元天才と現天才とアシスタント
2014/04/28 14:30
狐の男は惚れっぽい。
それは狐であるオレも自覚しているところであり、極力異性の傍には長時間居ないようにしている。
しかし、だ。
「遅いな、サティリク」
ご自慢の美人アシスタントとオレを二人きりに待たせて、トイレに走り出した暫定天才少年。
切羽詰まるのはわかるが、オレとオンナを二人きりにするのはやめてくれ。
さすがに頭を抱えたが、しかし、隣にいる“彼女”を、オレは恋愛対象として意識できていないことにようやく気付いた。
普通なら多分、すっかり落ちていたはずだ。
成る程、オレは人のオンナには手出ししないようにできてるんだな。
安堵を覚えほどなくして、気の抜けた声が近づいてきた。
「いやあ、迷っちゃいましたよ。……あ、うっかり二人きりにさせちゃいましたけど惚れてないでしょーね。可愛いれたすさんは僕の恋人ですよ」
そう思うなら目を離すなマセガキ、と思ったが、すんでで飲み込み口には出さない。
しかしまあこんな子供に対してちゃんと相手してやるとは、アシスタントのれたすちゃんはかなり偉い女の子ではないか。
「惚れてねーよ、安心しなおチビちゃん。人様のオンナに手出すほど悪い大人じゃあない」
「オンナ……」
れたすちゃんが何か言いたげに繰り返す。
「良かったですね?」
含みのありそうな言い方でサティリクが彼女を撫でる。
れたすちゃんは随分複雑そうだ。
いくら恋仲とはいえ、オンナ、などという言い方をするには相手が幼すぎる、ということなのだろうか?何にせよ、少し軽率なことをいってしまったかもしれない。
*
ついったネタに加筆。ゼストス視点からサティれたさんと。
ゼストスは恋仲を知りつつもれたすさんの女装を見破れていない。
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