無断撮影は厳禁です



「ねぇ、裕飛くん!お願いがあるんだけど!」


いつもの面子で食堂に集まって昼飯についていたデザートのバナナを頬張ってる途中、金色に輝くバナナ…基、高等部1年は組の斉藤タカ丸さんの姿があった

((あれ、なんかデジャヴ…))


「裕飛くーん、聞いてる」

「ぅあ、はい。聞いてます。お願いってなんですか?」

「裕飛最近、何かにつけて頼みごとされてるね」

「勘右衛門、お前が言うなよ」


兵助のナイスなつっこみが炸裂してる中、タカ丸さんの話を聞くと出てきたのはファッション雑誌


「あ、【men's nin-nin】だ」

「俺愛読書だけど雷蔵も読んでるの?」

「図書室にあるよー定期購入してるんだ」

「まじか!じゃあ今まで月580円払ってたのは何だったんだ!」

「もったいなかったな、裕飛」

「まぁ、いいや…で、タカ丸さん【men's nin-nin】がどうかしたの?」

「うん、この雑誌のヘアーアーティスト僕のお父さんが担当なんだ」

「カリスマですからねぇ…」

「それで今度この雑誌で僕の特集を載せることになったんだ。だからいつもうちに来てくれる裕飛くんにモデルをお願いしたくて!」

「モデル!?…俺が?」

「うん、触り慣れてる裕飛くんの髪がいいんだ。だめかなぁ?」


両手を合わせて拝みながら首を傾げて言うタカ丸さんは本当に年上ですか?ってくらいかわいくてなんか断りにくい。てゆーか断る理由もないけど


「俺なんかで良かったらいいっすよー」

「本当に!?ありがとー裕飛くん」

「うわっ」


抱きついてきたタカ丸さんに押し倒されて、食堂にいた人達の視線を一気に浴びた

((前にもあったな、こんなこと))

なんて思いながらタカ丸さんを退かして体を起こすと、雷蔵が“いいな、裕飛ばっかり”なんて言ってる。興味あるんですか、雷蔵さん


「雷蔵でたいの?」

「ちょっとね」

「ふーん、意外」

「なんで?僕だってオシャレとか気にするよ?」

「いつも服三郎に選んでもらってるじゃん」

「三郎の方がセンスあるからね」

「雷蔵に任せるとジャージしか着ないんだ」


毎日コーディネートは大変だよ、と三郎は言うけど何だかんだで楽しんでるんだよなこいつは


「タカ丸さん、僕見に行きたいんだけど来ても良いですか?」

「僕も!」


そう言うのはい組コンビで2人も割とオシャレとか敏感だと思うし、流行に流されないで我が道を行く感じがなんかすごいと思ってる


「はちは来る?」


タカ丸さんが来た時から俺の隣で小さくうずくまっているはちに話しかけると声になってない声が聞こえてきた


「お前本当にタカ丸さんだけは苦手だよな」

「だ、だって…怖いよ」

「石鹸で髪洗うからいけないんだよ。リンス使えよ」

「なんかねっとりするから嫌なんだよ!」

「タカ丸さんに毟られるのとどっちがいいか、考えな」

「…リンス使います」


明後日の方向を向いて呟くはちはよっぽどタカ丸さんが怖いらしい

((今度髪俺が綺麗に洗ってやろう))

そんなことを思っていると話はいつの間にか進んでおり、雑誌撮影を来週することになった

月日が流れて休日。今日は待ちに待った(俺は待ってない)タカ丸さんの雑誌デビュー日だ。何時もの面子も集まってスタジオにやってくる。流石に町1番のスタジオは大きいし、綺麗だし、圧巻だ


「あー裕飛くん達いらっしゃい」

「タカ丸さん」

「今日はよろしくね」


ふんわり笑うタカ丸さんは綺麗な金髪アシメをヘアピンで留めてあって流石オシャレさんって感じだ。つーか俺田舎育ちなのにこんな雑誌でていいのか?いもっぽさがばれないか!?


「裕飛のいもっぽさはきっとタカ丸さんがカバーしてくれるよ」

「雷蔵、心読まないで。てかいもっぽいって言わないで、傷つく」

「だって僕出れないんだもん」

「だからって八つ当たりやめてください。三郎にしてください」

「裕飛ひどいな」

「…そうだね。相手間違えた」

「雷蔵さん!?」


雷蔵が新たな獲物に食らいついてる中、はちと勘ちゃんと兵助が近づいてきた


「裕飛かわいいから大丈夫だよ」

「裕飛結構オシャレだしな」

「よ!オシャレ番長!」

「はちはともかく、い組っ子達フォローありがとう」

「裕飛ひどいー」

「ささ、裕飛くんセットするからこっちに来て」


タカ丸さんに促され、椅子に座ると目の前にはたくさんのメイク道具だったりヘアアイテムがあった。鏡を目の前に置いて、タカ丸さんが深呼吸したと思った次の瞬間、俺の髪は金髪ウルフヘッドに変わっていた


「わー!裕飛かっこいい!」

「金髪とか去年を思い出すな」

「あのときは金髪で黒メッシュだったけどな」

「加えて金属バット持ってて」

「ピアスなんか今以上に多くて」

「ギラついてたよなー」

「昔の話なんかすんな!撮影に集中出来ないだろ!」


その後も色んな髪型に変えられる度に昔話をされて、恥ずかしいやら何やらでよく覚えていないけど、そんな懐かしい時もあったけ、なんて思った俺は老けたと思う

((まだ16だけどな!))




prev next


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -