「あーめんどくさっ」
今日は1人で隣の女子校と男子校を隔てる塀の修復作業。すごい高く出来ている塀の上は瓦で出来ている。今回はその瓦の修理が依頼内容である。瓦は重いし、修復場所は高いしで下級生にやらせるわけにも行かず、俺か留先輩ってことになったけど留先輩は別のお仕事を下級生とすることになったから俺が独り寂しく塀の修理をすることになった
((修理っつうほど壊れてないってのー…))
そう思いながら塀を登って瓦を運んで修理をする。瓦は重いくせに脆いから俺の力じゃすぐに粉々になるから、なかなか難しい作業だし根気がいるから、集中力が切れるとうっかりばき、なんてやってしまう。もう既に何枚か割った
「…あーもーめんどくせ、あぁ!」
そう思って塀に寝っ転がった瞬間、携帯が落ちていった。しかも女子校の方に。ちゃぽんと言う音のあとすぐにばしゃんって音が響く。俺も慌てて下に降りたからだ。手探りで携帯を捜し、無事であることを確かめる
((よかったー防水携帯にしといて))
家柄、雨の日でも雪の日でもバイク走らせて荷物を届けるから防水携帯にしたのだ。思わぬところで大活躍だ。なんて思い、濡れた制服をどうしようかと考えていると突然聞こえた甲高い悲鳴。何かと思えば目の前には水着姿の女子ばっかりで、どうやら俺は女子校専用温水プールに落ちたのだとそこで気がついた
((だって温かいし…))
「きゃーちかーん!」
「隣の男子校の奴だわ!」
「捕まえて山本シナ先生に突き出しましょう!」
そんなことを考えてるうちにわらわらと水着姿の女子が集まってくる。一見するとハーレムの様に見れるが今俺は痴漢容疑として山本シナ先生に突き出されようとしてる
「あーごめん。邪魔して、出口どこか教えてくれる?」
「逃げようったってそうは行かないんだから!」
「あーじゃあ逃げないから出口教えてよ」
「逃げるんじゃない!」
「あれ、裕飛先輩?」
すっかり痴漢だと思われて帰るに帰れなくなった時、どこからともなく聞こえた俺を呼ぶ声。誰かと思って見上げるとユキちゃんでトレードマークの金髪ポニーテールにビキニ姿がとっても眩しい
「やほーユキちゃん」
「え、痴漢って裕飛先輩なの!?」
「痴漢したつもりはないけどね。実は塀の修理中携帯落として俺も塀から落ちて今こうなったわけ」
「なるほど、裕飛先輩が痴漢するはず無いですもんね」
え、俺ユキちゃんの中ではそんな高貴なキャラなんですか。知らなかったよ。うん。ユキちゃんの働きかけのおかげで俺だと分かると女の子達は手を離してくれて代わりに黄色い悲鳴を上げ始めた
「うそ、高等部2年ろ組の加藤先輩!?」
「きゃーかっこいい!」
「雑誌見ました!」
「あたし触っちゃったぁ!」
「裕飛先輩になら痴漢されてもいいー!」
「あはは…」
((俺ってそんな人気あるんだ。知らなかったなぁ…))
悪い気はしないけど女子の圧倒的な勢いにちょっと押され気味になった。今度は痴漢容疑ではなく人気者としてわらわらと人が集まってきて押しつぶされそうになった
「大丈夫ですか?」
「ありがとうユキちゃん。水着かわいいよ、似合ってる」
「…ありがとうございます」
素直に褒めると照れたのか顔をうつむかせてユキちゃんは小さな声で返事をした。そんなユキちゃんの後ろにいるトモミちゃんもおシゲちゃんも水着姿がかわいくて、目が合うとそらされた。おシゲちゃんに至ってはしんべヱの彼女なのにそんな反応しちゃって良いのかちょっと疑問に思ったけどかわいいから黙っておいた
((ごめんしんべヱ…!))
「ところでさぁ、制服濡れて寒いんだ。なんかない?」
「それなら山本シナ先生に頼んで…」
そうユキちゃんが言い掛けた瞬間、何をしているんですか!と澄んだ声が響いた。山本シナ先生だ。今日は若い姿。シナ先生は何故か若い姿とお年寄りの姿と二種類(って言う方していいのか分からんけど)いる。どうなってるのかは忍術学園の七不思議の1つだから永遠の謎だ。そんなことを考えてるうちに俺の存在に気がついた先生は俺に近づいて来た
「何故こちらにいるんですか?」
「塀の修理中落っこちました」
「あなたが修理を引き受けて下さったのですね。ありがとう。みんなはなんですか裕飛くんに引っ付いているのですか?」
「だって加藤先輩が来たから」
「かっこよくて…」
「私も触りたいもの…」
「女子たるもの無闇に男性に触れることはいけません。破廉恥ですよ。美しくしなやかにといつも言っているでしょう!さぁ、皆さんは水浴びをしなさい。裕飛くんは私が預かります」
そう言って山本シナ先生は俺の腕を掴んで女子の集団から俺を引き連れていった。その後制服を乾かす間にこの前の雑誌のこととか根掘り葉掘り聞かれて先生も女の子なんだなって思ったのは秘密にしておきたい
((破廉恥ってどこからなんだ…?))
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