クリュオテさんの懐古

2010/12/26 13:17

揺れる揺れる、長くてしなやかなしっぽ。紫と黄色の二色のかれは、ちょっぴり忙しなく耳を動かしている。気になるものにアンテナをはっているのかな。
それで子供みたいな事ですぐに迷子になるからって、マスターにかれの見張りを頼まれていたんだっけ。
子供みたいなってことはクリュオテくんはもう大人なんだろうなぁ。
そういえばかれには昔むかしは奥さんがいたって聞いたけど、そんなに色んな事経験できるほどだし、きっとボクより七年かそれ以上は間違いなく生きてるのかもしれない。


「気づいたけど、クリュオテくんって見た目より大人なんだねぇ」

「若くみえるかい?はは、それは嬉しいな」


言いながらクリュオテくんは疲れたような微笑みを見せた。
クリュオテくんは笑うとき、ちょっぴりだけその年齢が見える気がする。
まあ、正確な年なんて訊いたことはないんだけど。


「クリュオテくんがここにくるまでのお話が聞きたいなあ」


クリュオテくんやミュフルリくんほどではないけれど、ボクにも好奇心位はある。得体の知れないかれの事を知りたい気持ちが、ゆらりと心の灯を揺らした。


「色んな事があったよ」


そういって、懐かしむように目を閉じた。
子守唄でも歌うかのような優しい声色で、そっと話を始めた。


*


あの場所では色んな事があったよ、しかし草むらの中はわたしがチョロネコだった頃から周りの風景がちっとも変わらない。まあ当然だね、草むらなのだから、周りは一帯草だらけ。伸びっぱなしって訳じゃあないが、あそこは年中雑草地帯だ。
だからある時、少しだけ目新しいものを探してわたしは旅に出た。いや、出ようとしていた。早速草むらを出て、少しばかりの距離を歩いてみたよ。そうしたらどうだ、広がったのは全くの別世界さ。何もかもが面白い、何もかもが素晴らしく見えてね。

ああ、勿論迷ったさ。わたしの迷子は何もその時始まった訳ではないが、すぐ手前とはいえ見慣れぬ土地はとにかく不安だったね。足がすくんでしまいそうだった。仲間の呼ぶ声がしなかったら、どうなっていたことやら。

時間にしたら数分間の冒険かな。帰って暫くは寝床を動かなかったよ。でも、その頃のわたしはまた懲りずに挑戦しようとしてね。
繰り返すうち、どういうわけか迷い方がどんどんレベルアップしてしまって、いやあ本当に面白いものが見られたよ。

それとほら、いただろう?わたしと同郷の…あいつとはよくすれ違ったものさ。いやいや、意見ではなく、まあ物理的にだよ。会釈をすることもあったが、彼はそのたびおかしな仕草で返して来て、思わずくすっとしてしまったな。
再会した時は驚いたよ。

あとは…


*


楽しそうに話していたクリュオテくんはそこで言葉を止めた。そして一息つくと、もう一度微笑んだ。


「ここに来てからの方が、あるいは色んな事があったかもしれないがね」

「えぇ、そうなの?」


ボクが驚いて聞き返すと、かれは「ああそうさ」と頷いた。


「一度経験した結婚だって、今の主人に捕まってからの事だ」


ボクが一番気になっていた話題だった。そんなに最近だったのに、どうしてなんだろう。
思っていたことは、いつの間にかその通りに唇を動かしていた。


「何で別れちゃったの?」


一瞬、クリュオテくんはきょとんとして、あきれたような困ったような顔になった。


「…きみはなかなかストレートに訊いてくるね」


けたけた、いつもの笑い声をあげながら僕は答える。


「ごめんねぇ」

「いや、いいさ。はて、あれはどうしてだったろうか…」


ひとつ大きく息を吸って、クリュオテくんはまた話を始めた。



昔話のような今のお話
(やっぱりかれは面白い)


*
クリュオテとエスプリ。掘り下げてみました。
この二人は接点がないようでも話すと仲良し。

クリュオテさんは常識人なのか常時奇人なのかが曖昧な美人、でもすぐ迷子になるから奇人というか困った大人なのかも。なら常識人でもないな

クリュオテさんはオトルマン達ほどは若くないがそんなにおじいちゃんでもないとみた!
モダンと一緒くらいか、モダンより若干若いかくらい。

え?モルテルとオトマト?ですか?
古代から換算してしまうとちょっとカオスです、見た目を信じてあげてください


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