「オレ等は何すればいいんだ?」
ホウキを片手にギアッチョがそう言い放ち、まさか手伝ってくれると思っていなかった名前は雑巾を絞ったままフリーズした。
その隣で、全く『手伝う』という選択肢を持っていなかったメローネが、ギアッチョの発言に「あぁ、そっか」とまるで他人事のように溢す。
「え…これは私の仕事って言われたし…」
「見てるだけが暇だから言ってやったんだよ!!
いらなけりゃ良い!」
(まずい、怒らせた…)
名前はギアッチョが大声を出すのを見て、サッと顔色を変えた。
そんな名前を見て、ギアッチョはまた舌打ちをする。
「一々ビビってんじゃねーよ…水変えてくる」
名前の手元のバケツを取り上げ、ギアッチョは部屋を飛び出した。
「ブフッ!!名前にビビられて凹んでたのか〜ギアッチョの奴」
ゲラゲラと笑うメローネの隣で、名前はただただ目を丸くする事しか出来ない。
裏表があるようでない。
なのに素直でないギアッチョを理解できる日が来るのだろうかと、名前は頭が痛くなりそうな思考を途中放棄した。
「じゃあ、手伝うよ」
ニッコリ笑うメローネに、先ずは大きな家具を動かすのをお願いした。
メローネは戻ってきたギアッチョと一緒に、ソファーやタンスと、リゾットが運んできたベッドを動かした。
「荷物これだけ?」
動かした家具の下に溜まっていた埃を素早く掃き集める名前に、メローネはいくつか並んだ紙袋を指差して言う。
「元々荷物無かったからね。昨日プロシュートが服を買ってきてくれたって…」
「ベネ、あのタンスでいい?」
どうも雑巾がけは面倒になったらしい。
メローネは意気揚々と紙袋を掴んでタンスへ移動する。
「ぁ、うん」
名前の返事も待たずに紙袋を開くメローネは「ウワォ!」と、まるで凄い宝でもを発見したかのように感嘆の声を上げた。
「うるせーぞメローネ!!テメェ雑巾がけオレだけにやらせやが…っ!!!!」
メローネを振り返ったギアッチョは、言葉の途中で時が止まったように固まった。
塵取りにゴミを掃き込み終えた名前がメローネを振り返ると、メローネは明らかに新品の女性物下着を手にニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「私のパ…!っギャーーーー!!!!!!」
何が起きたか一瞬で理解した名前は、今まで出したことがないような大きな悲鳴を上げてメローネから下着と紙袋を引ったくった。
「何事だ!!!?」
自室を片付けていたリゾットが血相を変えて飛び込んで来た。
と同時に目前で繰り広げられる光景に、再び顔色を変えた。
「メローネのバカ!!変態!!」
「いや、今のビンタはディ・モールトベネだ!今までで最高だぜ!!」
「メローネ!!気持ち悪ぃんだよ!!!!」
下着を抱えて逃げる名前をメローネがだらしない顔で追いかけ、ギアッチョが赤い顔でもう限界だと雑巾を投げる。
何が起きたか一目瞭然の様子に、リゾットを追いかけてきたソルベとジェラートは二人仲良く肩を震わせて笑った。
「メローネいい加減に…」「メローネェ、いい加減にしないか!!」
ギアッチョの周りの気温がグンと下がった所で、リゾットの怒号が部屋を支配し、メローネは自分の血で汚れた床を一人で雑巾がけする事になったのだった。