現天才とアシスタントと元天才
2014/04/28 14:47
トイレに焦りすぎて僕としたことが、ゼストスさんとれたすさんを二人きりにさせてしまった。
失態だとは思ったが、万一コロッと落ちてても僕のものと釘をさせば、一途とよく聞く狐であるゼストスさんはれたすさんのために身を引くだろうと考えていたが――。
「本当に惚れてないみたいでびっくりです」
男ってわかるんでしょうか、とれたすさんに耳打ち。
彼女、いや、彼が男であることを知るのは、僕と本人だけなのだ。
二人だけの秘密。フキンシンながらワクワクしてきた。(フキンシン、は最近覚えた。僕天才!)
「まあ、余計ないざこざにならなくて何よりというか……」
話を繋ぎながら、でもオンナっつったぞ、こいつ、と、れたすさんも僕に耳打ち。
秘密は守られ、ゼストスさんがれたすさんを女と思い込んだまま、僕だけが彼を愛し続けられるなら願ったり叶ったりだ。
一番最高の形じゃないですか、そう耳打ちを返そうとしたら、ゼストスさんが呆れたような笑みを浮かべる。
「何をこそこそしてるのかな、お二人さんは」
ヤバい。バレるかも。
「ゆ、夕飯の話!ぼっちのゼストスさんもどう?」
慌てて切り返す。
僕が食いしん坊なのは、同じ楽屋になることも多いゼストスさんにはわりと知られていることで、疑う様子はあまりなかった。
れたすさんはれたすさんで、まずいだろ、そんなごまかし方じゃ、みたいな顔と思考(テレパシーで読めるんだな、僕は)をしていたけど、それだけ二人の仲を思っててくれてるんだってにやにやしてしまう。ごめんね、れたすさん超可愛い。
*
ついったネタに加筆その二。
サティリク視点。
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