混部パラレル | ナノ
カチャリと上品な音を立てて、目の前に温かな湯気を立ち上らせる紅茶が置かれて、仗助は「どうも」と頭を下げた。
隣に座るジョリーンは承太郎が怒らせたお陰で険しい表情のままムッスリと黙り込んでいるし、目の前ではジョセフがニコニコと二人を見ていて不愉快だし、仗助は唯一マトモに話が出来そうなジョナサンをチラリと伺う。
「ん?あ、もしかしてお腹も空いてる??」
「いや…空いてないッス」
ーどうも見当違いなんだよなー…。
頼りにするには天然キャラのジョナサンはどうも頼りない。
要らないと言ったのにケーキが出され、「僕が食べたかったんだよ」と笑うジョナサンに少し緊張を解されながらホッと息をついた。
ジョナサンが着席し、さぁ始めようとしたその時、ガチャリとドアを開けて承太郎が顔を出した。
物凄く怒っていたように見えたが、性格の根底は仗助が認識している承太郎と同じなのかもしれない。
黙ってジョセフの隣、ジョリーンの正面に座った。
「さて、揃ったね」
承太郎が座った様子を満足げに眺めて、ジョナサンが頷く。
どうやら今現在ここの家を取り仕切っているのがジョナサンなのだろう。「食べながら話をしよう」と言われて、仗助は紅茶を一口のんだ。じんわり身体が温まり、ようやく人心地ついた気がして、自分がちょっとした緊張状態にあったのだと知った。
「まず、改めて。僕がジョナサン・ジョースター。ジョセフの祖父だよ」
この時点で突っ込みたいが、きりがないので諦めて頷く。
「はいはい、オレがジョセフ・ジョースターだよん!承太郎のお爺ちゃんね!」
それは知ってる。
おちゃらけたジョセフが、二人が驚かないことに若干不満な顔で「ほら、次は承太郎だぜ?」と肘でつつく。
お願いだから、これ以上承太郎を苛つかせないようにして欲しい。
「ちっ、…空条承太郎だ」
嫌そうに(恐らく、ジョセフの態度に腹が立つのだろう)舌打ちをした承太郎が名乗り、ジョナサンが「さて…」と手を叩いた。
「どうやら君達は、ジョセフと承太郎を知っているみたいだね」
ジョナサンの言葉に、仗助とジョリーンは頷いて答える。
ジョセフは承太郎と自分達の関係を知っている為、ニヤニヤしながら承太郎を伺っている。反応を見るのが楽しみなのだろう。
「実は僕達も何の事情も知らずにここにたどり着いたんだ。君達と同じようにね」
そうだったのか。
ジョナサンやジョセフは少し早くたどり着き、その後承太郎がたどり着いたのだと説明を受けた。
自分が何者か…等の知識をすり寄せ、どうやら何かのおかしな影響を受けてジョースター家が集結してしまったのだと結論づけたところだということだ。
「それで、どうか君達の知っている事も教えて欲しい。ジョリーンちゃん、まず君は…」
「正確には徐倫。空条徐倫です」
ジョリーンの言葉に、承太郎がびくりと眉を上げた。
その隣でジョセフがニヤリと笑う。
本当に、どうしてコイツを承太郎の隣に座る事を許してしまったのだろう。
「父親は空条承太郎。まさかまだ子どもの父さんに会う事になるなんて思わなかったわ」
「む…娘だと!?」
「ギャハハハ!!!!良かったじゃねーか!感動の対面だぜーー!?」
そりゃあ驚きますよね。心中お察しします。だから黙ってろよジョセフっ!!!
今にも殴りかかりそうな仗助に気づいているのか気づいていないのか、ジョナサンがパンパンと手を打ち鳴らした。
「つもる話は後にしよう」
ジョナサンの言葉で承太郎は「やれやれだぜ」と帽子の鍔を下げた。
「それで…」ジョナサンは脱線しかけた話を戻すために、今度は仗助に向き直る。その瞬間、仗助は気づいた。
自分こそジョセフを黙らせることの出来る“切り札”を手にしていることに。
「俺は東方仗助ッス」
またもや承太郎を横目に伺ってニヤニヤするジョセフと目があい、堪えきれずに仗助はニヤリと笑った。
「ジョセフ・ジョースターの“隠し子”ッス」
そこに居た誰もが目を見開いた。一瞬の間。
そして…
「「「ええぇぇぇえええーーーっ!?」」」
承太郎以外の悲鳴が響き、家が揺れた。
「くそジジィ…やれやれだぜ」