混部パラレル | ナノ


「キミは仗助の友達かい?」


のんびりした口調で尋ねられ、岸辺露伴は眉を寄せた。
この険悪な挨拶のどこにそのような要素を見出したのか。全く理解不能である。
困惑する露伴を尻目に、二つのお団子を頭の上で結わえた女が呆れたように苦笑いを浮かべる。


「ジョナサン、それはないと思うわ?」

「徐倫…いや、でも顔見知りのようだし…」
「顔見知りだからって、友達ってワケじゃねーんじゃねぇの?」


大層不満な様子で徐倫とジョセフを交互に見つめた後、ジョナサンは露伴に再び視線を戻す。
相手としてやりにくいのか、若干たじろいだ露伴は一つ咳をして片手を出した。


「妙な状況になったようだし、仗助の奴と協力し合うなんてゴメンだが、君達の事を取材させてもらいたい」

「あぁ、僕達も色々教えて貰えると助か「待ちな…」


露伴の手を握り返そうと手を差し出したジョナサンを止めたのは承太郎だった。
だが、その状況に驚いたのは露伴その人である。


「こっちの話しを聞きたいなら、まずはテメーが名乗るのが筋ってもんだぜ」


仗助の知り合いだと言うことは、まず間違いなくスタンド使いだ。
学校での知り合いではなさそうだし、仲がいいようでもない。
これでスタンド使いでないなら、どういった知り合いだと言うのか…。
それが承太郎の、目の前で取材を求める男への疑惑だった。


「まさか…いや、若く見えるが……空条承太郎か?」


露伴の記憶よりずいぶん若い。
それどころか、仗助と同じくらいの年齢に見える。
なにより、着ている服が着崩されてはいるがどう見ても学生服。


「露伴、観念して知ってること出し合うべきだと思うぜ?」


仗助の言葉に、露伴は渋々と頷いた。
当然だ。こんなに面白いネタの宝庫を逃がす術はない。















「…と、俺らの持ってるネタはこんなもんだぜ。次は露伴センセーの番な」

「そんな安っぽい挑発なんかしなくても、スタンド使い5人を相手に逃げたりしない。君にセンセーなんて呼ばれても虫酸が走るから止めてくれないか?」


どっちが挑発してんだよ。
手に持ったクロッキー帳に聞き覚えた現状をガサガサとメモした露伴は、パタンとそれを閉じてため息を付いた。
流石にあの空条承太郎を含むスタンド使い5人なんて逃げおおせる気がしない。
夕暮れに染まり始めた空を見上げて、露伴はとつとつと語り始めた。


「まず、この世界に来た瞬間…ここでは誰も殺せないと悟った」

「どういう意味ですか?」


金髪の、端正な顔立ちをした少年は、あのDIOの息子らしい。
チラリとしか耳にしていない事情の、自分の目で見ることは叶わないと思っていた吸血鬼。
この目でその息子を見れるとは夢にも思わなかった。
この世界は露伴にとって、まさにネタの宝庫だ。


「まるで誰かにそう擦り込まれたように、例えスタンドを使っても、この世界で人を殺せないと知っていたのさ」


気が付いたらここに居て、奇妙なこの場所で過ごさねばならないことを受け入れていた。
そして、元の世界に来たあらゆる人を殺せない事も知っていた。


「逆らったらどうなるんスかね?」

「これは僕の仮説だが、…この世界から強制排除されると思う」

「どうしてそう思うんだい?」


前髪をふんわり揺らす花京院をジッと見ながら、露伴は自分の知っている承太郎を考えていた。
こんな風に仲の良い友人がいるようには見えなかったが…高校生らしい彼の、高校生らしい一面と言ったところか。



「何かと都合がよすぎるように感じるから…かな?」

「マンマミーヤ…この珍妙な世界が一体誰にとって都合が良いんだか…」


シーザーは呆れたようにそう告げ、ある一点を見つめたままハタと動きを止めた。