愛しき羨望は燃ゆる色に

2013/04/14 18:40

「オレに惚れると火傷するって台詞あんじゃん」


ぽつりと船の上、海風にあたりながら呟くラビオス。
ルマーカはそんなラビオスをきょとんとした様子で見た。


「唐突になんだァ?」


恋でもしやがったか。
ったく、色気付きやがって。
まさかこんなへろーっとしたやつに、ねえ。
ルマーカは内心、興味をそそられていた。
こいつにそんなことを思わせるとは、一体。
薄く淡い期待の中、ラビオスは口を開く。


「いいから聞いてよ海賊サン、んでさ、あれあんじゃん」

「おう」

「あれ、状態異常的な意味ならオレちゃんも使えるんだよね…!」


別に恋の話ではなかった。
まあ当然と言えば当然かもしれない。
個性派揃いのアル・ジャンナの中でも、特に何を考えてるか分からないし、いつも、物理的にも雰囲気からしても“浮いている”男だ。
想像の斜め先を行くことなど茶飯事。
だが問題はそこではない。


「お、おう…?え?惚れた相手にれんごく?え?」


ルマーカは柄にもなく戸惑っていた。
とにかく抜け目なく、細かいことさえ見逃さない彼だからこそ、気になる点はいくつもあった。ラビオスの発言の真意が読めずに疑問符を浮かべるしかない。


「パイロキネシスが使えたらさー、便利だよねー。照れたりなんかしたら顔から火が出る、なんて文字通りになりそうだけど」


パイロキネシス。
発火現象を起こす超常能力。
ははぁ、なるほど。
こいつはそういうのに憧れているのか。


「れんごくってパイロキネシスなのか」


尋ねると、紅に彩られた唇がにっと弧を描く。


「わっかんなぁい。けどぉ、多分オレのは似たようなもんだといいなーぁ」

「ゴーストタイプだろ?鬼火出す仕組みと同じだろ?超能力ってよりは、霊的なもんじゃねーの。おれもよくわかんねーけど」


真剣に考えて、そう言うルマーカの言葉は果たして聞こえていたのか。
ラビオスは上機嫌で、海を覗いて鼻唄を歌っている。


「あーあー、パイロキネシストになりたいなー」


オレちゃん、将来パイロキネシストになるね。
そう語る彼の眼差しも声音も、まるでパイロットに憧れる子供のように明るかった。



カルブンクルスは炎を灯す
(その石のような真っ赤な炎を、いつか)

*
れんごく使いのラビオスは自在に炎を操りたい。
ルマーカはサメハダー♂です。名前の意味からラビオスに海賊サンと呼ばれてます。

多分エスプリとラビオスが会ったら、ラビオスはエスプリに対して憧れを抱くと思います


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