混部パラレル | ナノ
カーズ達の案内(勝手について歩いていると言った方が正しい)で、ジョースター家一行は仗助が見つけた新しい道へと足を踏み入れた。
別段変わったことのない、木々に囲まれた道。
砂利を踏みしめながらしばらく歩いていると、突然の突風に目を開けていられない。
「っく、すごい…風だっ…!」
徐々に弱まった風が、フワリと頬を撫でて行き過ぎると…
「こいつぁ…グレートだぜ…」
目の前に町が広がっていた。
「どこだ、ここは?」
「僕の住んでいたイタリアとも少し違います」
「アメリカでもないわ」
「杜王町とも違うッス」
目下に広がるのは誰も知らない、謎の街。
カーズはそこを何の迷いもなく進む。
「おい、日光は…平気なのか?」
復活したジョセフの言葉に、カーズは顔をしかめた。
「平気だと言いたいが、そうとは言い切れない。日光に当たる疲労は人間の比ではないし、少しずつ身体が硬化していく。故に日光の対策をしているのだ」
そう言えば、カーズを含めた三人が肌の露出を外套で極限まで減らしている。
しかし、日光に当たると死ぬかも知れないにも関わらず、良く当たってみる気になったものだ。
「ここに辿り着いた時が昼間だったとか?」
シーザーの言葉に、ワムウが首を振る。
強制的に日光に当たったのではないとすれば、やはり自ら日光に当たったのか?
俄かには信じがたい。
「サンタナが周囲の状況を確認するために飛び込んだんだよ。あいつは日光に当たっても死なねぇからな」
「もしもの事を考えて、日没を待つほうが賢明だったと、俺は思いますがね」
「ここが元の世界とは違うと分かっていたのだ。ジッと待っていても安全とは分からんではないか」
エシディシの言葉に小さく抗議したワムウも、カーズの言葉にはムッと押し黙った。
サンタナはいつも捨て身過ぎるのだ。
ワムウにはそれが不満だった。
その時だって、自ら志願し、引き止めるよりも早く飛び出したのだ。折角再開できたというのに。
「それで、サンタナはどこに?」
「留守番だ。いつ何が起きるかわからねぇし、日光に長く当たった疲れもあるみてぇだったからな」
一応の気遣いといったところか。
会話を見守っていた仗助は、ふとそこで小さな疑問を抱いた。
「何か起こる可能性があるってコトッスか?」
横目に振り返ったカーズの馬鹿にしたような視線にグッと息を飲む仗助は、小声で「他にも誰かいるとか?」と付け加えた。
奇妙なこの街に他に誰もいないならば、警戒するような何かがあるとは思えない。
後から現れる可能性を危惧するほど慎重な男達ならば、日中のうちに歩き回らないだろう。
「数えるのも面倒になったから、人数は知らないがな」
「!!!!!!」
ジョナサンもジョセフも…そこに居た全員が息を飲んだ。
ここに辿り着いた時に失った友人や家族が存在する可能性があるのだ。喜ばずには居られない。
「ところでお前達、どこまでついて来るつもりなのだ?」
カーズの言葉にハッと我に返ると、いたって普通のマンションの前に辿り着いていた。
開かれたドアから、金髪をふんわりと波打たせた男がヒョコッと顔を出し、招かれざる客人にあからさまに嫌な顔を作った。
「キミが、さっきから話題に上っていたサンタナかな?」
男はジョナサンとカーズを交互に見比べ、敵対すべきではないと判断したように差し出された手を取った。
好意的とは言いがたいが、波紋戦士と握手を交わす柱の男なんて奇妙な光景である。
微妙な顔をするシーザーとジョセフに、花京院と徐倫は顔を見合わせて小さく笑った。
「ジョナサン」
「ん?なんだい、承太郎」
「俺達も、この周辺を探索するべきだと思うが?」
承太郎の言い分は最もである。
なにより、自分の知り合いがいる可能性があるのだ。それはさっさと出かけたいに決まっている。
「そうだね…」
「そうだな。早く帰れ」
辛辣に言い放つサンタナに目を瞬かせるジョナサンは、カーズたちが既に家の中へ入ってしまったことに気がついた。
出来れば四人に事情を聞きたかったのだが。
恐らくリーダーなのだと思われるカーズの言いつけ通り家を守っている様子のサンタナは、話したところで中に入れてくれそうにもない。
「仕方ない。話が出来そうな人を探そう」
かくしてジョナサン一行は、引き続き街を歩くことになった。
家に残ったDIOを除き、八人は更に街を奥へと進む。