混部パラレル | ナノ
「……ジジィ、追いかけなくていいのか?」
面倒はゴメンだと言わんばかりの承太郎に、ジョセフも目を細めて「あー…」と間延びした返事をしながらジョナサンが飛び込んでいった扉を見つめる。
動く気配はない。
そりゃあそうだ、いい予感なんか微塵も感じられない。
誰もその建物に飛び込んだりしないままそこに立ち尽くしていると、どたばたと騒々しい音を立ててジョナサンが飛び出してきた。
「先生がもう中で待っていたよ!!!!」
――――そんなバナナっ!!!!!!!!(混乱のため、時代に不適切なジョークが飛び出した事をお詫びいたします)
「ちょっと待て!!そんなわけがないだろう!!?」
最早女の子言葉も忘れてツッコむ徐倫に、ジョナサンはニッコリ笑って言う。
あぁ、笑顔の眩しさよ…。
「本当だよ!人に教育するのは得意だと言っていたんだからね」
恐い。
なにその微妙な表現!!!!!
「ジョナサンさん、その人はどこにいるんですか?」
「ん?」
当然建物の中だろう。
シーザーはそう言おうとして、ジョナサンの手が何かをがっちり掴んでいることに気付いた。
ジョルノはこのことに気付いてジョナサンに尋ねたらしい。
「ここに…掴んでいるんだけどね?」
しっかり掴んでいる感覚はあるのに、どうやら見る事が出来ないらしい。
頭を傾げていると、「クソ…仕方ない・・・か」と溜息と共に呟くような声がして、スゥと人が現れた。
「…なんて馬鹿力だ。振りほどけん…」
ジョナサンにそう悪態をついた男を見て、一同は一瞬にして理解した。
――――堅気の人間じゃない!!!!!
異常に肌を露出した服装といい、纏っている今にもジョナサンを殺しかねない空気といい、どう見ても一般人ではない。
ましてや、教師であるようには微塵も見えない。
加えて、スゥと現れたって何だ!?!?!?!?
スタンド能力だとしても、どういう能力なんだ!?!?!?!?!?
「堅気ではないとして……………まさか、暗殺チームのリーダー…リゾット・ネエロ!!!」
ジョルノの声に、パッと顔色を変えたのはリゾットを含めたその場にいる全員だ。
おっと、ジョナサンは状況が飲み込めないようだ。
「おいおい、暗殺チームだと?ジョルノ…お前なんて奴らと関わってんだ…」
仗助、いい加減現実を見ろ。
彼はギャングだと聞いたじゃあないか。
もっとも、聞いたといってもジョルノが話の中でポロリと溢しただけだが、彼の夢はギャングスターなのだから、当然危険な人間との関わりもあるに違いない。
しかし、いきなりリーダーとはハードルが高い。
「僕が会っていない暗殺チームの人間はリーダーのリゾット・ネエロだけです」
「他の奴らは全員見たと言うことか?」
「答える義務はありません」
プイと顔を背けるジョルノとリゾットの間に険悪な空気が広がる。
「え、え???キミは教師じゃあないのかい!?」
ここでようやく意味を理解した様子のジョナサンが、安定の空気破壊に取り掛かる。
完全にリゾットを教師だと思っていたらしい。
「??
お前は“人材教育した経験はあるのか”と尋ねたんじゃあなかったか?」
その教育内容は聞きたくなければ習いたくもない。
人生においてもっとも活用したくない技術に違いない。
「学校の先生なのかと思ったんだよ」
「それは俺ではないな」
リゾットの短い回答にジョナサンが肩を落としていると、後方から賑々しい声が響いてきた。
「テメーら人んちの前で何やってんだ」
もうこの時点で振り向きたくなかったが、振り向かなかったらこのまま殺されることは分かる。
目の前のリゾットが暗殺チームのリーダーなら、同じ場所に拠点を構えるのは同じ暗殺チームの仲間に他ならない。
「おいリゾット、なぁにやってんだ?」
「いや、人違いだ」
ツカツカと一同の間をすり抜けてリゾットに近づいた金髪を綺麗に纏め上げた男が、綺麗な顔を険しくさせたまま「あぁン?」と殺気立つ。
恐い。
美人が怒った時の迫力は、凡人のそれの比ではない。
「テメーはリゾットだろうが?何言ってんだ?」
「ちが・・・そこじゃな」
否定するより早く男の拳がリゾットの頬を打つ。
この美人、グーでリゾットを殴りやがった。
リゾットはリーダーではなかっただろうか?なんと威厳のな…ゲフンゲフン。
拳を防ごうとしたリゾットの腕はジョナサンに掴まれたままだったために防御できなかったらしい。
あんまりにも気の毒な話だ。
「話を最後まで聞かないのはお前のよくないところだプロシュート」
「ウルセー」
まるで反抗期真っ盛りの息子を宥める親のようだ。
口を挟む隙すら見つけられない一同に対し、げらげらと笑う声が更に背後から響く。
「プロシュートはメローネとの賭けに負けて機嫌が最悪だからな、ッたく、しょーがねぇなー」
赤毛のグリグリ坊主に剃り込みを入れた男が飄々とした様子で間に立ち、プロシュートはバツが悪そうに舌打ちをしてジョセフたちを振り返った。
「なんだテメーら」
振り出しに戻る。
機嫌が悪いというプロシュートはすごい剣幕で一同を順番に値踏みしていく。
ホルマジオも一同を一瞥し、面倒くさそうに坊主頭をガリガリと掻き混ぜた。
「仲間になりてーのか?」
――お断りします。
無言の拒絶に、ホルマジオがブフッと噴き出す。
そりゃそうだ。
こんな大人数が感情をはっきりと顔に出して意見を揃えるなんて、返って小気味いいくらいだ。
「暗殺なんて、ゲームでくらいしかやったことない」
花京院。いいから黙ってなさい!!!!!
こんなところでゲー脳発揮しなくてもいいんだ!!!!
「兄貴ぃ、中に入らないんですかい?」
「ペッシ、いいからちょっと黙ってろ」
ヒョコッと顔を出したパイナップル頭はペッシというらしい。
プロシュートの事を兄貴と呼んだところを見ると、どうやらペッシは彼の弟分かなにかだろう。
「女の子がいるじゃん!大歓迎だよぉ!!健康状態は良好ですか??」
「くっ、何だかよく分からないけどヤバい臭いがするわ!!」
徐倫の勘が冴え渡る!!
さっと身構えた徐倫の隣で承太郎も僅かに殺気立つ。
「勘が良いな」
「メローネを女の子に近寄らせたら駄目だよ?」
「今度はホモ!!?」
ギャンと叫んだ仗助に、とんがり頭とくせっ毛の男二人は「失礼な」と笑って猫のように頬を寄せ合う。
うん、猫なら可愛いのに。
「おいおい、凄い人数だな」
「シーザー、その点に限っては僕達には言えないけどね」
花京院のもっともな意見に、リゾットだけが「確かに」と頷くのだった。