混部パラレル | ナノ


「あれ?」

仗助は辺りを見渡して、自分が道に迷ったことに気づいた。
さっきまでカフェ・ドゥ・マゴに向かう通り馴れた道を歩いていたはずなのに、何故か気づくと田舎道を歩いているではないか。


「おっかしいなぁ…」

頭を掻いて辺りを見渡すが、何度見てもどこに居るのか分からない。
牧草地の一本道で、振り返っても同じ様に一本道があるだけだ。仗助はキョロキョロと辺りを見回し、前の方に歩いている人を見つけ、現在地を知るために走り出した。



「あのー、すみません」

「なに?」


髪を頭の上で二つのお団子にした女は、機嫌が悪いのか、かなりぶっきらぼうに仗助を振り返った。
「ここどこですか?」なんて質問をしたら、舌打ちしてキレられそうだ。
整った美人顔でスタイルも良いが、それだけにかなりの迫力である。

ーつーか…。


「承太郎さんに似てるな…」


目を丸くした仗助の言葉に、今度は女が目を丸くした。


「父さんを、知ってるの!?」

「父さん…!?」


なんと。
二つのお団子頭の女は承太郎の娘らしい。
こんなに大きな娘がいるとは…。さすが承太郎である。

関心しながら手を差し出して挨拶すると、女はジョリーンだと名乗った。


「ところで、ここがどこだか知ってますか?」

「あぁ、敬語じゃなくて良いわ。見た感じ歳も近いし。ここがどこだかは知らないのよ。気づいたらここに居たから」

「マジかよ!?」

こんな事が有り得るのか!?
聞けばジョリーンはアメリカ在住らしい。
日本に居たはずの仗助と、アメリカに居たはずのジョリーンが出逢うなんて、道に迷ったなんてレベルではない。


「スタンドか?」

「あれ、あんたもスタンド持ってんの?」

「え、ジョリーンも?」


ジョリーンと仗助は目をパチパチさせながら、スタンド使い同士は引かれ合う法則を思い出した。
もしもこれがスタンド攻撃なら、いつか行き着くだろう。


「とりあえず、進んでみるか」

仗助の提案に、ジョリーンは一つ返事で頷いた。
どうせ道は一本だ。
とりあえず自己紹介をしながら、二人は一本道を歩いて行った。

そうして二人は今、巨大な屋敷の前にいる。


「…おぉ。デケェ家だな」

「ふーん、アメリカだとこんな家はザラよ?ちょっと金がある家はこんなサイズだわ」


お国柄の違いとは恐ろしいものである。
確かに土地のでかさが違うもんな。

戸惑いつつ、他に出来ることもないため、二人はとりあえずチャイムをならすことにした。
耳に心地良い鐘の音の後、ドタドタと騒々しい音がして勢いよくドアが開かれる。


「うるせーぞ!今良いところだったのに!!!」


そんなことを言われても…。
仗助は驚きと理不尽さに固まり、ご立腹の家主を見上げた。


「でか…」

思わず口をついて出てしまう程度には、背も高く良いガタいをしている。
ぴょんぴょんと無造作にはねた髪を掻きながら「ん?」と首を傾げた男を見上げ、ジョリーンもぽかんと口を開けた。


「父さんくらいあるわね」

「あぁ、確かに承太郎さんくらいだな」


体つきの良さも承太郎くらいだ。
こんな男に全力で開かれたドアは、よくぞ壊れずに耐えたものだ。
その耐久性に拍手を送りたい。


「んんー??何だお前ら、承太郎の知り合いか?」


デジャヴである。
とっさに顔を見合わせた二人は、その家主に詰め寄った。
どうやら解決策を見つけることが出来そうだと思った。


「変な感じっすけど、承太郎さんの伯父っす!!」

「娘よ」

リーゼント頭の仗助とお団子頭のジョリーンを交互に何度も見つめた男は、クルッと背中を向けると、家の中に向かって一言叫んだ。


「お爺ちゃーん、またジョースター関係者が来たよーーん」


また?
妙な事を言う男である。
何より、二人は確かにジョースターの血縁者ではあるが、名字はジョースターではない。
承太郎だって、名字は空条だ。

訳知りな風の男はニカッと笑って手を出し、さっき初対面で理不尽に二人を怒鳴った事などどこ吹く風で「俺はジョセフ・ジョースター。よろぴくねー」と言った。