顔とかかわいくてついー」
「兄ちゃん、僕を引くの?」
「やだなぁ、引くわけないだろ」
「兄ちゃん大好き!」
「俺も大好きだよ、団蔵!」
「裕飛戻ってこい。予算の話が出来んだろうが」
「多分裕飛先輩、しばらく戻って来ませんね」
「策に溺れたな留三郎!」
ふはははは、と潮江先輩が笑っている。あ、これ作戦だったんだ。まんまと引っかかったわ俺。団蔵を見ると俺を離さないくらいにぎゅうぎゅうと抱きついてる。嬉しい、嬉しいけどこれじゃ予算について話せない
「兄ちゃん、ごめんね」
「いいよいいよ。俺に抱きついてろ」
「いや、裕飛…それじゃあだめだろ」
「あれ、はち居たの?」
「…居ましたよ」
凹んでるはちは生物委員会に任せて、再び会計委員長と相対する。すごく緊迫した空気が流れる中、先陣を切って口を開けたのは留先輩だった
「文次郎、用具委員会の予算が少なすぎる!お前の訳分からない鍛錬で破壊された施設や道具の修理は全部うちがになってるんだぞ」
「バカタレ!俺だけでなく小平太やそこの裕飛が学園内で1番物を破壊してることは調査済みだ!さっきだって会計室にバイクで突っ込むとは何事だ!」
「んだよ、部屋の1つや2つでねちねちうるせぇよ」
「上級生に対してその態度は何だ!」
「先輩は俺にとって上級生じゃないんで。とにかく予算あげろよーあと団蔵くれ」
「…裕飛、団蔵は予定に入ってないぞ」
「えぇー…いーじゃん留先輩ー団蔵もほーしーいー」
「裕飛、話が逸れたよ」
「だって雷蔵、団蔵欲しいんだもん」
「仕方ないなぁ…」
「仕方ない訳あるか!引き抜きは許さん!」
「うっせぇなじじい!ヤキ入れるか、あぁん?」
「裕飛先輩…怖いよう」
「裕飛先輩、元ヤンだから…」
「金髪の時の裕飛先輩やんちゃだったんですか?」
「そうだよ庄左ヱ門」
「果たしてやんちゃってかわいい言葉で片づけられるかもちょっと疑問だよね、あの時の裕飛」
「三郎も勘ちゃんも昔話なんかしないで…」
((結構恥ずかしいんだからな!))
「とにかく、用具委員会は予算アップと団蔵を所望する」
「団蔵は置いといて、今のままじゃいつか学園が穴だらけだったり工事が追いつかなくてがたがたになって怪我人が出るかもしれません。だから予算増やしてください!」
「作兵衛良いこと言うな。だそうです潮江先輩、あと団蔵くれ!」
「団蔵はやらん!…だが、富松の言うことは一理あるな」
団蔵はくれないみたいだけど、予算についてはちょっと考えてくれるらしく潮江先輩は頭を悩ませている。そんな先輩に後ろから大量の図書カードとマッチ箱が投げられ、なんでこっちには予算くれないんだーと図書委員会が叫んで投げたカードがすこん、と机に刺さった。危ない。保健委員会の投げるマッチ箱も検便用のマッチ箱だし、汚い
((俺らのターンなのに))
「僕達の予算もあげてください」
「大体、裕飛!次は俺達火薬委員会の番だったのに割り込みはいけないぞ」
「え、それはごめんね兵助。でも火薬委員会とか予算いらないんじゃない?」
「確かにな」
「お、意見が合いましたね。潮江先輩」
「いるにきまってるだろう!」
「…なんで立花先輩が怒るんですか」
「火薬がないと、手榴弾が扱えないだろう!」
「このご時世に手榴弾なんかいりませんよ!」
あの人なんであんなに手榴弾好きなんだ!爆弾魔か!卒業後はテロ組織とか入って爆弾魔にでもなりたいのか!
「とにかく、火薬は必要だ」
「いやいやいやいや、絶対にいらないって兵助。てか、予算ほしいなら潮江先輩より立花先輩から直接もらったほうがいいよ。火薬使った分だけ」
「…確かに」
「使うの立花くんだけだしねー」
「ほぅ、そうきたか。ならば文次郎、火薬を使う分、作法委員会の予算をあげてくれ」
「ばかもん!そんなの自分の金で払え!」
「貴様の金は私の金だ」
「ジイアンだ、ジャインがいる…」
そんな高等部3年い組のやりとりを見ていると後ろから暴走列車…基、体育委員会が会計室に突っ込んできた
「あぶなっ、団蔵大丈夫か?」
「うん、ありがとう兄ちゃん!」
「文次郎!体育委員会の予算が0とはどう言うことだ!」
「小平太!お前は裕飛よりも物を壊しすぎだ!裕飛は用具委員会だから直したりすることもあるから大目に見ているがお前は反省せずになんでもかんでもすぐに壊しおって!」
「俺、意外と良い評価されてる」
「お前は一応反省はしてるし、無闇には壊したりしないからな」
ふん、と顔を逸らして小さな声だったけど潮江先輩の言葉が聞こえた。ちょっと嬉しい、嬉しいけど隣の留先輩が肩をわなわなと震わせている
「文次郎!貴様!裕飛に色目なんか使ってんじゃねぇ!」
「バカタレ!そんな意味で言ったんじゃないわ!」
「いーや、絶対裕飛に媚び売っていたな。コノヤロウ、うちの娘はやらんからな!」
留先輩、嬉しいですけど俺は正真正銘男の子です
「とーにーかーくー!体育委員会の予算が無いことに物申す!」
どん、と暴君は破壊された机に座る潮江先輩のところに行き机を叩いて、予算案を先輩に叩きつけた。緊張の一瞬、潮江先輩が筆を取ったと思った次の瞬間、体育委員会が持ってきた新たな予算案に大きなバツ印をつけた
「なんでだ!」
「何ででもだ」
「てか用具委員会についてですがあがってる被害、いや仕事の大半は七松先輩と作法委員会のせいなんだから足りない分は壊したり、穴掘ったり、トラップ仕掛ける人から取ったらどうですか」
「三木くんいいこと言うねー。留先輩そうします?」
「確かにな…」
「用具委員会に予算をあげたいのは山々だが、後ろの大砲はなんだ!そんなもの作る余裕があるなら予算余るだろう!」
「戦わなきゃいけないんで!」
「大体裕飛!予算にバイクの部品を入れるな!」
「…入れたのか?」
「もっと強化しようと思って」
「だー!今は私達の話だ!」
どんっと後ろからボーリング球が投げ込まれて危うく当たるところだった
「ぎゃあ!あっぶない!」
「作法委員会もいくぞ、手榴弾だ!」
「火薬委員会は作法委員会の補佐をするぞ!」
「生物委員会は虫をばらまくぞ」
「……………」
「図書委員会も一斉攻撃、だそうです!」
「僕達もトイレットペーパーも投げとく?」
「えーい、こうなったら用具委員会も砲撃準備!」
「はーい」
「裕飛はバイクで応戦だ!」
「よっしゃあ!」
危なくないように団蔵をバイクに乗せて会計室を走り回った。結局予算会議は大乱闘の末、学園の様々なところを破壊したため学園長先生からお叱りを受け、全委員会予算は手に入らなかったのだった
((どうせ三郎達はあるんだろうな、くそー…))
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