「ねぇねぇ、恋バナしようよ!」
某日、いつものようにいつもの面子が雷蔵と三郎の部屋に集まっていたら勘ちゃんがそう言った。周りに花が咲いていた気がするのは是非ともスルーしたい
「おいおい勘右衛門、ここは男子校だ。恋バナも何もないだろう」
「兵助の言うとおりだよ。そんな気持ち悪い考えは三郎だけで十分だよ」
「雷蔵、私だって男色家ではないから嫌だよ。それに美食家だから裕飛くらいしか口説かな…」
「お前本当に黙ってろ」
枕を思いっきり投げたら布が破けて真っ白な羽が舞った。雪みたい、綺麗なんて思ってたら雷蔵にジュース飲めなくなるじゃんって怒られてしまった。うん、ごめんね
「あーもー裕飛!」
「ごめんてーでも元はと言えば三郎が気持ち悪い事言うからつい、ね」
「じゃあしょうがないな」
「うん」
「はち、裕飛に甘すぎるぞ」
「だって俺らラブラブだもんねー」
「う、うん」
頬をつんつんすればはちは照れたのか下を向いた。それを見て勘ちゃんは“やっぱり恋バナしようよ”なんて言い出した。しまった、せっかく流れが違う雰囲気だったのに元に戻った
「もー!三郎のばか!」
「私が悪いのかい!?」
「雷蔵、三郎はいいとしてなんで勘右衛門が恋バナしたいのか、だ」
「もしかして好きな人でも出来たのか?」
「え、うっそ!?」
兵助、はち、雷蔵と勘ちゃんに迫っていく。そんな様子を俺は傍観し、隣には三郎がやってきて2人で暴走し出した3人を見守った
「誰だ?」
「隣の女子校の子?」
「勘右衛門やるねー隣の学校の子を落とすなんて」
「え、いや…」
「雷蔵、ノリが女子だ」
「うん、暴走し始めたよ」
三郎にオレンジジュースを注いでもらいながら様子を伺うと、勘ちゃんの助けを呼ぶような目線がこっちに送られてきた。ちょっと、自分で蒔いた種なんだからなんとかしなさいよ、なんて同じ様に気がついた三郎が言う。うん、その通りだと思うよ
((恋バナなんて女子会か))
そう思いつつも、雷蔵を落ち着かせて、何で恋バナしたいのか勘ちゃんに聞くとこの前一緒に買い物に行った話になった
「あの買い物裕飛と行ったのかい?」
「うん、デート」
「いや、デートとか語弊があるから。てかあの買い物が何?」
「裕飛すごいんだよ。幼女からキャバ嬢までいろんな人にすっごく逆ナンされてたんだ」
「裕飛もてるもんなー」
「まて、キャバ嬢はお得意様なだけだし、幼女はいなかっただろうが」
「えーすっごい小さい子が“裕飛お兄ちゃーん”って抱きついてたじゃん」
「あれもお得意様のお嬢様。大体もてるんじゃないから、運送業で顔が広いだけだからね」
「いや、裕飛もてるよ。今日だってラブレター届いてたし、大体裕飛時々夜いないじゃんか」
「へー裕飛やることやってるんだぁ」
「ちょっとはち黙んなさい。雷蔵も違うから、電波悪くて外に電話かけに行ってるだけだから」
「どうだろうね、裕飛だから」
「おら、三郎…てめぇ」
三郎がにやにやしながらこっちを見ていて、雷蔵と勘ちゃんはきゃあきゃあと話している。だから女子か!ってつっこみたい。てか、助けてやったのにこの仕打ちは何なんだと頭を抱えると勘ちゃんが何か気づいたようにあ、と声を上げた
「今度は何…」
「まぁまぁ裕飛」
「明日11時に裏庭に来て欲しいって隣の女子校の子から言われたんだ。はい、裕飛」
「え、俺に?」
「ひゅーひゅー」
「死ね、三郎」
「これで恋バナ終わりだよ」
「まさか勘右衛門それが言いたかっただけなんじゃ…」
兵助が恐る恐る聞くと、勘ちゃんは首を傾げた後“そうだよ”と、きょとんとした顔をする。俺達の時間が止まった瞬間だ
((…ふざけんな!))
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