「ご紹介に預かりました、“幹部”のブチャラティです」


強調された“幹部”が気になるが、明らかに面倒くさそうなのにわざわざそんな所に触れるはずもない。
なるべく意識を遠くに飛ばして、メンバーは一列に並んだまま“だんまり”を決め込んでいた。



「今日からお前達にテーブルマナーや立ち振る舞いについて勉強してもらう」


メローネが何かを言おうとしたが、さりげなくホルマジオに制されて押し黙った。
疑問はたくさんある。
何故にテーブルマナー??
マナーも立ち振る舞いも暗殺チームには関係ないはずだ。
そこから既に嫌な予感がプンプンする。



「まず、テーブルマナーだが、これはフーゴが担当する」


おぉ、以前ディアボロのところに潜入捜査(??)に行った時に制服を持ってきて以来、久しぶりの登場だな。
最も、ミスタやナランチャはずっと出てきていないが…。



「立ち振る舞いに関しては、オレとアバッキオが担当になる」

「最終審査はパードレに頼んでありますので、心してかかって下さい」


「ボス…いや、ジョジョ。ぼくがこいつらに徹底的にテーブルマナーを叩き込んでやりますよ」


言い直すあたりがいやらしい。
しかしそれより何より、フーゴが「叩き込む」と言うと、リアルな意味で叩き込んでしまいそうな凄みがある。
正直に言おう。

怖い!!!



「あ、そうだ…フーゴ、死なない程度にしてくださいよ?」


いやいやいや、この人さらっと恐ろしいこと言うわ!!!!!
そして、自信満々な顔で「はい」と返事をするフーゴは、例えば名前達を瀕死にしてでもそれをやってのけるようなすごry
サッと血の気が引くのを全員が感じていた。



「ちょ…ちょっと質問」

名前の挙手に、部屋を立ち去ろうとしていたジョルノもふり返る。
アバッキオが何か文句を言いたげだったが、ブチャラティが「なんだ?」と聞き返してくれたので、名前はおずおずと一歩前に出た。



「何でテーブルマナー??暗殺には関係ないと思いますが…」


やはり最初から聞いておくべきだったんだろう。
最初から疑問ではあったが、暗殺チームである彼らには寧ろ、そんな“表向き”の仕事は苦手分野だ。
(にも関わらず、ジョルノが最近そんな指令ばかり寄越してくるので、リゾットとプロシュート、ホルマジオと名前とジェラートの仕事配分が増した)



「関係あるないではないんですよ、名前さん」

ジョルノがにっこりと微笑む。
名前にはその微笑みが、死亡フラグに見えて仕方ない。
そして、今日もその嫌な予感は外れない。



「やるか、殺られるか…その二者択一なんですよ」



デット・オア・アライブだとぉぉぉおおおおっ!?


ブルっと震えるの名前隣で、ペッシとイルーゾォがゴクリと喉をならした。




「ちなみに、ここに寝泊りする間の部屋は用意してあります。時間割は組んでありますので、全てブチャラティの指示に従ってください」

時間割…。
学校かよ。


「ボスは?」

「メローネ、ボク直々の指導は勘弁してください。ボクも忙しいのです」


どうぞどうぞ行って下さい。なんたってパッショーネのボスですものね。
どうかホッと胸を撫で下ろすメローネなんかには気付かずに、さっさとお仕事に戻ってください。



「皆さん、頑張るんですよ?」

「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」」


最近のジョルノは殊更厳しい。
そんな気がする。
(自分達が最近、いつも以上にジョルノに迷惑をかけていることは棚に上げておく。)



「では、先にテーブルマナーについてどれくらい知っているか把握しておきたい。ちょうど昼時だ。テストも兼ねて食事にしましょう」

テストでさえなければ“食事”なんて嬉しい響き以外の何ものでもないのに…。



「服は支給された服を着てきて下さい」

「場所は隣の部屋だからな」

アバッキオとブチャラティも、フーゴと一緒に部屋を出た。
残された名前達は、顔を見合わせてため息をついた。
まさかこんな大事になってしまうとは………。
枕がしばらくトラウマになりそうです。


「名前、お前だけは守ってやる」

ポンとリゾットに肩を叩かれても、ちっとも安心できません。


「それより、みんな支給されたスーツ見た?」

「まだだけど…、どうかしたの?メローネ」

眉をよせてしょんぼりしているメローネだけは少し好感を持てる。
いつもそうして元気ないくらいだったら良いのに。


「これさぁ、きっちりし過ぎて苦しい」

「「「「「「「「「良いセンスだ」」」」」」」」」


「えぇっ!?何でだよ!!これじゃあオレのセクシーさが「さっ、早く着替えましょう。私はトイレで着替えるから、みんな着替えたら教えてね」


メローネの抗議も虚しく、メンバーはさっさと着替えに入る。
ドキドキハラハラの勉強会のスタートです。


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