混部パラレル | ナノ
「な…どう言うこと!?」
「なんだこの女(あま)」
実の娘に酷い言い草である。
聞き捨てならないその言葉に、ジョリーンが「あぁ!?」と青筋を浮かべた。
一歩も引く様子のない承太郎は、ポケットに手を突っ込んでジョリーンを睨む。
まさに親子の壮絶なバトルが繰り広げられるかと思ったその時、「ジョセフ、家の中を走っちゃ駄目じゃあないか」と間延びした声が聞こえた。
「承太郎、また二人増えたみたいなんだ。ちょっとお茶でも飲みながら話をしよう」
怒り狂った承太郎を知ってか知らずか、ジョナサンがニコニコと笑う。
しばらくそれを睨んでいた承太郎も、「チッ」と舌打ちをして帽子を深く被りなおした。
「お爺ちゃんったら、絶妙なタイミングぅー!!」
事の発端は自分だと言うにも関わらず、「承太郎、下で待ってるよ」と踵を返したジョナサンを追いかけるようにジョセフが部屋を飛び出した。
いや、置いて行かないで欲しい。
気まずい空気の中で仗助がジョリーンを伺うと、ふてくされた様に雑誌を拾う承太郎を睨んでいたジョリーンは、フンと踵を返すとジョセフに続いた。
「行こう、仗助」
ありがたい申し出に、仗助は一つ返事で部屋を飛び出した。
自分の記憶にあった承太郎の落ち着きからは想像も出来ない姿に、仗助の頭は完全に混乱状態だ。
「いやー、こぇー…。あれ、マジに承太郎さんかよ!?」
ジョリーンは仗助を一瞥して、「間違いないわ」と答えた。
その声は明らかに怒りを孕んでいる。
何かが逆鱗に触れたらしい。
「おっふたりさーん!!」
調子に乗った声が二人を呼び止め、「こっちこっち」とジョセフが手招く。
この男がもう少しマトモに引き合わせさえすれば、この空気ももっとマシなものだったに違いない。
これが俺の親父かよ…。
名前から察するに、きっと間違いない。
仗助はジッとジョセフを見つめ、「やーん、そんなに見つめられたら照れるじゃなーい」と気色悪い声で茶化すジョセフに、盛大なため息を返した。