不景気だなんて誰が言った



「裕飛!買い物に行こうよ!」


ある日のお昼、うどんを食べている目の前に茶色いうどん…基高等部2年い組の尾浜勘右衛門が現れて、ちょっと喉にうどんがつまりそうになった


「…んっと、買い物?」

「うん!いつも頑張ってる委員会の後輩達に何か買いたいんだ」

「うーん、じゃあ俺じゃなくて三郎と行った方が良くない?」


三郎と勘ちゃんはろ組とい組の学級委員長。つまり委員会も学級委員長委員会、またの名を実況中継委員会(命名俺)である。その後輩はい組の彦四郎くんと弟が大変お世話になってるは組の庄左ヱ門くんの2人である


「俺がいくらは組に弟がいるからっていってもみんなで遊ぶのはたまにだし…三郎の方がよくわかってると思うけど?」

「三郎と相談して、分かれて買いに行くことにしたんだ。それに三郎に行かせたら変なの買ってきそうだし…」


あぁなるほど。協同作業なんだ、と思いつつ、なるとを口に運ぶ。そう言えば前もクリスマスプレゼントだったかなんかを兵助にあげるって言って三郎はなんかパーティーグッズ買ってきてすんごいすべってた記憶がある

((あれはいただけないよなー))

三郎、服のセンスとか結構良いのに笑いとろうとしてふざけるとすべるんだよなー…だから反省して今回は勘ちゃんが買いに行くことに素直に賛成したんだろう


「兵助に頼んだら“豆腐”しか言わないし、はっちゃんは“幼虫”買いそうで…」

「別に幼虫でも育てて優しさの教育でもすればいいじゃん」

「僕と三郎は2人の親じゃないからそんな教育関係はいいよー。それにはっちゃんの場合は食用だし…」

「あぁ…そうだね」


はちは生物委員会らしく弱肉強食に乗っ取って生きてるよね。あの子生物の成績だけは異常にいいしね…どうなってるんだか


「雷蔵は迷っちゃうから、もう裕飛しかいなくてー!」

「…消去法で俺かい」

「お願い、裕飛ー!」

「分かった。いいよ、今日は委員会ないし、買い物行こっか」


そう言ってにっこり笑うと満面の笑みの勘ちゃんが“ありがとうー裕飛ー!”なんて抱きついてくるから麺汁こぼしそうになった

((てか、ここ食堂だからね?))

小松田さんに外出届を出して、勘ちゃんと並んで街に出かける。思えば勘ちゃんと2人っきりででかけるのは初めてかもしれない


「裕飛とでかけるのは初めてだね」


あ、勘ちゃんも同じこと思ってる。勘ちゃんといると、空気がふわふわしてきて気持ちいんだよね。勘ちゃんは人柄がいいから…もちろん他のみんなもそれぞれ良さがあるけど。三郎もある意味、ね


「あ、裕飛水飴売ってるよ!」

「本当だ。懐かしいね、縁日とかでよく買ったけ…」

「久しぶりに買おっか」


店のおじさんにお金を払って水飴をもらう。割り箸についている水飴はどろっとしていて、割り箸を離すとゆっくりと繋がっている部分が落ちてくる。それをくるくる回して段々と、透明だった水飴は白っぽく変色した


「これいつまでやったらいいか分かんないから、永久にしちゃわない?」

「わかるよーでも飽きて途中で食べちゃってさ。懐かしいよね」


“懐かしいね、とか僕ら年とったね”なんて勘ちゃんは呟きながらまだ水飴を練っている。白っぽくなった水飴を口に含むと甘い味が口いっぱいに広がった。水飴を舐めながら街見渡せば、たくさんの人が行き交ってる。みんな笑顔で商いして、買い物して…平和だなぁなんて思ってしまった


「勘ちゃん、買い物いこうよ」

「あ、うん。そうだね、何が良いかなぁ?」


勘ちゃんの手元にはさっきまで真っ青な空をイメージしたような色の水飴があったのに、今は真っ白で大きな雲のように白くなっていて、どれだけ練ったんだとちょっと笑ってしまった


「裕飛、なんで笑ってるの?」

「秘密。それより、プレゼント習字道具とかどう?委員会で書道とかするんでしょ?」

「それ作法委員会じゃない?まぁ、庄左ヱ門の家から墨もらうからするけどね」

「一応見に行こうよ。時間はいっぱいあるしさ!」


勘ちゃんの腕を引いて2人で街をかけていく。こんなスローライフな1日も良いものだなーなんて思う俺は本当に年寄りみたいだ

((お金どれだけ使おっかな))






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