リゾットが最初に彼女を見た時、彼は息が止まる思いだった。


(あまりにそっくりすぎる…)


夜道にぼんやり座り込み、微かに鼻唄を唄う女はあまりにもリゾットの知った顔に似ていた。
もう何年も前に、交通事故で殺された彼のいとこに…。

(いや…まるで生きていたみたいだ…)


事故などなく生きていて、自分の知らない所で成長をしていたようだった。
少し悲しげな顔をしたその女は、虚ろに…しかししっかりとリゾットを向いて座っていた。

弱々しい光を宿した虚ろな目は、たった今メタリカで殺した男をじっと見ていた。
















「ボンジョルノ、リーダー…」
「あぁ、ボンジョルノ」


リゾットがカプチーノを片手に昨夜の仕事の報告書を纏めていると、少し眠そうにしたギアッチョが入ってきた。
大方、徹夜でゲームでもしていたのだろう。


「リーダー…?」

「何だ」




ギアッチョはカップを片手にソファーを凝視して固まり、ギシギシと首を動かしたかと思うと、目を剥いて素早くリゾットに掴みかかった。

「何なんだあの女!!」

「名前と言うらしい」


「へぇ……ってそうゆう事じゃなくて!!」

ギアッチョの貴重なノリツッコミを、メローネが見ていたら「録画すれば良かった」と言って騒いだだろう。珍しい反応に、リゾットは少し目を見開いた。



「何でここに居るんだ!?」
「共同スペースだから問題ないだろう?」

「違う!!だから、あぁもう!!」


一日の大半を何かしらにキレて過ごすギアッチョの怒鳴り声にリゾットは最早なんの感情も湧かないが、視界の端で名前がビクリと肩を震わせたのが見えていた。


「リーダー、それじゃギアッチョは納得しないんじゃない?」


カプチーノを片手に、もう片手にビデオを持ったメローネが笑いながら現れる。
抜け目のない奴だ。


「メローネ、ちょうど良い。ちょっとベイビーフェイスを出してみてくれ」

「ん?……もらって良いの?」

「出すだけだ」


メローネはよく理解出来ないと言うように眉を潜めたが、「まぁいいか」とスタンドを出現させる。

出現させただけでどうすれば良いのかと目でリゾットを伺うものの、リゾットはメローネには目もくれずに名前を観察していた。


「……」

何も言わない名前は、しかしメローネのベイビーフェイスを見ている。

スタンドの能力は多分ない。
リゾットが無理矢理暗殺チームが暮らす綺麗とは言えないアパートに連れて来た時も、抵抗する様子もなくメタリカを見つめるだけだった。


「やはりスタンドが見えているようだな」

リゾットの言葉に、メローネとギアッチョは驚きを隠せない。


「昨日、俺の仕事を見られた。自由にしてやるわけにはいかない」




事務的に告げるリゾットに、名前は何の感慨もわかないと無機質な視線を返すだけだった。


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